タカタ、民事再生へ

1 事案概要

 自動車用安全システム専門メーカーのタカタ株式会社は、6月26日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請しました。原因は2004年以降に国内外で発生したタカタ製エアバッグの不具合・異常破裂に伴う大規模リコール問題により経営状態が悪化したためと考えられています。
 タカタ株式会社は、自社のホームページ上で以下のような発表をしています(以下のPDF)。

民事再生手続開始の申立て等に関するお知らせ

 そこで、今回は、民事再生とはどういう手続なのかをご説明します。

2 民事再生とは

 「民事再生」とは、経営破綻の恐れのある企業の再建手続を定めた法律である民事再生法にしたがって、裁判所や監督委員の監督のもと、債務者自身が主体的に手続に関与し、企業の再建を図っていくといった制度を指します。
 民事再生は、再生債務者の再建を迅速に図ることを目的とした手続です。以前、「和議」という類似した制度がありましたが、民事再生は、和議よりもスムーズに再建できるようにされました。

3 民事再生手続の流れ

 
 民事再生手続の流れは以下の流れとなります。
①民事再生の申し立て→②保全処分・監督委員の選任→③再生手続の開始決定→④債権の届出→⑤債権の調査→⑥債権者集会で再生計画案の決議→⑦裁判所による認可・決定→再生計画の実行
 具体的には以下のようになります。
 まず、①裁判所へ再生手続開始申立をすると、②通常、債務の弁済禁止などを内容とする保全処分命令の発令とともに監督委員が選任されます。次に、③監督委員は、再生手続開始の要件の審査を行い、債権者説明会等の状況を踏まえて再生手続開始が相当か否かの意見書を裁判所に提出し、裁判所はこの意見書に基づいて再生手続の開始を決定します。そして、④⑤開始決定の後、債権届出・調査・確定など債権調査手続や財産目録・貸借対照表の作成など財産状況の調査を進めるとともに、今後の事業計画・弁済計画を骨子とした再生計画案を作成して裁判所に提出します。さらに、⑥⑦監督委員がこの再生計画案についての意見書を提出し、債権者からの書面または債権者集会での再生計画についての決議で承認され、裁判所がこれを認可すれば、その再生計画が確定します。なお、再生計画の可決要件は議決権を有する再生債権者について、議決権行使者の過半数の同意、かつ議決権総額の2分の1以上の多数で承認されます。
 また、民事再生の一般的なスケジュールは、申立から1~2週間で開始決定が出て、申立後3ヶ月(場合によっては延長可能)に再生計画案の提出期限が設定され、申立から約5ヶ月~6ヶ月で再生計画の認可決定がされます。

4 民事再生手続の要件

(1)民事再生手続の要件
 民事再生手続開始の要件は、民事再生法21条1項に以下のように規定されています。
①債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき
 又は
②債務者が事業の継続に著しい支障を来たすことなく、弁済期にある債務を弁済することができないこと

民事再生法(条文)

(2)民事再生手続の要件の詳細
①「破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき」とは
 「破産手続開始の原因となる事実」(破産原因)とは、支払不能または債務超過の状態にあることをいいます(破産法15条)。 また、破産原因が生ずる「おそれ」とされていることから、実際に支払不能や債務超過になる前であっても民事再生手続を開始することができます。これは、破産を回避して再建をめざす以上、破産原因が生ずる前に再生手続を開始する必要があるとの趣旨に基づくものです。

②「事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」とは
 この要件は、工場等の資産があり、これを売却処分すれば、弁済期にある債務を弁済することはできるものの、その資産を売却してしまえば、事業が継続できなくなってしまうような場合のことを指します。

5 メリット・デメリット

(1)メリット
 再生計画が認可されると債務の一部免除および弁済の猶予を得ることができるので、(原則として最大10年)、会社の再建の可能性が大きくなります。
 そして、経営者は原則として退陣する必要はありませんので、従来通り会社経営権を維持し経営を行うことが可能です。なお、一部の決定事項においては裁判所が指定する監督委員の同意を得る必要があります。

(2)デメリット
 民事再生手続きは、現経営陣が引続き経営をすることができる反面、経営陣に対する債権者などの不満や反発が根強い場合には、再建計画に対する債権者の理解が得られず、結局多くの中小企業が破産、もしくは会社更生法適用になってしまう場合があります。
 また、民事再生の申立てを行うことにより、再建型とはいえ法的に倒産処理を開始したことが周囲に明らかとなってしまい社会的信用を失うことになるおそれがあります。

法人民事再生メリット・デメリット

6 民事再生と破産手続きの違い

 民事再生では、手続きの開始後も原則として会社の経営陣が財産の管理と業務の遂行を継続します。それに対して、破産手続きでは、事案ごとに破産管財人が選任され、手続き開始後の財産管理はすべてこの破産管財人が行います。したがって、民事再生には経営陣がそのまま業務遂行を行えるというメリットがあります。

7 コメント

 民事再生には、現経営陣が経営できるというメリットと社会的信用を失う可能性があるというデメリットがあります。法務担当者は、経営難から会社を救うための方法を経営者等に聞かれたときに、適切に民事再生法の要件を満たすかと民事再生のメリットとデメリットを伝えて、自社として最善の対応策を取ってもらうように説明することが必要となります。

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[著者情報] chisaka

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平成21年 ボストン大学ロースクール留学(LLM)
平成22年 帰国・外資系製薬会社法務部にて勤務
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平成22年 あずさ監査法人退所
平成25年 中央大学法科大学院修了
平成26年 弁護士登録(東京弁護士会)
平成27年 中央大学法科大学院実務講師就任
平成30年 弁護士法人L&Aにパートナー弁護士として参画

■著書等
・「契約審査のベストプラクティス ビジネス・リスクに備える契約類型別の勘所」共著(レクシスネクシス・ジャパン)
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1992年 京都大学法学部卒業
1994年 大阪弁護士会 登録 梅ケ枝中央法律事務所 
2000年 ハーバードロースクール 修士課程(LL.M)卒業
Masuda Funai Eifert & Mitchell 法律事務所(シカゴ)
2002年 第一東京弁護士会 登録替 長島大野常松法律事務所
2004年 外立総合法律事務所
2012年 株式会社カービュー コーポレートリーガルアドバイザー    
2016年 法務室長
2018年 AYM法律事務所開設

弁護士会活動(2018年2月現在)
日本弁護士連合会 ひまわりキャリアサポート 委員
第一東京弁護士会 業務改革委員会 委員 

企業法務を中心とした法律事務所に長年勤務した後、2012年からインターネット系企業の法務責任者としてプラットフォームを利用したメディア・コマースビジネスについてのさまざまな法律問題をサポート。
2018年にAYM法律事務所開設 代表弁護士

主な著書
「アメリカのP&A取引と連邦預金保険公社の保護 債権管理 No.96」金融財政事情研究会
「米国インターネット法 最新の判例と法律に見る論点」ジェトロ 共著
「Q&A 災害をめぐる法律と税務」新日本法規 共著
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