グリー、特許権侵害でSupercell提訴 特許権侵害の救済手続について

第1 はじめに

 今回は、企業が自社の有する特許権が侵害されたしまった場合に、企業法務担当者はどのような救済措置を取るべきかについて、平成30(2018)年1月24日に発表されたグリー株式会社(東京都港区)の事例を参考に見ていきたいと思います。

第2 事件の概要

 平成30(2018)年1月24日に出されたグリー株式会社(東京都港区)の発表によると、グリー株式会社は、Supercell社が開発・運営するスマートフォン向けゲームアプリ「クラッシュ・ロワイヤル」「クラッシュ・オブ・クラン」を含め、日本で配信中のゲームアプリにおいて、多数のグリー株式会社が保有する特許権を侵害している可能性があることを発見したとのことです。そして、平成29(2016)年9月に、グリー株式会社はSupercell社に対して当該事実を伝えるとともに話し合いでの解決を提案したところ、Supercell社は話し合いを拒否し、ゲームアプリの配信を継続したとのことです。したがって、グリー株式会社は「クラッシュ・ロワイヤル」ならびに「クラッシュ・オブ・クラン」において使用されている十数件の特許の使用差止の仮処分(民事保全法に基づく、裁判所が決定する暫定的な処置)を東京地方裁判所に申立て、損害賠償請求も順次行なうとのことです。

グリー、特許侵害で「クラクラ」Supercell提訴 「話し合いを拒否された」(ITmediaビジネスon-line)

Supercell社との間の特許紛争について(グリー株式会社)

第3 特許権侵害への救済手続

1 民事手続

(1)差止請求

 特許権侵害に対する救済措置として、特許法上で差止請求に関する条文が規定されております。具体的には、①特許権「侵害」行為をする者に対するその行為の「停止」の請求(特許法100条1項)、②特許権「侵害」行為をする「おそれがある者」に対する侵害の「予防」の請求(同条)、③侵害行為を組成した物(物を生産する方法の特許発明については侵害行為によって生産された物を含みます。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な措置の請求をすることができる。そして、③について、①又は②と共に請求することができます。なお、既に特許権の侵害が現実化しており、これを放置しては著しい損害が生じる可能性がある場合など緊急性があるときには、上記の事案のように裁判所に対して、まず侵害行為の停止を内容とする仮処分を申立てることが考えられます。

書式例 訴状 特許侵害差止等請求事件:裁判所(PDFファイル)

(2)損害賠償請求

 まず、原則として「故意」又は「過失」により、特許権という「他人の権利」を侵害し、模倣品を製造・販売・輸入するなどしている者に対して、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求をすることができます。なお、不法行為に基づいて損害賠償を請求する場合には、侵害された者が侵害された事実について証明しなければならないため、その立証活動は困難な場合が多くあるといえます。そこで、特許法は損害額について算定規定を設けており、侵害者の利益額を権利者の利益の額と推定されます(特許法第102条2項)。また、損害賠償請求の前提として必要な侵害者の故意・過失について、侵害行為について「過失」があったものと推定(特許法第103条)し、特許権者から侵害者に対する損害賠償請求を容易にしています。したがって、特許権を侵害された企業の法務担当者は特許権に基づく損害賠償請求を始めに検討していくことになるかと思います。

特許侵害と損害賠償の考え方(弁護士法人クラフトマン)

損害賠償を請求する場合、どうして被害者に立証責任があるの?悪魔の証明とは?!(相談LINE)

(3)不当利得返還請求

 特許権を侵害した者が「法律上の原因なく」して「他人の財産や労務」によって「利益」を受けたことにより、「他人に損失を及ぼした」ならば、特許権を侵害した者に対して「利益」を請求することができます(民法703条~704条)。

「 不法行為に基づく損害賠償請求以外に特許権侵害者に対して金銭的な請求をする法的構成は何かありますか 」(朝日中央インターネット法律相談)

不当利得返還請求権とは(債務整理・過払い金ネット相談室)

(4)信頼回復措置請求

 「故意」又は「過失」により「特許権」を「侵害」したことで「特許権者」の「業務上の信用を害した者」に対して、「裁判所」は、特許権者の請求に基づき、「信用を回復するための措置」を命じることができます(特許法第106条)。

2 刑事責任

 特許権を侵害した者は10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金に処すると規定されています(特許法第196条)。
 また、法人については、その業務に関して侵害行為を行った場合、その実行行為者の処罰と併せて、業務主体である法人にも罰金刑が科されます(両罰規定:特許法第201条1項1号)。

特許権侵害への救済手続(経済産業省)

パテントに関する専門用語「特許権侵害の救済」(今岡憲特許事務所)

法庫(特許法)

第4 最後に

 特許権侵害が判明した場合には、特許権侵害により自社に損害が生じている状況であるといえるため、更なる損害を防ぐべく特許権侵害の差止請求をし、加えて、特許法上に基づき、特許権侵害に対する損害賠償請求あるいは不当利得に基づく返還請求を講じるのが妥当であるといえます。その後、信頼回復措置や刑事責任を追及していくことになります。

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西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士

2005年東京大学法学部第一類卒業
2006年弁護士登録(第一東京弁護士会)
2015年バージニア大学ロースクール卒業(LL.M.)
2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにある
ミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)、同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
2017年米国ニューヨーク州弁護士登録

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EUにおける知的財産制度・競争法、EUデータ保護規則をはじめとする
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《東京開催》企業におけるAI活用と個人情報保護・プライバシーの留意点
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18,000円(税別)
東京都港区
講師情報
野呂悠登
TMI総合法律事務所 弁護士

東北大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了

平成27年改正個人情報保護法の全面施行前後に、
個人情報保護委員会事務局において、
法令関係とデータの利活用関係を担当

近時の著書等には『個人情報管理ハンドブック[第4版]』(商事法務、2018)、
「AIによる個人情報の取扱いの留意点」(Business Law Journal、2018年6月号)、
「ビッグデータ・個人情報の利活用と先端ビジネス」(Business Law Journal、2018年8月号付録〔LAWYERS GUIDE〕)等がある。

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
最近、AI関連技術の発展等により、AIの活用に対する期待が高まっており、ビジネスにおいて実際にAIの活用を始める企業が増えてきています。

AIを活用する場合、従来人間の脳が行っていた知的な作業をコンピュータに行ってもらうことになるため、従来想定されなかった様々な法的問題点が生じることが想定されます。
特に、機械学習を用いたAIを用いる際には、従来とは異なる方法で大量の情報を集積し又は処理を行うため、個人情報保護法やプライバシー権との関係が問題となりやすいと考えられています。

本セミナーでは、平成27年の個人情報保護法の全面施行前後において、同法を所管する個人情報保護委員会にて法令の担当者を務めた講師により、
AIを活用することを検討している企業の担当者向けに、企業におけるAI活用と個人情報保護・プライバシーの留意点を具体的な事例を基に解説します。
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09:30 ~ 11:45
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小島国際法律事務所
パートナー 日本及びカリフォルニア州弁護士

東京大学法学部卒
1999年弁護士登録(第二東京弁護士会)
カリフォルニア大学デービス校ロースクール修士課程卒(LL.M.)
国内外の販売店契約に関する取扱い案件多数
著作に「販売店契約の実務」(中央経済社・共著・編集担当)

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レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
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