公道カート「マリカー」敗訴、標章の保護について
2018/09/28 知財・ライセンス, 商標関連, 商標法, 不正競争防止法

はじめに
任天堂のゲームソフト「マリオカート」のキャラクターコスチュームや略称の「マリカー」を不正に使用しているとして、同社が「マリカー」(現MARIモビリティ開発)に対し差止と損害賠償を求めていた訴訟で27日、東京地裁は請求を認める判決を出していたことがわかりました。今回は標章の保護について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、カートの貸与等を行っていた「マリカー」は任天堂の人気ゲームソフト「マリオカート」のキャラクターに扮して東京の公道をカートで走ることができるサービスを展開しておりました。使用されるカートからコスチュームにいたるまでゲーム内のレースに酷似していたとのことです。また同社の称号である「マリカー」もマリオカートの略称として定着していたものとされます。これに対し任天堂は「マリカー」という標章の使用、マリオ等のコスチュームの使用、またその画像等の使用の差止ならびに損害賠償を求め提訴しておりました。一方「マリカー」側はすでに「マリカー」の商標登録を済ませており違法性は無いと反論していたとされます。
商標と標章
知的財産権の世界では商標と標章という言葉が出てきます。これらはどういった関係にあるのでしょうか。商標法2条1項によりますと、「この法律で『商標』とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令でさだめるもの(以下『標章』という。)であつて、次に掲げるものをいう」としてまず標章について定義しております。そしてその中で商標を「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用するもの」「業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用するもの」としています。つまり商標とは標章に含まれるものであり、業として商品・役務に使用するものということができます。
商標権による保護
商標権は特許庁による登録によって発生します(商標法18条1項)。そして商標が登録されますと、その商標権は登録の日から10年間存続することになります(19条1項)。これは更新することもできます(20条)。商標権を侵害された場合にはその侵害行為の停止や予防などの差止請求と損害賠償請求ができ(36条)、損害額の推定規定も置かれております(38条)。また罰則として10年以下の懲役、1000万円以下の罰金またはこれらの併科とされており(78条)、両罰規定として法人に対しては3億円以下の罰金が科されます(82条1項1号)。
不正競争防止法による保護
未登録商標等であったとしても商標法等とは別に不正競争防止法で保護される場合があります。不正競争防止法では「不正競争」として「他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するもの…)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し…他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」を禁止しております(2条1項1号)。つまり周知性、類似性、混同可能性がある場合には不正競争行為として差止や損害賠償請求ができ(3条、4条)、5年以下の懲役、500万円以下の罰金またはこれらの併科とする罰則も置かれております(21条2項1号)。
コメント
本件でマリカー社は2016年に「マリカー」を商標として登録を受けておりました。それゆえに任天堂側も商標法に基づく商標権侵害として法的措置を講じることができない事態に陥っていたと言えます。そこで他の知的財産権侵害や不正競争防止法違反として争うことになりました。東京地裁もその点につき認めたと考えられます。任天堂は商標登録についても異議を申し立て、争う姿勢を見せております。またマリカー社側もすでに商号を変更しております。以上のように文字や図形、記号、音など業務として開発し、使用してきた知的財産は法的保護のされ方が多様で、登録を要するものや複雑な要件が存在するものがあります。自社の標章等をすでに登録されていたり、また冒用や不正使用がされている場合にはどのような手段で救済ができるかを正確に把握することが重要と言えるでしょう。
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