マンション管理組合の決定と全戸電気解約義務、最高裁が否定
2019/03/19 不動産法務

はじめに
マンションの管理組合での決定に一部の住民が反対したことにより電気全戸契約が実現しなかったことを巡る損害賠償請求事件で5日、最高裁は管理組合の決定では義務は生じないとして請求を棄却しました。個々の電気契約は管理組合の決定の範囲外とのことです。今回はマンション管理組合の決議事項についてみていきます。
事案の概要
報道などによりますと、札幌市にある5棟建ての分譲マンションの管理組合で電気代を節約するために「高圧一括受電方式」の導入を計画し総会で賛成多数による決議を得ました。その際、マンションの住人は個々の電気供給契約を解除することが細則によって定められたとされます。しかし当マンション544戸のうち2戸が電気の安定供給に不安があるなどとして反対し従来の契約を解除せず、それにより一括受電方式の導入が実現しなかったとのことです。管理組合側は反対した住民側に対し実現していれば安くなっていた分の電気料金相当額の支払いを求め提訴していました。
マンション管理組合とは
分譲マンションの一室を購入するとその部分の所有者、すなわち「区分所有者」になります。そして区分所有者は自動的に管理組合員になります。管理組合はマンションの建物や敷地等の管理を行う機関です。組合員はその集会によって理事や監事などの役員を選任してマンションの維持管理を行っていくことになります。実際には管理会社に管理委託することが多いと言えます。組合員になるのはあくまで区分建物の所有者であって賃借人は該当しません。つまり賃貸マンションの入居者は区分所有者ではなく、同時に管理組合員でもありません。
総会決議事項
総会は株式会社の株主総会のように通常総会と臨時総会があります。総会の招集は開催日の1週間以上前に各区分所有者に通知され(区分所有法35条)、書面や委任状によって議決権を行使することもできます。議決権は通常1戸につき1つですが、区分所有法では床面積の割合となっております(14条)。決議事項に関しては、役員選任・解任、管理費の徴収、共用部分の管理方法、修繕費の積立といったマンション管理の基本事項については出席者の過半数(普通決議)で、管理規約の変更、共用部分の変更、義務違反者への提訴といった事項では組合員の4分の3の賛成(特別決議)、建物の建て替えについては5分の4の賛成が必要となっております。
管理規約と細則
区分建物の専有部分と共用部分の範囲や管理組合の業務、管理費用といった事項については管理規約で定めることもできます(30条)。管理規約については国交省が「マンション標準管理規約」を公表してますので基本的にはそれをベースにしていくことになります。そして更に個々のマンションごとに細かなルールを定めたものが使用細則です。これにはゴミの出し方やペット関係、放置自転車の対処といった普段の住人の生活に直結したものが定められることとなります。マンション内でのトラブルや問題等の対処は基本的にはこれら管理規約や使用細則によって解決されることとなります。
コメント
本件で一審札幌地裁と二審札幌高裁は544戸のうち2戸が個別の電気供給契約を解除しなかったことから一括受電方式を導入できなかったとして損害の賠償を命じておりました。しかし最高裁はこれを否定しました。管理組合の総会決議とそれにより個別の契約解除を義務付ける細則は共有部分ではなく専有部分の関するものであり無効であるとしました。区分所有法では管理組合の管理の範囲は敷地や共有部分となっております。個別の部屋については管轄外と判断されたものと考えられます。この判決により管理組合で決定できる事項とできない事項がかなり明確になったものと言えます。個々の部屋に関連する事項については全員が同意しなければ変更が難しいと言えます。マンション管理業務の際には管理組合で決定できるのか、それとも住人全員の同意が必要な事項かについて注意していくことが重要と言えるでしょう。
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斎藤 誠(三井住友信託銀行株式会社 ガバナンスコンサルティング部 部長(法務管掌))
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奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
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潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
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