【法務NAVIまとめ】英文契約書入門
2016/08/25   契約法務, 英文契約, 外国法, その他

◆はじめに◆

今回は、法務担当者に求められることの多い、英文契約書の作成、チェックに関する事項をまとめました。
これから英文契約書に携わる、という方のご参考になれば幸いです。

◆英文契約書と日本語の契約書◆

英文契約書のドラフト、レビューについても、日本語の契約書の場合と考え方はほぼ同じです。

日本語の契約書と違う点、注意すべき点は、
 ・書いていないことは、ないものとして扱われること
 ・英語の日常用語とは異なる法律用語、独特の言い回し
 ・国際取引だからこそ生じる、具体的リスクについて考慮が必要であること
の3点です。

【国際取引のリスク 具体例】
 ・暴動が起こり、道路や港湾設備が閉鎖されて輸送ができなくなる。
 ・国の法令が突然変更され、輸出入ができなくなる。
 ・通関手続きにおいて輸出入が禁止される。
 ・為替相場により損失が出る。
 ・長距離輸送中に事故等で商品が破損する、滅失する。
 ・品質や数量が異なっていた場合、国内取引ほど容易に返品、再出荷等が簡単ではない。
 ・ヨーロッパと日本との間を船で輸送する場合、航海日数だけでも45日程度かかるため、納期遅れが生じうる。
 etc.
ジョブ貿易事務所
貿易取引とリスク管理

◆英文契約書のチェックにおける思考回路◆

思考回路は、日本語の契約書のドラフト、レビューとほぼ同様です。
そこに、国際取引だからこそのリスクを具体的に想像し、解決策を盛り込むことが大切です。

1.取引の構造(スキーム)の理解、規定すべき事項の洗い出し
 契約を結ぶ取引が、どういう取引、契約であるのかを認識し、
 規定すべき事項を漏らさず洗い出す必要があります。
2.契約書の規定内容の正確な理解、リスクの把握
 リスクは具体的に想像して把握しましょう。 
 性悪説で臨み、うまくいかない場合を念頭に置いてリスクを考える必要があります。
 例えば、海外の企業は価値観も慣習も異なり、話し合いが難航する場合があります。
 商品の輸送についても、海を隔てての輸送になるため、
 船が沈没したり、事故により商品が傷ついたり、紛失したり、
 きちんと届かない場合があります。
3.法的リスクの評価を正確に行う
 ①法規制のリスク
  日本と異なる法規制がなされていないか、注意が必要です。
 ②訴訟のリスク
  想定される将来のリスクとその解決策を契約書に不足なく盛り込んでおくことが重要です。
  訴訟になっても、契約書で紛争の解決策がきちんと合意されていれば、裁判所は当事者の契約上の合意を尊重してくれます。
 ③法的責任リスク
  損害が発生した場合に、できるだけ自社の責任を回避、若しくは低減するような規定にしましょう。
4.予想されるリスクとその解決策を契約書に盛り込む

◆英文契約書の基本構成◆

一般的な英文契約書は、概要、以下のような構成で成り立っています。
 ア 表題・タイトル(Title)
 イ 前文(これは、頭書(Premises)と説明条項(Whereas)から成ります。)
 ウ 本文(Operative Provisions)
 エ 一般条項(General Provisions)
 オ 結語(Closing)
 カ 署名(Signature)
 キ 立会人(Witness)
 ク 添付書類(Exhibits)

このうち、イ 前文の頭書(Premises)では、
契約締結日(Execution date)、契約当事者(Parties)の氏名・住所、
法人の設立準拠法等が記載されます。

英文契約書作成ドットコム
英文契約書の構成と表現

◆英米契約書の成立要件◆

英文契約書が法的に成立して有効と認められるためには、
次の4つの要件を満たさなければなりません。

(1)契約当事者間の合意(Agreement)
各当事者間で合意が成立することです。
申込み(Offer)と承諾(Acceptance)が合致することにより、合意(Agreement)が成立します。
(2)約因(Consideration)
対価関係、つまりギブアンドテイクの関係があることが必要です。
契約当事者双方が義務を負うことが必要で、片方が何らの義務(対価の支払等)を負わない契約は無効とされます。
(3)契約締結能力(Legal Capacity)
契約を締結する法的能力です。
例えば、未成年者や代表権限のない者が締結した契約書は無効となります。
(4)抗弁事由のないこと(No Defense)
いったん成立した契約の効力を否定する(無効や取消し)事由がないことを言います。
例えば、詐欺、脅迫、公序良俗違反がないことを指します。

英文契約書作成ドットコム
契約の成立要件

◆一般条項◆

純粋に法律知識が必要となるのは、主に一般条項においてです。
一般条項(General Provisions, Miscellaneous)とは、契約の種類を問わず、
各契約書に共通して規定されるような一般的内容の条項を総称したものです。
種類は限られており、それぞれに決まった型があります。
一度マスターしてしまえば、契約書の重要な箇所の一部をすでに理解していることになり、英文契約書のドラフト、レビューがとても簡単に感じられることでしょう。

英文契約書作成ドットコム
英文契約書の一般条項一覧

◆用語集◆

・英文契約書作成ドットコム
英文契約書の構成と表現

・英文契約書.com
法律英語の基礎知識

・Hi Career
Nuts and bolts of legal translation
第4回「契約書によく使われる用語?中級編」

・本間合同法律事務所
弁護士による英文契約書の作成、チェック(全国対応)
英文契約書の翻訳・作成・チェックのための弁護士による用語解説集

◆契約書雛型・サンプル◆

EKEIYAKU NET
アメリカのSecurities and Exchange CommissionのEDGARデータベースや
カナダのSecurities AdministratorsのSEDARデータベースから、
上場企業の契約書(開示資料)やその概略・説明を配信するサイトです。
◆英文契約書雛型集
◆英文契約書 実際に使われたサンプル集

産創館
英文契約書作成フォーマットサンプル(売買契約書)

◆おわりに◆

一般的に、契約書で合意する内容には、以下の4つがあります。
 ・ビジネスマター
 ・技術マター
 ・アフターサービスマター
 ・法律マター(主に一般条項)

純粋な法律マターは契約書の一部に限られます。
契約書作成、レビューには、ビジネスのイメージが持てることがとても大切です。
ビジネス経験のある方は、ご経験を存分に生かすことができます。
臆せず、トライしてみましょう!

参考文献:
牧野和夫『英文契約書の基礎と実務―知識ゼロから取引交渉のプロを目指す』
(株式会社DHC・2009年4月26日)(Amazon)

以上

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