シェアリングエコノミーの法規制

1.はじめに

 「第4次産業革命」へ的確に対応するための指標となる「新産業構造ビジョン」として、2030年代までに目指すべき4分野の一つにシェアリングエコノミーが含まれています。このようにシェアリングエコノミーは拡大傾向にありますが、シェアリングエコノミーに参入する際、どのような法規制があるのか、どのように対応すればよいのか、検討していきたいと思います。

2.シェアリング・エコノミーとは

 「シェアリング・エコノミー」とは、個人等が保有する遊休資産の貸出しをインターネット上のマッチングプラットフォームを介して仲介するサービスをいいます。この遊休資産には、スキルのような無形のものも含みます。シェアリング・エコノミーにより、利用予定のない遊休資産を効率的に活用でき、さらに、消費者は多種多様なサービスを享受することができるようになります。国内外における具体的なシェアリング・エコノミーの実情については、総務省 平成27年度版情報通信白書をご参照ください。

3.日本の法規制(総論)

 まず、日本においてはシェアリング・エコノミー全体を規制する法律は存在しません。このため、シェアリング・エコノミーを新たに展開する場合には、展開するビジネスモデルやシェア対象の遊休資産により、異なる業法を調査しなければなりません。特に、スムーズに事業を展開するためにも、ビジネスモデルの構築の段階から法的な検討が必要になります。以下、シェアする資産によりどのような法規制があるのか、どのようなビジネスモデルを採用すればよいのか検討します。

4.日本の法規制(各論)

(1)古物のシェア
 「一度使用された物品・・・若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたもの」(古物営業法2条1項)は古物であり、これらを売買、交換、委託を受けて売買、もしくは交換する営業(同条2項1号)や、古物商間でこれらを売買交換するための古物市場を経営する営業(同条2項2号)、古物の売買をしようとするもののあっせんを競りの方法により行う営業(同条2項3号)については古物営業許可が必要となります(同法3条1項)。
 このため、例えば、古物を買い取って賃貸したり、古物の買取を受託したりする方法をビジネスモデルとして採用するのであれば、古物営業許可を要するでしょう。他方、貸し借りのマッチングサービスを提供するプラットフォームを作る場合や新品を購入し共有する場合は古物営業に該当せず許可は不要と考えられます。

(2)空間のシェア
 本来の宿泊施設ではなく、一般の民家や店舗の空き部屋に泊まる「民泊」については、2017年6月に可決された住宅宿泊事業法案(民泊法)が施行されるまでは、宿泊料を取って客を泊めることになると旅館業法の規制の対象となり許可が必要となります(大阪の「民泊」逮捕事例と旅館業法改正)。一方、民泊法の施行により、住宅に人を年間180日を超えない範囲で宿泊させることにつき都道府県知事等への届出だけで可能となります。なお、家主不在型の住宅宿泊事業に係る住宅の管理を受託する事業を営もうとする場合は国土交通大臣の登録を要し、宿泊者と住宅宿泊事業者との間の宿泊契約の締結の仲介をする事業を営もうとする場合は観光庁長官の登録が必要となります(「住宅宿泊事業法案」を閣議決定)。
 

(3)乗り物のシェア
 シェアリングサービスの代名詞でもあるカーシェアリングサービスを日本で行う場合、道路運送法との抵触が問題となります。
 まず、道路運送法上、原則的に自家用自動車は有償で運送の用に供することはできません(道路運送法78条1項)。このため、自家用車を用いて運送サービスを提供したいものと移動したい人をマッチングする事業は困難です。しかし、レンタカー利用者とドライバーをマッチングするサービスは、「 利用者の所有する自動車を使用して送迎を行う場合は、単に他人の自動車の運転を任されただけですので、運転者に対して対価が支払われたとしても、それらは運転役務の提供に対する報酬であって、運送の対価とはならない。」(平成18年9月29日付け事務連絡「道路運送法における登録又は許可を要しない運送の態様について」(自動車交通局旅客課長発出、各地方運輸局自動車交通部長・沖縄総合事務局運輸部長宛))ため、道路運送法に抵触しないと考えられます。
 また、国土交通大臣の許可がない限り、自家用車を反復継続して有償で貸し渡すこともできません(同法80条1項)。このため、自家用車を貸したい人と借りたい人をマッチングサービスも困難となります。しかし、「共同使用」であれば「貸し渡し」に該当しないと考え、Anycaでは「共同使用契約」を締結するという方法で上記許可を不要としているとのことです(参考「シェアリングサービスは法的に問題ないの?カーシェアリングを例に弁護士が解説!」)。

(4)お金のシェア
 お金を持っていて貸したい人とお金を借りたい人・企業を結びつけるマッチングサービス(ソーシャルレンディング)は欧米では非常に盛んで、日本でソーシャルレンディングを行うには貸金業法との抵触が問題になります。反復継続して金銭の貸し付けを行う行為は、「金銭の貸付け・・・で業として行うもの」(貸金業法2条1項)といえ、貸金業に該当する可能性があります。そして、貸金業を営む場合には、貸金業法3条1項の登録が必要で、これを欠いて貸金業を営んだ場合には罰則が科せられます(同法47条2号・11条1項)。この登録には、一般人には満たすことが困難な要件の充足が要求されます(「貸金業登録」司法書士法人・行政書士法人 星野合同事務所)。このため、単にお金を持っていて貸したい人とお金を借りたい人・企業を結びつけるソーシャルレンディングは、お金を貸したい人に各自貸金業法上の登録をしてもらう必要が生じ、事業として成り立ちえないでしょう。
 しかし、日本でソーシャルレンディングを行うmaneoでは、maneoが貸金業者の登録をして、お金を借りたい人は、maneoから借りるという方法を採用しているようです。つまり、maneoが融資依頼を受け、審査し、ローンファンドを作成・募集し貸付を実行し、後に借り手から返還を受けて貸し手に対して分配するという仕組みを採用しています(maneoの仕組み)。このような仕組みを採用することにより、貸し手の行う行為は貸付ではなく、投資となり、maneoが貸金業法上の登録と金融商品取引業(第2種)の登録を行って上記の問題を回避しているようです。

5.グレーゾーン解消制度について

 上記で、シェアリングエコノミー・ビジネスと法令の規制を検討しましたが、シェア対象やシェア方法、マッチング方法が少し変動するだけで、法令に抵触する可能性が生じうるでしょう。このため、新しいシェアリングエコノミー・ビジネスを展開する際に、適法性が明らかでない場合には、企業実証特例制度・グレーゾーン解消制度を利用すると良いと考えます。
 グレーゾーン解消制度は、法令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)と異なり、確認対象法令の限定がありません。さらに、ノーアクションレター制度は、事業者が直接、規制庁に対して確認をとる必要があります。しかし、グレーゾーン解消制度では、事業者の申請に応じ、規制省庁の大臣との協議について所管省庁がサポートします。さらに、原則として1か月以内に回答が通知されるという迅速な対応が得られます。

6.まとめ

 このように、拡大するシェアリングエコノミーの市場に参入する際には、個別の法的規制があるため、ビジネスの構想の段階で、どのような法規制があるのか、その法規制を免れるスキームはどのような方法があるのか調査し、しっかり検討しなければならないと考えます。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約1年2ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] awahara

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

法務ニュース コンプライアンス 民法・商法
第104回MSサロン(名古屋会場)
2018年11月07日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「国際取引契約の実務入門~英文契約を取り扱う際に最低限知っておくべきこと~」です。
申込・詳細はコチラ
法務ニュース コンプライアンス 民法・商法
《東京開催》少人数法務の為の企業法務研究会
2018年10月19日(金)
19:30 ~ 20:30
無料
東京都渋谷区
講師情報
舩山 達
株式会社フルスピード(東証二部上場)
法務・総務部 部長
慶応義塾大学法学部法律学科卒
大阪市立大学大学院法学研究科法曹養成専攻修了
従業員5人のベンチャー企業に就職。2回の転職を経て現職。
少人数やノウハウの蓄積のないために業務の進め方に不安を持っている法務担当者のための意見交換会です。
今回のテーマは「契約書管理」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
法務ニュース コンプライアンス 民法・商法
【名古屋開催】自動運転技術に関する法律問題《ITビジネス法務勉強会:第6回》
2018年11月22日(木)
15:00 ~ 17:00
3,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
和田 圭介 杉谷 聡
■和田 圭介
略歴:
愛知県春日井市出身
愛知県立旭丘高校卒業
2004年 京都大学法学部卒業
2005年 弁護士登録(58期 第二東京弁護士会)
クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業入所
2008年 フランス系ラグジュアリーブランド日本支社(出向)
2010年 アメリカ、Duke University School of Law(法学部)LLM卒業
2010年 クリフォードチャンス香港オフィス(出向)
2011年 日系の大手財閥系総合商社のイギリス子会社の法務部(出向)
2013年 ニューヨーク州弁護士登録
2015年 IBS法律事務所開設(愛知県弁護士会に登録換え)
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー

■杉谷 聡
略歴:
愛知県一宮市出身
愛知県立一宮高等学校卒業
2016年 一橋大学法学部卒業
2017年 弁護士登録(70期 愛知県弁護士会)
オリンピア法律事務所入所
ITに関する法律を学び、ビジネスに活かしていただくためのITビジネス法務セミナーです。第6回目のテーマは自動運転技術に関する法律問題です。
申込・詳細はコチラ
法務ニュース コンプライアンス 民法・商法
《東京開催》GDPR対応の実務 日本企業にとってのFAQと優先順位
2018年11月16日(金)
09:45 ~ 11:45
17,000円(税別)
東京都港区
講師情報
石川 智也
西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士

2005年東京大学法学部第一類卒業
2006年弁護士登録(第一東京弁護士会)
2015年バージニア大学ロースクール卒業(LL.M.)
2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにある
ミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)、同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
2017年米国ニューヨーク州弁護士登録

日本における知的財産法、営業秘密保護、個人情報保護法のほか、
EUにおける知的財産制度・競争法、EUデータ保護規則をはじめとする
グローバルベースでのデータ規制についても詳しい。

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
本講演では、多くの日本企業のGDPR対応をサポートしてきた講師が、その過程でよく質問を受ける事項を解説するとともに、
作業の優先順位を明確にして、日本企業がどのようにGDPR対応を行い、今後どのようにGDPRコンプライアンスを維持していくべきかについて解説いたします。

解説に際しては、欧州データ保護評議会(EDPB)が公表・承認しているガイドラインの内容を踏まえることはもちろんのこと、各国の監督当局が公表している情報・オピニオンや、
GDPR施行後の当局の執行状況を含め、現地の最新動向について、お話ししいたします。

また近時、M&Aのデューディリジェンスの過程で買収する会社のGDPRコンプライアンスが問題になることがしばしばありますので、その際のチェックポイントについても触れたいと思います。
申込・詳細はコチラ
法務ニュース コンプライアンス 民法・商法
《東京開催》企業におけるAI活用と個人情報保護・プライバシーの留意点
2018年11月07日(水)
14:00 ~ 16:30
18,000円(税別)
東京都港区
講師情報
野呂悠登
TMI総合法律事務所 弁護士

東北大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了

平成27年改正個人情報保護法の全面施行前後に、
個人情報保護委員会事務局において、
法令関係とデータの利活用関係を担当

近時の著書等には『個人情報管理ハンドブック[第4版]』(商事法務、2018)、
「AIによる個人情報の取扱いの留意点」(Business Law Journal、2018年6月号)、
「ビッグデータ・個人情報の利活用と先端ビジネス」(Business Law Journal、2018年8月号付録〔LAWYERS GUIDE〕)等がある。

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
最近、AI関連技術の発展等により、AIの活用に対する期待が高まっており、ビジネスにおいて実際にAIの活用を始める企業が増えてきています。

AIを活用する場合、従来人間の脳が行っていた知的な作業をコンピュータに行ってもらうことになるため、従来想定されなかった様々な法的問題点が生じることが想定されます。
特に、機械学習を用いたAIを用いる際には、従来とは異なる方法で大量の情報を集積し又は処理を行うため、個人情報保護法やプライバシー権との関係が問題となりやすいと考えられています。

本セミナーでは、平成27年の個人情報保護法の全面施行前後において、同法を所管する個人情報保護委員会にて法令の担当者を務めた講師により、
AIを活用することを検討している企業の担当者向けに、企業におけるAI活用と個人情報保護・プライバシーの留意点を具体的な事例を基に解説します。
申込・詳細はコチラ
法務ニュース コンプライアンス 民法・商法
《東京開催》海外企業との販売店契約/ディストリビューション契約 -豊富な実例に基づく、各条項の検証-
2018年11月06日(火)
09:30 ~ 11:45
17,000円(税別)
東京都港区
講師情報
豊島 真
小島国際法律事務所
パートナー 日本及びカリフォルニア州弁護士

東京大学法学部卒
1999年弁護士登録(第二東京弁護士会)
カリフォルニア大学デービス校ロースクール修士課程卒(LL.M.)
国内外の販売店契約に関する取扱い案件多数
著作に「販売店契約の実務」(中央経済社・共著・編集担当)

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
販売店契約(ディストリビューション契約)は、サプライヤーの商品を、販売店(ディストリビューター)の販売チャネルを通じて販売するための契約です。
本セミナーではかかる販売店契約を取り扱いますが、その意義・目的は以下のとおりです。

①実際の事例の紹介を多く行います。よく見かける契約書の条項の一言一句の大切さは、実際に問題が起こってから初めて思い知らされることが多いものです。
実際に起こった問題に触れながら、これまで見過ごしていたかもしれない各条項の重要性について見ていきます。

②販売店契約は、企業間取引で最も頻繁に使われる契約の1つであり、英文契約の入門科目として最適と言えます。

これから英文契約について本格的に学びたいという方にも役立ちます。
(参考資料として、英文販売店契約のひな型をお配りします。)
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

中国の合弁会社が反日デモによる日産車の将来に渡る損害を補償... 事案の概要  日産自動車の中国の現地合弁会社、東風日産は18日、同社の自動車の保有者と新規購入者に対し、反日デモなどで被害を受けた場合、損害を補償すると発表した。  日本政府による沖縄県・尖閣諸島国有化に反発する反日デモでは、各地で日本車が標的となり、日系各社は顧客の修理費用などを負担してきたが、...
東証・大証の現物株市場統合 事案の概要 日本証券取引所は、16日、東京と大阪の両証券取引所の現物株の市場を統合し一本化する。 東証と大証は今年1月に持ち株会社をつくり、経営を統合した。 これに伴い、7月16日、大阪証券取引所にのみ上場していた1100社が東京証券取引所に移り、両証券取引所の現物株の市場が統合される。さらに...
「ほっかほっか亭」と「ほっともっと」の争いに最高裁が判断... 弁当チェーンのほっかほっか亭を展開するほっかほっか亭総本部と同チェーンから離脱し、ほっともっとを展開する株式会社プレナスのフランチャイズ契約を巡る裁判の上告審で、最高裁は3月31日プレナスの上告を棄却した。 これによりプレナスに約11億円の支払いを命じた控訴審判決が確定した。 対立の経緯 ほっ...