高度プロフェッショナル制度について対象や手続き概要まとめ

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一時政治を賑わせ、話題となった「高度プロフェッショナル制度」。
2019年4月から導入され「高度プロフェッショナル制度って何だろう?」とか「自分の会社も検討している」といった方も多いのではないでしょうか。

2019年7月2日、日本経済新聞社がまとめた「社長100人アンケート」では30.6%が脱時間給の導入を検討するとしています。

同アンケートでは年功賃金の見直しをすると回答した企業が5割を超えています。
人材不足が叫ばれ人件費が上昇する中、成果に対する評価に軸を移そうという企業が増えていることが背景となっています。
そのための選択肢の1つとして、2019年4月から導入された「高度プロフェッショナル制度」が脚光を浴びているのです。

そこで今回は高度プロフェッショナル制度について改めて簡単に振り返るとともに、導入の手続きや注意すべき点をまとめます。

1.高度プロフェッショナル制度とは?

高度プロフェッショナル制度とは、「一定の労働者について、労働時間規制の対象から除外する仕組み」のことです。
導入の意義としては時間で拘束するのではなく成果を評価し、ワークライフバランスの健全化に貢献することが期待されています。
一方で労働時間規制の対象から除外することで残業が増え、残業代0で労働者を長時間労働させる結果に繋がるというのが反対派の意見でした。

制度の導入によってワークライフバランスが健全化するのか、逆に反対派が懸念するように長期残業の固定化に繋がるのかは今後の課題でしょう。
企業としては、ワークライフバランスはともかく人事制度の「成果への評価」への変化の一環として興味を持っている部分が大きいという段階です。

2.高度プロフェッショナル制度の対象

高度プロフェッショナル制度が適用できる労働者には制限があります。
先に結論を述べておくと、①高度プロフェッショナル制度に相応しい業務であること②職務が明確に定められていること③高い報酬を得る見込みがあることです。

①高度プロフェッショナル制度に相応しい業務であること

労働基準法では「高度の専門的知識等を必要とし,その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる業務」(労働基準法41条の2第1号)のみ、つまり制度に相応しいものとして厚生労働省が定めた業務にのみ適用できるとされています。
2019年7月現在では金融商品の開発、金融商品のディーリング、アナリスト(企業・市場等の高度な分析)、コンサルタント、研究開発の業務が対象となる業務となっています。

ただし対象業務に当てはまればOKというものではなく、その中で高度なプロフェッショナルとしての業務をしていれば該当するという基準です。

②職務が明確に定められていること

「使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること」が必要になります。(労働基準法第41条の2第1項第2項イ)

具体的には以下の要件を満たす必要があります。

・ 業務の内容、責任の程度及び職務において求められる成果その他の職務を遂行するに当たって求められる水準が具体的に定められており、対象労働者の職務の内容とそれ以外の職務の内容との区別が客観的になされていること
・ 業務の内容が具体的に定められており、使用者の一方的な指示により業務を追加することができないこと
・ 働き方の裁量を失わせるような業務量や成果を求めるものではないこと

(引用:厚生労働省パンフレット)

③高い報酬を得る見込みがあること

より正確には「使用者から支払われると見込まれる賃金額が基準年間平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること」が基準となっています。(労働基準法第41条の2第1項第2項ロ)
2019年7月現在では「年収1075万円以上」となっています。

あくまで厚生労働省が定める数字が基準となっているため、変更される可能性があることには注意が必要です。

3.導入の手続き

いざ高度プロフェッショナル制度を導入しようとした場合は、一定の手続きが必要です。
大きく分けて①労使委員会の決議②対象労働者の同意が必要となります。

①労使委員会の決議

まず労使委員会を組織し、導入の決議を得なければなりません。(労働基準法41条の2本文)
適正な決議がなされていない場合には、合意があったとしても、高度プロフェッショナル制度の効果が生じないとされています。(厚生労働省労働基局長通達)

また、導入においては企業に対象労働者への健康確保義務が課されます。

対象労働者の健康管理時間を把握する措置及び当該事業場における健康管理時間の把握方法を決議で明らかにしなければなりません。(同法第41条の2第1項第3号)
休日の確保手続きについても決議する必要があります。(同項第4号)
そのほかにも健康福祉に関する措置などを決議する必要があります。(同項5号ないし10号)

②対象労働者の同意

対象労働者の同意が必要となります。(労働基準法41条の2本文)
同意する内容は(ⅰ)業務の内容(ⅱ)責任の程度(ⅲ)求められる成果です。

その上で(ⅰ)〜(ⅲ)の内容を書面(職務記述書)にて明らかにした上で、その書面に労働者の署名を受けることが必要になってきます。

4.まとめ

高度プロフェッショナル制度について、その概要と対象、導入手続きを簡単にまとめました。
反対派も少なくなかったこの制度、十分かどうかは議論の余地がありますが、様々な規制や手続きで配慮されていることが伺えたことでしょう。

法務担当としては、必要とされている条件や手続きを丁寧にクリアしながら、問題なく導入・スタートとなるように注意しましょう。

参考:厚生労働省パンフレット

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[著者情報] kogure

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2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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