公取委が大阪ガスに立入検査、優越的地位の濫用について

はじめに

公正取引委員会は3日、大阪ガスが業務委託先販売店に、ガス関連機器の購入を強制していた疑いがあるとして本社への立ち入り検査を行っていたことがわかりました。販売店のガス機器購入実績に応じて担当エリアの範囲を決定していた疑いがあるとのことです。今回は独禁法上の優越的地位の濫用についてみていきます。

事案の概要

日経新聞などによりますと、大阪ガスは大阪など2府4県内で160店以上のガス販売店に業務委託契約と締結しておりました。それらの販売店にガスコンロや給湯器、浴室暖房機などの販売、設置修理点検業務を委託していたとのことです。大阪ガスは販売店に対し、これらの機材を顧客への販売用に購入を強制していた疑いが生じているとしています。大阪ガスは販売店に購入目標額を設定し、そのノルマを達成できない販売店には販売エリアを削減するとし、実際にそのようなペナルティーを科していた疑いもあるとのことです。公取委はこれらの行為が優越的地位の濫用にあたる恐れがあるとして立ち入り検査に踏み切りました。

優越的地位の濫用とは

自己の取引上の優越的な地位を利用して、取引相手方に対し不当に商品を購入させたり、金銭や役務の提供をさせる行為を「優越的地位の濫用」と言います(独禁法2条9項5号、一般指定14項)。両者間に一定の資本金格差、製造委託、修理委託などの特定の業務委託関係がある場合は別途下請法が適用されることになります。また優越的地位の濫用は独禁法、一般指定だけでなく新聞業、運送業、小売業に関する公取委の特殊指定にも規定されております。違反した場合には排除措置命令(20条2項)が出され、「継続して」行った場合には課徴金納付命令の対象となります(20条の6)。

優越的地位の濫用の要件

(1)地位の優越性
公取委のガイドラインによりますと、取引上の地位が相手方に優越しているとは、市場支配的な地位など絶対的に優越した地位である必要はなく、相対的に優越していれば足りるとしています。相手方にとって自己との取引継続が困難になれば、事業経営上大きな支障を来し、著しく不利益な要請でも受け入れざるを得ない関係を言います。この判断にあたっては相手方の自己に対する取引依存度、相手方の代替的取引先の有無、自己の市場におけるシェアなどで総合的に判断されます。

(2)正常な商慣習に照らして不当であること
「正常な商慣習」とは、公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるものを言うとされております。現に存在する商慣習に合致しているとしても直ちにその行為が正当化されるというものではなく、公正競争促進の趣旨から個別具体的に事案ごとに判断されることになります。

(3)各行為類型該当行為
上記地位の優越性が有り、正常な商慣習に照らして不当に以下の各種行為を行った場合に優越的地位の濫用に該当することになります。①取引の相手方に、取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること(2条9項5号イ)、②取引の相手方に金銭、役務、経済上の利益などを提供させること(同ロ)、③取引の相手方からの商品の受領拒否、返品、対価支払の遅滞、対価の減額その他相手に不利益な条件設定等(同ハ)のいずれかを行うことによって成立します。具体例としては融資先に金利スワップの購入、閑散期におけるホテル宿泊券の購入の要請、協賛金負担の要請、従業員の派遣要請、商品に問題が無いにも関わらず受領拒否などが挙げられます。

コメント

都市ガスの小売市場は近年自由化が進み、今年4月から完全自由化がなされ各電力会社などが参入しているとされております。それを踏まえても大阪ガスは全国の都市ガス市場において3割近いシェアを有し、関西においては現在においても圧倒的シェアを占めていると言えます。提携先販売店にとっては大阪ガスからの取引が打ち切られた場合、直ちに事業経営に支障を来すと言えます。また代替的な取引先も、自由化がなされた今でもなお容易に得られるとは考えにくいと言え、地位の優越性は認められるものと思われます。またガス機器の購入実績で割当エリアを増減し、事実上購入を強制することはガス業界での慣習であったとしても、小売店に一方的に不利であることから不当であるとされる可能性は高いでしょう。このような業態が長期間継続していた場合は課徴金が課されることもあり得ると言えます。自社との取引がなくなれば直ちに経営が困難となる取引先は、立場上ある程度の不利な要求は受け入れざるを得ないものと言えます。また業界ではそれが慣習となっていることもあるでしょう。しかし上記のとおり違法か適法かは公正な競争秩序から見て判断されます。自社への依存度が高い相手との取引では、ガイドラインを参考に違法とはなっていないかを注視することが重要と言えるでしょう。

関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] mhayashi

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

企業 法務ニュース コンプライアンス 独占禁止法
『事例で学ぶ 労務問題解決のセオリー講座』~IRACをきちんと回して解決する労務問題~
2018年08月01日(水)
13:30 ~ 16:30
18,000円(税込)
東京都新宿区
講師情報
登島 和弘
サイネオス・ヘルス合同会社
アジア太平洋地域法務責任者

1961年神戸市生まれ
中央大学法学部法律学科卒
立命館大学法務研究科修了
スタンレー電気㈱総務部庶務課法務担当を皮切りに、日本AT&T㈱(米系)契約課長、松下冷機株式会社法務室主事、
セジデム株式会社(仏系)コーポレートサービス部統括部長・法務部長兼任等、を歴任し、現職。
*企業名は当時のまま。
※日本企業・外資系企業双方で通算30年以上の企業法務・国際法務の経験を有する現役の企業法務責任者です。
当社は、東京にて、企業法務パーソン(企業法務担当者・インハウスローヤー等)のためのビジネススクールを運営しています。
企業法務にまつわる「知識」を学ぶ研修・講座は世の中に数多くありますが、当社が運営するリーガルビジネススクール(LBS)は、
法務担当者としての「思考方法」や「仕事術」を学ぶことに焦点を当てています。

今回は、『事例で学ぶ 労務問題解決のセオリー講座』を開催いたします。

★「休業手当は平均賃金の60%でいいんじゃないの?100%払えって、弁護士名で手紙が来たけど。。。!!」
★「先日入社したAさん。実は逮捕歴があったらしいの。そんなこと、人材紹介業者は何も言ってなかったけど、どうしよう。」
★「裁判所から“債権差押命令”っていうのが来たけど、どうすればいいの?ウチの社員に給料を払っちゃいけないらしんだけど、ホント?」
★「この間辞めた営業部長、ライバル会社で働いているらしいけど、それって問題ないの?」
★「Bさんともう3日連絡が取れていません。電話してもでないし、メールも返信なし。自宅に直接行っても誰もでない。どうすればいい?」

なくなってほしいけれど、そう簡単になくならないのが労務問題。企業が人の集団である以上、労務問題から解放されることはおそらくないでしょう。
そうであるならば、法務担当者や人事担当者は、勘や経験のみに頼ることなく、こうした問題への適切なアプローチを理論として学ぶことがとても重要だと考えます。

本講座では、人事部長も務めたことのある現役の企業法務責任者が講師として、上述の事例をベースに、IRAC* (*Issue, Rule, Application and Conclusion)の手法を用いて、
企業における労務問題への適切なアプローチ ー解決に向けて踏むべきステップー を解説し、またこうした問題への予防策にも言及してまいります。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース コンプライアンス 独占禁止法
第101回MSサロン(名古屋会場)
2018年08月02日(木)
19:00 ~ 21:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
和田 圭介
略歴:
愛知県春日井市出身
愛知県立旭丘高校卒業
2004年 京都大学法学部卒業
2005年 弁護士登録(58期 第二東京弁護士会)
クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業入所
2008年 フランス系ラグジュアリーブランド日本支社(出向)
2010年 アメリカ、Duke University School of Law(法学部)LLM卒業
2010年 クリフォードチャンス香港オフィス(出向)
2011年 日系の大手財閥系総合商社のイギリス子会社の法務部(出向)
2013年 ニューヨーク州弁護士登録
2015年 IBS法律事務所開設(愛知県弁護士会に登録換え)
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「取引基本契約書 ~ その作成・交渉の実務及び民法改正に対応する場合の留意点」です。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース コンプライアンス 独占禁止法
【名古屋】共同開発契約/ライセンス契約《法務担当者のための英文契約セミナー:第6回》
2018年07月25日(水)
15:00 ~ 17:00
8,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
和田 圭介
略歴:
愛知県春日井市出身
愛知県立旭丘高校卒業
2004年 京都大学法学部卒業
2005年 弁護士登録(58期 第二東京弁護士会)
クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業入所
2008年 フランス系ラグジュアリーブランド日本支社(出向)
2010年 アメリカ、Duke University School of Law(法学部)LLM卒業
2010年 クリフォードチャンス香港オフィス(出向)
2011年 日系の大手財閥系総合商社のイギリス子会社の法務部(出向)
2013年 ニューヨーク州弁護士登録
2015年 IBS法律事務所開設(愛知県弁護士会に登録換え)
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー
英文契約をこれから担当・現在担当している法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第6回目のセミナー内容は共同開発契約/ライセンス契約です。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース コンプライアンス 独占禁止法
【名古屋】ジョイントベンチャー契約/株主間契約《法務担当者のための英文契約セミナー:第7回》
2018年08月08日(水)
15:00 ~ 17:00
8,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
英文契約をこれから担当・現在担当している法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第7回目のセミナー内容はジョイントベンチャー契約/株主間契約です。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース コンプライアンス 独占禁止法
【名古屋】AIに関する法律問題《ITビジネス法務勉強会:第3回》
2018年08月09日(木)
15:00 ~ 17:00
3,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
和田 圭介 杉谷 聡
■和田 圭介
略歴:
愛知県春日井市出身
愛知県立旭丘高校卒業
2004年 京都大学法学部卒業
2005年 弁護士登録(58期 第二東京弁護士会)
クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業入所
2008年 フランス系ラグジュアリーブランド日本支社(出向)
2010年 アメリカ、Duke University School of Law(法学部)LLM卒業
2010年 クリフォードチャンス香港オフィス(出向)
2011年 日系の大手財閥系総合商社のイギリス子会社の法務部(出向)
2013年 ニューヨーク州弁護士登録
2015年 IBS法律事務所開設(愛知県弁護士会に登録換え)
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー

■杉谷 聡
略歴:
愛知県一宮市出身
愛知県立一宮高等学校卒業
2016年 一橋大学法学部卒業
2017年 弁護士登録(70期 愛知県弁護士会)
オリンピア法律事務所入所
ITに関する法律を学び、ビジネスに活かしていただくためのITビジネス法務セミナーです。第3回目のテーマはAIに関する法律問題です。
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

待機児童解消と企業内保育所 1、待機児童解消の試み  品川区、荒川区、世田谷区が2017年4月を目処に公園の敷地内に保育所を設置し待機児童を解消する見通しであると11月18日付けの日本経済新聞電子版は伝えている。  こうした公共機関の取組みに対して、待機児童解消に向けた企業内努力をまとめました。 2、待機児童の現状  201...
グルーポンで客が殺到して赤字、賠償請求棄却... 概要 大阪府東大阪市の美容室経営会社は、インターネットのクーポン共同購入サイト「グルーポン」に対し、過大にクーポンを販売させられ客が殺到したことにより赤字になったとして、約1700万円の損害賠償請求訴訟を提起していた。3日、大阪地裁は、その請求を棄却した。  原告(美容室経営会社側)は、クー...
【中国】レアアース生産削減 日本への影響は?... 事案の概要 中国の工業和信息化部(工業情報化部)は、2014年8月19日、「2014年第2期工業業界における立ち遅れ、生産過剰企業淘汰・廃棄リスト」に掲載された10産業132社のうち、レアアース企業28社が含まれていることを発表した。同リストに掲載された企業は、2014年末までに生産ラインを停...