外国人技能実習生の実態発表

事件の要約

 厚生労働省は平成28年に外国人技能実習生の実習実施機関に対して行った監督指導、送検等の状況について取りまとめ、公表しました。
 その結果、外国人技能実習生が働く事業所の7割で法令違反が確認されました。

事案の概要

1.外国人技能実習制度
 外国人技能実習制度とは、外国人が企業での実習を通じて技術を習得することにより、母国の経済発展を担う人材となることを目的としている制度です。

2.外国人技能実習生の労働者該当性
 外国人技能実習生が受け入れ企業との間で雇用契約を締結し、対価を得て労働に従事する場合には、「労働者」(労働基準法9条)に該当します。そのため、外国人技能実習生と適法な労働者とを異なる取扱いにすることは、労働基準関係法違反になります。

3.今回の実施によって浮かぶ現状と問題点
 全国の労働基準監督機関は、実習実施機関に対して5,672件の監督指導を実施しました。その結果、実習実施機関の70.6%に当たる4,004件で労働基準関係法令違反が認められました。
 主な違反事例として、①労働時間に関する問題が1,348件(23.8%)、②使用する機械に対して講ずべき措置などの安全基準に関する問題が1,097件(19.3%)、③割増賃金の支払に関する問題が771件(13.6%)でした。
 又、外国人技能実習生から労働基準監督機関に対して労働基準関係法令違反の是正を求めてなされた 申告は、平成28年では88件ありました。
 このような外国人技能実習生に対する労働基準関連法違反について、企業は違反内容に応じて労働基準関連法が定める罰則を受けることになります。また、外国人技能実習生に対する労働基準関連法違反は「不正行為」(上陸基準省令の「技能実習1号イ」の項の第18号の表の上欄及び「技能実習1号ロ」の項の第16号の表の上欄に規定されている行為で,かつ,これらの号の本文により技能実習に係る行為)に該当し、改善措置の指導や期間付きの外国人技能実習生の受け入れ停止などの対応が採られることがあり、かつ企業評価も損ないます。
 外国人技能実習生に対する労働基準関連法令違反が生じる原因は、研修 ・技能実習制度の本来の目的を十分に理解せず,実質的に低賃金労働者として扱うことにあると法務省入国管理局は考えています(参照 第1の1(1)「研修・技能実習制度見直しの経緯」)。
 

コメント

 今回の実施により、実習実施機関の7割が労働基準関係法違反にあるという現状は、多くの外国人技能実習生が違法な状態にあるという危険性を示しています。
 外国人技能実習生を取り巻く違法状態の原因として、2つが考えられます。
 1つは、企業が外国人技能実習生の違法な取扱いを容認しているという可能性です。人材不足等の事情を背景に、企業が外国人技能実習生を安価に利用することによって金銭的利益を得ようとしているのだと考えられます。このような場合において、人材不足を解消することは容易ではありません。しかしながら、外国人技能実習生を違法に働かせる企業に対して、就職活動をしている方々は自分たちも外国人技能実習生と同じような違法状態で働かされるのではないかと考えてしまう方も多いのではないかと思います。そのような場合に、就職活動としている方々がそのような違法状態を容認する企業を志望することはまずありえないといえるでしょう。そのため、人材不足を穴埋めするために、外国人技能実習生を違法に取り扱うことは、かえって人材雇用の機会を減少させてしまうことになりかねません。また、違法状態を利用して一時的に金銭的利益を得たとしても、摘発された結果、未払い分の支払い及び罰金の請求により金銭的損害はかえって大きくなります。さらに企業評価も低下する危険を考えれば、外国人技能実習生の違法状態を容認するよりも労働基準関連法の遵守を優先すべきではないでしょうか。
 もう1つは、外国人技能実習生が自ら意欲的に仕事に取り組んだ結果、違法状態に陥ってしまっているという可能性です。発展途上国の外国人技能実習生にとって、日本の賃金は魅力的であるため、技能の習得に伴い対価を得られる環境は望ましいともいえます。そして、企業が外国人技能実習制度を利用することは、外国人技能実習生の母国の経済発展に寄与する側面があり、本来は社会的貢献活動として高く評価されるべき行為です。しかし、企業が外国人技能実習生の熱意に答える形で指導した結果、長時間労働や割増賃金の不払いといった違法状況に陥ってしまうことがあります。ただ、企業が外国人技能実習生の意欲に応じる場合においても、労働基準関連法に違反してしまえば外国人技能実習生の取扱いとしては「不正行為」に該当してしまいます。その結果、企業は労働基準関連法違反に応じた罰則を受けることのみならず、「不正行為」に対する改善措置の指導を受けた事実によって企業評価が低下するおそれもあります。また、停止措置により、外国人技能実習制度に利用できなくなることは、社会的貢献の機会を一時的に喪失することになりかねません。そのため、外国人技能実習生が労働者であることを認識したうえで、適法に扱うことが必要となります。
 外国人技能実習制度を適切に利用している会社は外国人技能実習生に対して、適法な労働者としての法的保障が及ぶことを認識し、労働基準関係法を遵守しています。また、労働基準関連法の遵守のみならず、外国人技能実習生の母国の発展を願って国際交流を積極的に行うとともに、実施地域内での催事に参加を促す等、相互理解を目的とするコミュニケーション機会を増やすことによって、日本国内の滞在を充実化させています。
 今回の発表を機会に外国人技能実習制度を利用している企業は、企業評価を低下させないために外国人技能実習制度を充実化させてみてはいかがでしょうか。その際、適法な労働者と法的取扱いが異なっていないかを見直すとともに相互理解の機会を増やしていくことが重要であると思われます。

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[著者情報] kozaki

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2009年12月 弁護士登録
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■杉谷 聡
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