関西電力が旧経営陣を提訴へ、会社法の任務懈怠責任について

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はじめに

 旧役員らの金品受領問題をめぐり、関西電力は15日、八木元会長や豊松元副会長ら5人に対し計約19億3600万円の損害賠償を求める訴えを定期することを決定しました。取締役としての注意義務を怠ったとのことです。今回は会社法が規定する役員の任務懈怠責任について見直していきます。

事案の概要

 報道などによりますと、関西電力の八木元会長ら旧経営陣は2011年から2018年にかけて、高浜原発のある福井県大飯郡高浜町の元助役から約3億2000万円の金品を受け取っていたことが税務調査で明らかとなりました。この問題を受け同社では元検事総長の但木氏などで構成される第三者委員会が設置され旧経営陣や高浜町からの金品の流れが調査されていたとされます。同社では旧経営陣らに対し計約19億3600万円の損害賠償を求め提訴することを15日の臨時監査役会で決定したとのことです。

任務懈怠責任とは

 取締役や執行役、会計参与などの会社役員と会社との関係は委任関係に立ちます(会社法330条)。そして役員等は会社に対し善管注意義務と忠実義務を負っております(民法644条、会社法355条)。そして役員等が「任務を怠った」ときは会社に対して生じた損害を賠償する責任を負います(423条1項)。これを任務懈怠責任と言います。つまり会社に対する善管注意義務に違反する場合に任務懈怠となると言えます。任務懈怠の類型は多岐にわたり、会社法や独禁法、金商法などの法令違反行為や、競業取引、利益相反取引、違法配当、利益供与など様々なものが該当することになります。

提訴手続き

 役員等に任務懈怠がある場合、会社は当該役員に対して訴訟を提起することとなります。具体的には監査役が調査を行い、任務懈怠があると認める場合には会社を代表して提訴することとなります。しかし会社が提訴しない場合には株主が会社を代表して提訴することも可能です(847条1項)。この場合、まず株主は会社に対して責任追及の訴えを提起するよう請求します(同1項、3項)。請求の日から60日以内に会社が提訴しない場合に当該株主が提訴することとなります。この株主については保有株式数の制限はなく、6ヶ月以上前から1株以上保有していれば提訴することができます。なおこの株主と役員との訴訟に会社が補助参加して関与することも可能です(849条1項)。

経営判断原則について

 取締役の会社事業に関しての意思決定の結果、会社に損害が生じた場合でも常に任務懈怠責任が生じることとなれば取締役にとって酷であり、積極的な事業判断ができなくなってしまいます。そこで一定の場合には会社に損害が生じていても取締役は責任を追わないとする考え方があります。これを経営判断原則と呼びます。具体的には、取締役の判断当時、①経営判断を下すまでの情報収集・分析に不注意な点が無いこと、②経営判断の内容自体に不合理な点が無いことが基準となります。

コメント

 本件で関電旧経営陣は、福井県での原発事業に関連して高浜町の元助役から多額の金品を継続的に受け取っていたと言われております。元助役は既に亡くなっており、刑事告発は見送られておりますが、これらの行為は会社法の贈収賄罪等に該当しうるものと言えます。法令違反行為を行うことだけでなく、他の取締役や会社の法令違反行為を防止せずに容認する場合も善管注意義務に違反し任務懈怠となると言えます。以上のように会社の役員等は会社事業について広範な裁量が与えられている反面、会社や株主に対し重い責任も負っております。その責任をある程度軽減するため責任限定契約や役員の責任追及のための保険なども出てきております。どのような場合に責任が生じるのかや、その責任の軽減手段などを予め把握しておくことが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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