犯罪歴のある人の雇用まとめ

はじめに

 人材採用支援を行う会社が、先日犯罪歴などのある人を従業員として雇用するという思いのある企業を募集すると発表しました。一度犯罪を犯してしまうと社会復帰は難しく、折角更生したのに経済的に困窮し、再び犯罪に手を染めることも珍しくないと言われます。このような状況では、企業の社会的役割のひとつとして過去に犯罪を行った者の雇用が求められるようになってもおかしくはありません。しかし、そうは言っても犯罪歴のある方への世間の風当たりは強いものがあり、採用を担当する人事の方も難しい選択を迫られると思います。そこで、犯罪歴がある人材を雇用する場面で、法務に携わる方が注意するべきことを確認していきましょう。

犯罪歴の調査

 採用活動の際に、応募者の犯罪歴を人事の方は知ることはできるでしょうか。
 まず、面接を行う際に応募者に対して犯罪歴の有無を聞くことも考えられます。また、履歴書によっては賞罰の記載欄があり、そこで犯罪歴の有無がチェックできます。最近は賞罰の記載欄のない履歴書も増えていますので、会社の方で指定の履歴書をひな型として提供することも考えられます。
弁護士法人ALG&AssociatesのHP
 賞罰に記載すべき犯罪歴については、世間のイメージとは異なり限定的であるといえます。確定した有罪判決は含まれますが、公判中であったり、処分保留のまま釈放となっていたり、起訴猶予のまま釈放された場合は犯罪歴に含まれません。また、裁判が確定していても刑期を終えて10年が経過したり、執行猶予期間が経過したものも含まれません。
働く人のための労働相談室のHP
 書面と口頭のいずれであっても犯罪歴を尋ねることは、触れられたくない個人情報でもありますし差別の原因にもなりえます。そのため、企業としてはプライバシーの侵害を理由に損害賠償を請求されるリスクが考えられます。そのリスクを回避するため、応募者の担当する業務の内容から犯罪歴の確認が必要な場合にのみ尋ねるべきと考えることもできます。しかし、冒頭の犯罪歴がある応募者を採用しようとする企業が注目を浴びるくらい、現在の日本は未だに犯罪歴のある方とともに働くことを避ける傾向にあります。また、厚生労働省の採用時に尋ねるべきではない事項につき、犯罪歴は含まれていません。採用面接で犯罪歴を尋ねたり書かせたりすることで直ちに損害賠償につながるおそれは少ないのかもしれません。
厚生労働省のHP
茨城の弁護士による労働問題相談のHP
中途採用サポネットのHP

個人情報としての犯罪歴の扱い

 犯罪歴を採用面接で知るところとなり、その情報を企業が手にした場合、その個人情報はどのように扱えばよいでしょうか。収集した個人情報が流出することになれば企業としては損害賠償を請求されることが考えられます。採用された場合には応募者は従業員になりますので、他の従業員と一緒に採用担当者のみが閲覧できるように鍵のついたキャビネットなどに入れて保管されることになるでしょう。一方で、不採用の場合には数年間保管するために採用時と同様に鍵付きキャビネットに入れるほか、履歴書を採用終了に際して応募者に返却したり、応募者に了承を得たうえで履歴書を破棄することが考えられます。
労働法ナビのHP
Pマーク支援ブログのHP

犯罪歴のある者の解雇

 企業がある人物を雇い入れたところ、その人に犯罪歴があったことが判明した場合に企業は解雇することができるでしょうか。
 採用時の提出書類や口頭での応答内容に虚偽があった場合、それは経歴詐称となりえます。会社が就業規則に経歴詐称を懲戒解雇事由として設けているのであれば、犯罪歴を明かさなかったことを理由に解雇できるでしょう。
 裁判例では経歴の内容を「重要な経歴」としていますが、犯罪歴はこれにあたるとしていますので、結論は変わらないといえます。
ロア・ユナイテッド法律事務所のHP

関連法律タグ:
 
[著者情報] itou

詳細情報はありません。

このニュースに関連するセミナー

法務NAVIまとめ コンプライアンス 労務法務 労働法
第89回MSサロン(名古屋会場)
2017年11月14日(火)
19:00 ~ 21:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
和田圭介
愛知県春日井市出身
京都大学法学部・Duke大学LLM卒業。
2005年弁護士登録。
2013年ニューヨーク州弁護士登録。
世界最大規模の国際法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所を経て、
2015年、IBS法律事務所を開設。
国内外の企業法務案件を主に扱っており、国際取引・英文契約を得意としている。
大手総合商社・外資系企業の法務部への出向経験があるため、企業法務の現場の問題意識にも通じている。
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、 「モノづくり企業のためのIoT法務入門」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
法務NAVIまとめ コンプライアンス 労務法務 労働法
第91回MSサロン(東京会場)
2017年11月22日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
東京都新宿区
講師情報
近内京太
2006年の弁護士登録以来、丸の内総合法律事務所にて、企業の法律顧問業務のほか、M&A、株主総会、危機管理、海外取引、企業関係訴訟、その他の企業法務全般を取り扱う。
2003年京都大学法学部、2016年ワシントン大学ロースクール(LLM)卒。2017年ワシントン州司法試験合格。2011年1月~2012年6月預金保険機構、2016年8月~2017年7月米国シアトルのShatz Law Group勤務。
趣味は、ロングトレイルを中心にランニング全般。
[近時の著作]
「自動運転自動車による交通事故の法的責任~米国における議論を踏まえた日本法の枠組みとその評価[上]・[下]」(国際商事法務44巻10号1449頁・11号1609頁) (2016)
American Bar Association, Section of International Law, Regional and Comparative Law: Asia Pacific, 51 The Year In Review 579 (2017)
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、 「民法(債権法)改正の概要と約款取引について企業のとるべき対応」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
法務NAVIまとめ コンプライアンス 労務法務 労働法
第90回MSサロン(大阪会場)
2017年11月15日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
大阪府大阪市北区
講師情報
井関勝守
CPJAPAN綜合特許事務所 所長弁理士

知的財産に関する実務経験約18年。
2001年弁理士登録。

国内企業のみならず、多くの海外企業の案件に関わり、権利化業務に留まらず、知財紛争に関する支援や、産学連携を含む技術移転の支援、知財に関する交渉、契約、知財情報の分析、知財を活用した事業戦略・海外展開に向けた相談業務など多面的な業務を経験する。
また、発明推進協会の模倣被害アドバイザー、中小機構の経営支援アドバイザー、中小企業等外国出願支援事業の審査員(大阪府)、大阪府「ものづくりイノベーションプロジェクト」評価協力員等の公的な業務にも選任され、これまで関わってきた。
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、 「知的財産を含む契約における特有の留意事項~自社事業を円滑に進めるために~」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)

あわせて抑えておきたい関連記事

【特集】第3回目 社員・役員を告訴する手続まとめ ... 第1 はじめに  こんにちは。企業法務ナビの企画編集部です。「社員が犯罪を行った場合の企業の対応」というテーマで特集記事をお送りしてきましたが、第3回目の今回が最終回となります。今回は、犯罪を犯した社員・役員を会社が刑事責任を追及する手続、いわゆる告訴の手続についてみていきたいと思います。 ...
【法務NAVIまとめ】日本版クラスアクション(消費者裁判手続特例法)まとめ... 概要 「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」(以下、「消費者裁判手続特例法」と記載する)が2016年10月1日から施行される。 この制度は、法施行後の不法行為や法施行後に締結した契約のトラブルにより、同じ原因で多数の被害が出た場合に、被害者の代わりに消費者団...
労働組合法における「不利益取扱い」まとめ... ・はじめに 先日、小学校で英語指導助手をしていたオーストラリア人の英語教師が卒業式への出席を拒否されました。それに対し労働組合が、小学校による拒否行為は不当労働行為にあたるとして、大阪府の労働委員会に申し立てたところ、労働委員会は市に謝罪文を手渡すように命令しました。この外国人教師は、労働環境...