フリーランス人材を使う前に知っておきたい!独禁法の対象拡大について

1 はじめに

 公正取引委員会が設置する競争政策研究センターは「人材と競争政策に関する検討会」を開き、2018年2月、報告書をまとめました。フリーランス人材の処遇改善に関する内容と、企業間の共同行為に関する内容が中心です。そこで、今回は企業(発注者)がフリーランス人材を使用する局面で問題となりうる行為がどのようなものかを検討したいと思います。

2 検討会で問題とされた行為

 従来、公取委は「雇用契約は独禁法の対象となる取引に該当しない」との見解でしたが、今回の検討を経てまとめられた報告書では、「行為ごとに個々に検討すべきだ」との方針が明らかになりました。今回の報告書で独禁法上問題がありうるとされたのは、労働法制でカバーしきれない以下の行為です。

①発注者が共同合意して人材獲得競争を制限する行為
 企業はフリーランス人材に対し仕事を発注しますが、この時、金額などの条件を揃えるよう他社と共同合意したり、「フリーランス人材を互いに引き抜かない」と合意することなどが、独禁法上、原則として問題となるとされたようです。例えばスポーツ分野で、「選手が自由に移籍できると年俸が高騰してしまうので、所属選手の引き抜きを互いに止めよう」といった合意がなされることがあります。このような合意は、独禁法上の問題があるとのことです。

②取引の相手方の利益を不当に奪い競争を妨げる行為
 発注者が著しく不利益な要請等をフリーランス人材に行っても、これを受け入れざるを得ないような場合には、発注者が優越的な地位を濫用しているとされるようです。発注者が優越的地位にあると判断されやすくなる事情としては、
・フリーランス人材が企業と比べて情報収集能力や交渉力が劣ることに起因して、取引先変更の可能性が低い場合
・フリーランス人材の事業規模が小さく、業務処理能力の関係上、同時に取引できる発注者が限られる場合
・発注者間で情報が広がりやすい業界において、フリーランス人材側が取引条件を交渉すること自体がネガティブな評判となり、取引先変更の可能性を低下させる場合
・フリーランス人材側の選択の自由が、発注者により制限されている場合
等が考えられます。
 行為のイメージとしては、フリーランス人材が他の企業からの業務を受注できないように、他の企業に対し、当該フリーランス人材へ業務を発注することを取りやめさせるといったことが考えられます。

③取引の相手方を欺き、自らと取引させることで競争を妨げる行為
 発注者がフリーランス人材に対して事実とは異なる優れた取引条件を提示し、フリーランス人材を誤認させ又は欺き、当該発注者と取引するようにすることで、他の発注者との取引を妨げることとなる場合は、独禁法上の問題が発生する可能性があるようです。例えば、あるフリーランス人材に対し発注者Aが発注者Bよりも高額な報酬を提示したにもかかわらず、実際には低額の報酬しか支払うつもりのない発注者Bが虚偽の報酬を提示し、フリーランス人材において判断を困難にさせるといったことが考えられます。

④他の発注者が役務提供者を確保できなくさせる行為
 発注者がフリーランス人材に合理的に必要な範囲で秘密保持義務・競業避止義務等を課すことは問題となりません。ただし、それによって他の発注者がフリーランス人材を確保できなくなり、商品・サービスの供給が困難となる場合に、独禁法上問題となる場合があるとのことです。

⑤競争政策上好ましくない行為
 その他、独禁法上問題となる行為を誘発する行為や、公正かつ自由な競争を損なう行為も問題となりえます。例えば、
・フリーランス人材にとって秘密保持義務・競業避止義務の対象範囲が不明確であること
・フリーランス人材への発注を全て口頭で行うこと
・取引条件について他のフリーランス人材への非開示を求めること
・発注の際に取引条件をあいまいな形で提示していること
等が考えられます。

3 今後の実務について

 フリーランス人材を登用する部門・担当者は会社ごとに異なると思われますが、営業部門を除き、他の部門は独禁法への関心が薄いことが多いため、報告書は意識改革を迫っています。法的素養に優れる法務担当者が報告書の内容を分析し、フリーランス人材を登用する部門と知識を共有することが必要です。しかしながら、報告書は全50頁もあり、専門的な内容となっているため、読み進めるにあたって、困難が予想されます。要点を4ページにまとめたリーフレットもあるため、まずはリーフレットから読み進め、より深く探っていきたい場合に報告書を読むなどで、理解を深めることができるでしょう。

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2005年東京大学法学部第一類卒業
2006年弁護士登録(第一東京弁護士会)
2015年バージニア大学ロースクール卒業(LL.M.)
2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにある
ミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)、同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
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東北大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了

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法令関係とデータの利活用関係を担当

近時の著書等には『個人情報管理ハンドブック[第4版]』(商事法務、2018)、
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「ビッグデータ・個人情報の利活用と先端ビジネス」(Business Law Journal、2018年8月号付録〔LAWYERS GUIDE〕)等がある。

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