公取委が東京五輪めぐり電通などに33億円納付命令、課徴金とは
2025/06/26 コンプライアンス, 独禁法対応, 独占禁止法

はじめに
東京五輪をめぐる談合事件で、公正取引委員会は23日、広告最大手の電通グループなど7社に対して、総額33億円の課徴金納付命令を出しました。併せて、再発防止を求める排除措置命令も発出されています。今回はこの課徴金制度について、基本的な仕組みを振り返ります。
事案の概要
報道によれば、電通グループ、電通、博報堂、東急エージェンシー、ADKマーケティング・ソリューションズ、セレスポ、フジクリエイティブコーポレーション、セイムトゥーの計8社は、2018年4月までに東京五輪の大会組織委員会が発注する一般競争入札(テスト大会の計画立案や随意契約の実施業務など)で、事前に受注予定企業を決定する旨の合意を行っていたとされます。
組織委員会の大会運営局元次長や電通グループを中心に調整が行われたとされ、受注調整の結果、契約総額は約437億円に達しました。これを不当な取引制限とみなした公正取引委員会は、8社のうち7社に対して課徴金と排除措置命令を出しました。
課徴金の内訳は、セレスポが約11億6,319万円、電通グループが約4億9,556万円、博報堂が約4億9,448万円となっています。
課徴金とは
課徴金とは、法律違反により得た不当な利益を国が剥奪するために課す金銭的措置のことです。最も代表的なのが独占禁止法(独禁法)に基づく制度で、その他にも景品表示法や金融商品取引法などに規定されています。
課徴金の目的は、刑事罰や行政処分では取り戻せない不当利益を回収し、違反行為を抑止することにあります。従って、金額は罰金などと比べても非常に高額となることが多く、企業の経営を圧迫するケースもあります。
そのため、課徴金制度にはリーニエンシー制度(減免制度)が導入されており、違反行為を最初に自主的に申告した事業者については課徴金が全額免除されるなどの優遇措置が設けられています。これにより、違反行為の摘発促進が図られています。
独禁法における課徴金対象行為
独禁法上、課徴金の対象となる主な行為は次のとおりです:
- 不当な取引制限(第7条の2)
- 支配型私的独占(第7条の9第1項)
- 排除型私的独占(第7条の9第2項)
- 共同の取引拒絶(第20条の2)
- 差別対価(第20条の3)
- 不当廉売(第20条の4)
- 再販売価格の拘束(第20条の5)
- 優越的地位の濫用(第20条の6)
中でも「不当な取引制限」は、カルテルや談合といった典型的な違反行為を指します。これらは市場の競争を著しく阻害し、消費者利益を損なうことから、特に重く取り扱われています。
課徴金率は行為の内容によって異なり、不当な取引制限と支配型私的独占が最も高く、それぞれ売上額の10%、6%が課される可能性があります。
課徴金の算定方法
課徴金は、原則として違反行為期間中の売上高に所定の算定率を乗じて算出されます。違反行為の始期は、調査開始日から最長で10年前まで遡ることが可能です。
また、不当な取引制限や支配型私的独占の場合は、関連業務の対価や談合金なども含めた広い範囲で売上が算定対象になります。
一方、同一事件で課徴金と刑事罰としての罰金が並行して課される場合、罰金額の50%が課徴金から控除される仕組みとなっています(第7条の7など)。
なお、算定額が100万円未満となる場合は課徴金が免除されます。
コメント
今回の談合事件では、関与企業8社による事前合意に基づき、総額約437億円の受注調整が行われたとされ、公正取引委員会はこのうち7社に対して総額33億円超の課徴金納付命令を発出しました。
課徴金制度は、法律違反による不当な利益を厳しく取り締まるための重要な制度です。売上に基づいて高額の金銭を徴収することから、違反行為に対する抑止力も大きいとされています。
実際、過去には課徴金の納付により倒産した企業も存在しており、その影響は非常に大きいと言えます。
今後も、企業としては自社の取引慣行や商談の透明性を改めて見直し、リーニエンシー制度の仕組みも含めて社内で適切に理解を深め、違反行為の防止に努めていくことが求められます。
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