犯罪歴のある人の雇用まとめ
2017/03/30 労務法務, 労働法全般, その他

はじめに
人材採用支援を行う会社が、先日犯罪歴などのある人を従業員として雇用するという思いのある企業を募集すると発表しました。一度犯罪を犯してしまうと社会復帰は難しく、折角更生したのに経済的に困窮し、再び犯罪に手を染めることも珍しくないと言われます。このような状況では、企業の社会的役割のひとつとして過去に犯罪を行った者の雇用が求められるようになってもおかしくはありません。しかし、そうは言っても犯罪歴のある方への世間の風当たりは強いものがあり、採用を担当する人事の方も難しい選択を迫られると思います。そこで、犯罪歴がある人材を雇用する場面で、法務に携わる方が注意するべきことを確認していきましょう。
犯罪歴の調査
採用活動の際に、応募者の犯罪歴を人事の方は知ることはできるでしょうか。
まず、面接を行う際に応募者に対して犯罪歴の有無を聞くことも考えられます。また、履歴書によっては賞罰の記載欄があり、そこで犯罪歴の有無がチェックできます。最近は賞罰の記載欄のない履歴書も増えていますので、会社の方で指定の履歴書をひな型として提供することも考えられます。
弁護士法人ALG&AssociatesのHP
賞罰に記載すべき犯罪歴については、世間のイメージとは異なり限定的であるといえます。確定した有罪判決は含まれますが、公判中であったり、処分保留のまま釈放となっていたり、起訴猶予のまま釈放された場合は犯罪歴に含まれません。また、裁判が確定していても刑期を終えて10年が経過したり、執行猶予期間が経過したものも含まれません。
働く人のための労働相談室のHP
書面と口頭のいずれであっても犯罪歴を尋ねることは、触れられたくない個人情報でもありますし差別の原因にもなりえます。そのため、企業としてはプライバシーの侵害を理由に損害賠償を請求されるリスクが考えられます。そのリスクを回避するため、応募者の担当する業務の内容から犯罪歴の確認が必要な場合にのみ尋ねるべきと考えることもできます。しかし、冒頭の犯罪歴がある応募者を採用しようとする企業が注目を浴びるくらい、現在の日本は未だに犯罪歴のある方とともに働くことを避ける傾向にあります。また、厚生労働省の採用時に尋ねるべきではない事項につき、犯罪歴は含まれていません。採用面接で犯罪歴を尋ねたり書かせたりすることで直ちに損害賠償につながるおそれは少ないのかもしれません。
厚生労働省のHP
茨城の弁護士による労働問題相談のHP
中途採用サポネットのHP
個人情報としての犯罪歴の扱い
犯罪歴を採用面接で知るところとなり、その情報を企業が手にした場合、その個人情報はどのように扱えばよいでしょうか。収集した個人情報が流出することになれば企業としては損害賠償を請求されることが考えられます。採用された場合には応募者は従業員になりますので、他の従業員と一緒に採用担当者のみが閲覧できるように鍵のついたキャビネットなどに入れて保管されることになるでしょう。一方で、不採用の場合には数年間保管するために採用時と同様に鍵付きキャビネットに入れるほか、履歴書を採用終了に際して応募者に返却したり、応募者に了承を得たうえで履歴書を破棄することが考えられます。
労働法ナビのHP
Pマーク支援ブログのHP
犯罪歴のある者の解雇
企業がある人物を雇い入れたところ、その人に犯罪歴があったことが判明した場合に企業は解雇することができるでしょうか。
採用時の提出書類や口頭での応答内容に虚偽があった場合、それは経歴詐称となりえます。会社が就業規則に経歴詐称を懲戒解雇事由として設けているのであれば、犯罪歴を明かさなかったことを理由に解雇できるでしょう。
裁判例では経歴の内容を「重要な経歴」としていますが、犯罪歴はこれにあたるとしていますので、結論は変わらないといえます。
ロア・ユナイテッド法律事務所のHP
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