石綿訴訟、住民被害を認める初の判決
2012/08/07 訴訟対応, 民事訴訟法, メーカー

事案の概要
兵庫県尼崎市の機械メーカー、クボタの旧神崎工場の石綿(アスベスト)被害について、中皮腫で死亡した周辺住民2人の遺族がクボタと国を相手取り、合計7940万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が7日、神戸地裁であった。
判決は、1人について、工場から飛散した石綿と健康被害の因果関係を認め、クボタに3195万円の損害賠償を命じたが、国の責任は認めなかった。
石綿被害について、石綿関連企業の従業員ではなく、周辺住民の被害を認めた判決は初めてとなる。
被害が認められたのは、工場から約200メートル離れた場所で勤務していた男性。他方、工場から約1キロ離れた場所に住んでいた女性については、石綿と健康被害の因果関係は認められなかった。
クボタは、石綿取り扱い企業の責任として、一定条件を満たす周辺住民や遺族に総額約90億円の救済金を支払ってきたが、具体的な健康被害との因果関係は認めていない。原告の2名は、責任の所在があいまいになることを恐れて、救済金の受け取りを拒否していた。
コメント
公害訴訟は因果関係の立証が非常に難しく、判例は必要な立証の水準を緩和する努力を続けてきたが、石綿被害の周辺住民についてはなおもハードルが高かった。今回の判決により、有害物質を取り扱う企業や国が、被害防止策や規制を積極的に講じる姿勢に転じることが期待される。
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