株式を1番高い値段で譲渡しなかったとしても役員としての注意義務違反はなし=国際興業の株主代表訴訟
2013/03/01 商事法務, 会社法, その他
概要
会社が保有する帝国ホテル株を不当に安く売却し損害を与えたなどとして、国際興業ホールディングス(HD)が、米投資会社サーベラスグループから国際興業に派遣された現旧役員3人に計約260億円の損害賠償を求めた株主代表訴訟の判決が28日、東京地裁であった。谷口安史裁判長は、役員としての注意義務違反はなかったとして請求を棄却した。
判決は、帝国ホテル株を1株1万円で買い取る意向を示す書面を提出した会社があったのに、3人が1株8750円を提示した別の不動産会社への売却を承認したことについて、「書面は不動産会社との売買契約予定日の取締役会に突然提出された上、その内容が法的義務を伴うものではなかった」などと指摘。1株8750円で売却した方が会社に有利と判断したのは合理的とした。
参照条文
会社法
(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)
第423条 取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(責任追及等の訴え)第847条
関連判例
最高裁判所第一小法廷(上告審):平成21年(受)第183号
アパマンショップHD株主代表訴訟上告審判決
【事案の概要】
上告補助参加人の株主である被上告人が、参加人の取締役である上告人らに対し、事業再編計画の一環として株式の評価額が1株当たり6561円ないし1万9090円であるA社の株式を1株当たり5万円の価格で参加人が買い取る旨の決定をしたことにつき、取締役としての善管注意義務違反があり、会社法423条1項により参加人に対する損害賠償責任を負うと主張して、会社法847条に基づき株主代表訴訟を提起した事案の上告審である。上記決定についての上告人らの判断は参加人の取締役の判断として著しく不合理なものということはできないから、上告人らが参加人の取締役としての善管注意義務に違反したということはできないとした事例。
コメント
株式を不当に処分し、会社に損害を与えたとして損害賠償を求める株主代表訴訟が東京地裁に起こされていた。これについて、「書面は不動産会社との売買契約予定日の取締役会に突然提出された上、その内容が法的義務を伴うものではなかった」などと指摘し、原告の請求を棄却している。
株式の譲渡価格は1株1250円も安く売却されたことになるが、書面が不動産会社との売買契約予定日の取締役会に突然提出されたものである点や、その内容が法的義務を伴うものかどうかという点を考慮して判断されたようである。
なお、帝国ホテル株に関しては、日比谷エリア再開発で地の利を持つ三井不動産に対し1株8750円、総額861億8750万円で売却されている。
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