VTuberを取り巻く法律トラブル
2022/03/25 契約法務, 知財・ライセンス, 著作権法

はじめに
昨今、人気が急上昇しているYouTuber。その中でも最近になって人気が過熱しているのが、VTuberと呼ばれる2Dや3DCGのキャラクターを自分の分身として動画投稿する人たちです。昨今の注目度の急上昇に伴い、さまざまな法律トラブル事例も散見されるようになりました。本記事では、そんなVTuberを取り巻く法律トラブルについて解説していきます。
VTuberとは
バーチャルYouTuberの略で、主に「2Dまたは3Dのアバターを使い、ライブ配信・動画投稿等の活動を行う人(YouTuber)」を指します。
Youtubeをはじめとする配信プラットフォーム上の投げ銭(スパチャ)やYoutube広告収入、会員サービスの対価としての月額会費、CDやオリジナル商品の物販、企業から持ち込まれるPR案件による報酬等で収益を立てています。
VTuberのよくある法律トラブル
VTuberによくある具体的な法律トラブルとしては、以下のようなものがあります。
1.アバターの使用に関するトラブル
アバターグラフィックを第三者に創作してもらい、それを利用している場合、アバターグラフィックの著作権者が誰かという問題が生じ得ます。多くの場合、VTuberを始めた当初はそれほど人気がなく、創作してもらうアバターグラフィックを本格的かつ長期継続的に利用するイメージがないままに創作依頼を行うケースがほとんどです。そのため、特に契約書を取り交わさないまま、軽い気持ちでイラストレーターに創作依頼を行うケースが多く見られます。しかし、人気が出てグッズ販売の話が持ち上がったタイミングで、著作権の帰属を巡って紛争化するケースがあります。この場合、別途、契約で取り決めていない限り、原則、創作者に著作権が帰属することになるため、注意が必要です。
また、VTuberとアバターグラフィック創作者の間のみならず、VTuberと所属事務所との間でもアバターグラフィックの著作権の帰属が問題となるケースがあります。所属事務所とマネジメント契約を締結する際に、双方、納得の行くまで慎重に取り決めを行う必要があります。
2.個人情報流出のトラブル
VTuberにおいては、個人情報流出トラブルも発生しています。人気VTuberとなる前の段階では、友人・知人に運営を手伝ってもらいながらVTuber事業を共同で行うケースが少なくありませんが、こうした場合には、運営がタレントマネジメントのプロフェッショナルではないがゆえのトラブルがつきものです。
例えば、悪意なくうっかりと個人情報・プライベートな情報をSNS上に投稿してしまうケース、収益分配方法でトラブルとなり、喧嘩別れの腹いせにSNS上で内部情報を暴露するケースなどがあります。
親しい間柄であっても、個人情報・秘密情報の管理について、入念な取り決めを行っておくことが重要になります。
3.実況時のトラブル
VTuberの中には市販のコンピューターゲームを実況しながらプレイする模様を配信する、いわゆる「ゲーム実況」を行う人も少なくありません。
しかし、ゲームは第三者の著作物であることから、当該ゲームに関する動画や静止画の利用には著作権侵害のリスクがつきまといます。
近年、ゲーム実況が一般的なものとなったこともあり、ゲーム実況そのものを以て、著作権侵害と主張されるケースはあまりないようですが、例えば、ゲーム業界大手の任天堂では、ゲーム実況を許容する上での詳細なガイドラインを作成し、当該ガイドラインに沿った運用が行われる限り、著作権侵害を主張しないとしています。その内容としては、
①営利を目的としていないこと(任天堂が別途指定する収益化システムによるときはこの限りでない)
②発売日(サービス開始日)を迎えたゲームの実況であること
③自身の創作性・コメントが付されたものであること
④任天堂及び任天堂の関係者から、協賛や提携を受けているよう示唆し又は誤信させる内容でないこと
⑤違法、不適切、公序良俗に反する投稿でないこと
等が挙げられています。詳細は以下のリンクをご確認ください。
【外部リンク】ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン
コメント
今回は最近話題になっているVTuberに関する話題を掘り下げました。VTuberはまだまだ始まったばかりのビジネスモデルである一方、契約関係や権利関係が複雑でトラブルに繋がりやすい点が特徴です。多くのVTuberに見られる「人気になった後で契約のことは考える」といった発想も、法的紛争の増加に拍車をかけています。
こうした背景もあり、近年、VTuberの支援に特化した法律サービスを提供する法律事務所も登場しています。VTuberのIT・知的財産に関わる法務や、SNSなどのアカウントの譲渡契約などに携わるといいます。
今回はVTuberとして活動する際の法的リスクを取り上げましたが、VTuberが小学生のなりたい職業ランキングに登場するなど、その、インフルエンサーとしての影響力は今後拡大の一途をたどると考えられます。そのため、企業として、VTuberを自社のPRに活用する場面なども増える可能性があります。
このようなVTuberビジネスにおける法務では、企業とVTuber間の契約関係のみならず、第三者の知的財産権、上述したゲーム会社のガイドライン、YouTube利用規約などカバーする範囲が広くなるため、細心の注意が必要になります。
また、VTuberの中の人の素性を知らないままに契約を結んだ場合、過去の投稿内容や活動・行状などが原因で期せずして炎上し、自社の商品・サービスのブランドイメージ毀損に繋がるおそれがあります。安易に契約を締結せず、あらかじめ慎重に経歴調査等を行うことが重要になりそうです。
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潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
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- 終了
- 視聴時間1時間27分
- 弁護士
- 目瀬 健太弁護士
- 弁護士法人かなめ
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大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号

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