安全衛生法上求められる義務まとめ
2017/05/12   労務法務, 労働法全般, その他

はじめに

昨年11月に神農物流(東大阪市)の労働者1人が、天井クレーン使用中に死亡した事件について、先月13日、大阪労働局が神農物流の代表取締役を労働安全衛生法違反の疑いで書類送検したと発表しました。同社代表取締役は、省令の定めによる自主点検義務を怠ったとされます。今回は労働安全法上求めらる主な企業の義務を今一度確認していきます。

制度の概要

●労働安全衛生法の概要
労働安全衛生法は、労働者の安全・健康確保と快適な職場環境を形成するために1972年に施行されました。内容としては、労働災害防止計画、安全衛生管理体制、労働者の危険又は健康障害を防止するための措置、機械等並びに危険物及び有害物に関する規制、労働者の就業に当っての措置、健康の保持増進のための措置、快適な職場環境の形成のための措置、安全衛生改善計画等について定めています。直近では平成26年に改正がありました。
●安全配慮義務
企業には労働者の安全に配慮する義務があります。従来は、法律で明記されておらず判例上認められた義務でしたが、平成19年に労働契約法第5条に明記され、明確な事業者の義務となりました。労働安全衛生法上の義務は安全配慮義務の具体化といえます。
●関連法令
安全管理・健康増進を図る上でのルールが何かを確認しておきましょう。関連法令としては、労働安全衛生法、労働安全衛星施行令、労働安全衛生規則があります。順次に内容が細かくなっていきます。
●適用される事業場とは
労働安全衛生法は、職種によって適用が有無が変わることはなく、「一定の場所で組織低名作業のまとまりがある」ところに適用されます。従業員が一人であっても適用されます。従業員の雇用体系は関係なく、正社員、パートなど当該場所で就業していれば従業員数にカウントされます。なお、従業員数によって企業に発生する義務内容が異なる場合があります。例えば、従業員が50人以上いる職場では衛生管理者選任が義務付けられます。
労働安全衛生法
労働安全衛生法施行令
労働安全衛生規則
労働安全衛生法や規則について知りたい!内容や定められた資格は?(SAT衛生管理者公式BLOG)
労働安全衛生法とは?関連する資格の取得方法や試験内容について(SAT技術系資格BLOG)

義務を怠った場合のリスク

労働安全衛生法上の義務を怠った場合のリスクについて見ていきます。管理体制を怠った場合、労働災害による人的被害と補償・賠償問題が生じるだけではなく、会社の信用に関わる事態も生じえます。
・労働者の申告(法97条)
事業場に労働安全衛生法やこれに基づく命令に違反する事実があれば、労働者は監督行政庁に申告し、是正を措置を求めることができます。この場合に企業は申告した労働者を不利益に取り扱ってはなりません。
・作業の停止命令等(98条)
労働安全衛生法違反があった場合、行政から作業の停止や必要な措置を講じることを命令される可能性があります。作業が停止され場合の営業上の損失は場合によっては莫大になる可能性があります。また、命令を受けたこと自体が会社の信用を損なうことにつながります。
・罰則(法第12章)
安全衛星法上の義務を怠れば罰則の適用を受ける可能性があります。罰則の適用を受けるような事態になれば、金銭的な損失に加えて会社の信用に与える影響は計り知れません。
労働安全衛生法上の罰則一覧

安全衛法上の義務

次に労働安全法条求めれれる主な義務内容を見ていきます。
●安全体制を構築する義務(法第3章)
労働安全衛生法1条は、職場での安全・健康確保を目的とし、そのために責任体制の明確化を目的実現のための手段として掲げています。そのため、法3章では安全管理体制の構築義務について定めています。
・責任者の選任義務
一定規模以上の事業場では、統括安全衛生管理者(10条)、その下に安全管理者(11条)や衛生管理者(12条)を背隠忍しなければなりません。小規模事業場では安全衛生推進者(12条の2)を選任することになります。
・委員会の設置義務
一定の業種で常時100人以上(特定業種に有っては50人以上)の労働者を使用する事業場では「安全委員会」を、全ての業種で常時50人以上の労働者を使用する事業場では衛星委員会を設置しなければなりません(法17条、18条)
・産業医等による健康管理体制の構築
産業医とは、事業者に雇用され、または事業者の食卓として事業場の労働者の健康管理などを行う医師です。業務は多岐にわたりますが、健康診断の実施や保健指導は重要な職務です。常時50人未満の労働者を使用する事業場では医師等による健康管理などは企業の努力義務に留まります。(19条の3)常時50人以上の労働者を使用する事業場では産業医を選任すること、常時3000人を超える労働者を使用する事業場では2名以上の産業医の選任が義務付けられます(法13条、施行令5条)
●労働災害星措置義務(法第4章)
労働災害防止措置の内容は、業種等によりそのあり方が大きく異なる事柄です。技術的なことも考慮に入れる必要があるため、法律として一般化するのが難しいです。そのため、大部分が厚生労働省令に委ねられています。
●業務の際に使用する機械等に関する規制(法第5章)
・特に危険な作業を必要とする機械(特定機械)等については、その製造に都道府県労働基準局長の許可が必要です。製造時、輸入時には検査を受けることが義務付けられています(37条、38条)
・特定機械等以外の機械でも、労働者に危険を生じるおそれのある機械等については、譲渡や貸与に制限が付されています(42条、43条)
・一定の機械について定期的に自主検査を行うことが義務付けられています(45条)
●有害物の製造・取扱いに関する規制(法第5章)
健康障害発生の危険性に応じて、製造、輸入、譲渡、提供、供用が禁止されている場合(55条)、製造に厚生労働大臣の許可が必要な場合や容器に有害性を表示する義務が生じる場合があります(法56条、57条)。
●労働者の就業にあたっての教育義務(法第6章)
労働者の雇い入れ時や作業内容の変更があった場合、従事する業務に関しての必要な安全衛生教育を行うことが義務付けられています(法59条、規則35条)。労働者自身が業務に関わる危険性・有害性、対処方法を理解した上で作業に臨めるようにするためです。
●健康の保持増進のための措置義務(法第7章)
・健康診断実施義務(法66条)
労働者に対して医師による健康診断を実施する義務があります(66条)。医師の意見を聴取して、必要な場合には、就業場所の変更や労働時間の見直しなどの措置を講じなければなりません(66条の5)
・長期労働者への医師による面接指導実施義務(66条の8,9)
長時間労働により疲労の蓄積が見られる労働者、健康上の不安を有している労働者について、医師による面接指導あるいはこれに準じる措置をとる義務が生じる場合があります(66条の8,9)。
Q1 労働安全衛生法の基本的な仕組みを教えてください(独立行政法人労働政策研究・研修機構)

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