大王製紙前会長に懲役4年の実刑判決 東京地裁
2012/10/10 コンプライアンス, 民法・商法, メーカー
事案の概要
カジノの負債返済などに充てるため、子会社等の関連会社から計55億3000万円を借り入れ、損害を与えたとして、会社法違反(特別背任)罪に問われた大王製紙前会長、井川意高被告の判決公判が10日、東京地裁で開かれた。
堀田真哉裁判長は「会社での支配的地位を濫用し、刑事責任は重い」「公私の別をわきまえない行為」と厳しい言葉を重ねた上で、懲役4年(求刑懲役6年)の実刑判決を言い渡した。
同社では、事件を契機に創業一族の井川家と経営陣が対立。結局、北越紀州製紙が仲介となり、同社が創業家から大王製紙株式を取得することを柱とする収拾策がまとまった。
その後井川家は、今年8月までに、保有していた本社や関連会社の株式を北越紀州製紙に全て譲渡し、その売却益を前会長が借り入れた資金のうち未返済だった約53億円の弁済に充てるなどして、被害弁償を行っていた。
弁護側は、前会長が起訴内容を全面的に認めていることや、このような全額弁済がなされたことを理由に刑の執行猶予を求めていたが、裁判長は「子会社の資金繰りが逼迫するなどの被害が生じたことには変わりない」「それで全てが消し去られるわけではない。実刑に処するのが相当」と一蹴し、弁護側の求めを退けた。
弁護側は、即日控訴した。
コメント
本事件は、たしかに会社を私物化したトップの暴走である。
しかし、そのような独裁を許してしまうような環境を作り出したのもまた、会社の人間だ。
会社法の整備のみならず、社員一人ひとりのコンプライアンス意識を高め、かつ社内でそれを機能させる自主的な取り組みが必須である。
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