アルバイトを雇用する企業に必要な法情報まとめ
2016/09/14   労務法務, 労働法全般, その他

はじめに
繁忙期にかぎって、学生アルバイトを採用したいなど、企業活動を行うにあたっては、アルバイトを活用することあります。そこで、アルバイトを雇う際の法的問題点に関して有益と思われるページをまとめました。

アルバイト・パートとは
パートタイム労働法に規定される「パート」とは、1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される通常の労働者に比べて短い労働者です。「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「準社員」などの呼称にかかわらず、正社員と比べて所定労働時間の短い労働者のことを指します。

最低賃金
・地域別最低賃金(地域ごとの最低賃金)
・特定最低賃金(特定の地域の特定産業ごとの最低賃金)
・最低賃金の減額の特例許可制度(一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に、最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれなどがあるため、特定の労働者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額の特例です。)
参考 厚生労働省

有給休暇
アルバイトの場合、正社員と比較して1日の労働時間が短かったり、週に働く日数が少ないことがあるため、有給取得の日数を確認する必要があります。具体的には、以下のページの表にまとめられています。
参考 日本の人事部

アルバイトが加入する保険の種類
アルバイトの加入する保険は、基本的に健康保険、厚生年金保険、雇用保険、社会保険、の4つ。
参考 イーアイデム

産休・育休
アルバイトであっても、産前6週間・産後の8週間は産休を取得できる制度がある。産休期間中の給料を支払う必要はありません。
参考 産休、育児休暇ーアルバイトとパートの有給休暇

健康診断
一定の条件を満たすアルバイトの場合には、健康診断を受診させる義務が生じる場合がある。原則として、1年以上の継続雇用が見込まれ、または1年以上継続している場合で、1週間の所定労働時間が常勤従業員の4分の3以上であるアルバイト・パートには、健康診断を行わなければならない。
例外など具体的な基準については、下記のサイトが参考になります。
参考 健康診断のポイント

18歳未満の場合
・年齢確認
・深夜業の禁止
・親権者の同意を得る
参考 企業人事労務解決室

外国人の採用
・最低賃金・社会保険の確認
・ハローワークの届出
参考 日本の人事部

改正パートタイム労働法
・待遇の原則(8条) ※雇用主が、短時間労働者の待遇と正社員の待遇を相違させる場合は、職務の内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
・差別的扱いの禁止(9条)
・バランスをとれた待遇を設定すること(10条、11条、12条)
・雇い入れの際、待遇の決定について説明をおこなうこと(6条)
労働条件に関する文書の交付
労働契約期間/就業場所、従事する業務内容
労働時間(始業・終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日など)/賃金(計算および支払方法、賃金締切日、支払時期)
退職(解雇事由含む)/昇給の有無
退職手当の有無/賞与の有無
・正社員に転換するチャンスを与えること(13条)
参考 中小企業ビジネス支援サイト J-Net21

安全配慮義務
使用者は、その雇用する労働者に対して、雇用契約上の信義則に基づいて従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う。アルバイトも、労働者であり、使用者は労働環境を整備して、身体の安全などに配慮する義務を負う。
参照 ロア・ユナイテッド法律事務所

アルバイトに関する法的トラブル
・求人広告と実際の雇用条件が異なる場合
→千代田工業事件 (H02.03.08大阪高判)
事案 求人表記載の雇用条件は期間の定め事件のない雇用契約であったが、期間満了により雇止めとされたケース
判旨  求人票の真実性、重要性、公共性等からして、求職者は当然、求人票記載の労働条件が雇用契約の内容になるものと考えるし、通常、求人者も求人票に記載した労働条件が雇用契約の内容になることを前提としている。すると、求人票記載の労働条件は、当事者間でこれと異なる別段の合意をしたなど特段の事情がない限り、雇用契約の内容になるものと解される。
コメント 求人票記載の労働条件は、雇用契約の内容となるため、記載内容のチェックが必要となる。
参考 厚生労働省 確かめよう労働条件

・残業代が一部支払われない場合
→ ・労働時間制に関するもの
  ・時間外労働をしたことの立証方法に関する判例
  ・管理監督者に関する判例
  ・事業場外労働のみなし労働時間制に関する判例
  ・定額手当の支給に関する判例
  ・基本給に組み込んで支給したことに関する判例
参考 日比谷ステーション法律事務所

・採用面接における不適切な質問
<a.本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること

<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
<c.採用選考の方法>
・身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)

・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
参考 厚生労働省

さいごに
パートタイム労働法の概要に関しては、弊社の過去記事が参考となります。
https://www.corporate-legal.jp/%E6%B3%95%E5%8B%99navi%E3%81%BE%E3%81%A8%E3%82%81/1995
近時、学生の長時間労働について、店舗側が訴えられる事例も存在しており、アルバイトを採用する企業側の法務担当者として、法律面からの雇用環境のチェック等は欠かせないものであるといえます。

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