朝日新聞に労働委が救済命令、不当労働行為と救済について

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はじめに

 東京都労働委員会は10日、労働組合への便宜供与を理由なく拒否したとして朝日新聞社に対し救済命令を出していたことがわかりました。不当労働行為に該当すると認定されたとのことです。今回は労働契約法が規制する不当労働行為とその救済について見なおしていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、朝日新聞社の従業員数人が昨年1月に労働組合である「東京管理職ユニオン」の支部を新たに結成し、同社に団体交渉で使用するための会議室などの利用を求めたところ、同社はこれを拒否したとのことです。同社の他の労組である「朝日新聞労組」を考慮して利用時間などを絞って再要求しても具体的理由を示されず拒否されたとされます。同労組は東京都労働委員会に救済の申し立てを行っておりました。

不当労働行為とは

 憲法28条では労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権が保障されております。その実効性を確保するために労働組合法7条ではこれらの権利を阻害する行為を「不当労働行為」として禁止しております。以下具体的に見ていきます。
(1)不利益扱いの禁止
 労働者が労働組合員であること、労働組合に加入しようとしたこと、結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたことを理由に解雇その他の不利益取扱いを禁止しております(7条1号)。また労働組合に加入しないことや脱退することを雇用の条件とすることも同様に禁止されます。

(2)団体交渉の拒否
 使用者が労働者の代表と団体交渉することを正当な理由なく拒否することが禁止されます(同2号)。交渉には応じても誠実に対応しない場合も同様とされます。

(3)支配介入の禁止
 会社側が労働組合の結成や運営に介入したり支配することが禁止されます(同3号)。労働組合の運営費用や経費の支払いに関して経理上の援助を与えることも同様です。これは労働組合の自主性や独立性を損ない実質的に骨抜きにされることを防止する趣旨です。

(4)労働委員会への申立てに対する不利益取扱いの禁止
 労働者が労働委員会に対し、不当労働行為の救済申立てや再審査申立てを行い、また労働委員会が会社に対し調査等を行ったことを理由として解雇その他の不利益な取扱いをすることは禁止されます(4号)。

労働委員会による救済

 上記不当労働行為が行われた場合、労働組合は労働委員会に救済の申立てを行うことができます(27条)。申立てが行われた場合、担当委員が選任され、調査や審問が行われます。その後参与委員からの意見聴取や公益委員会議を経て命令が出されます。命令を待たずして和解することもできます。命令は不当労働行為に該当すると認められた場合には救済命令、該当しないと判断された場合には棄却命令が出されます。

救済命令に違反した場合

 労働委員会から救済命令が出された場合、会社側はその命令を履行する義務が生じます。これに違反した場合50万円以下の過料となります(32条)。またその後取消訴訟が提起され、裁判所が救済命令を支持し確定した場合、それに違反すると1年以下の禁錮、100万円以下の罰金、またはこれらの併科となります(28条)。

コメント

 本件で東京労働委員会は労働組合からの団体交渉のための会議室等の使用を具体的な理由を提示せずに拒否した行為は不当労働行為に当たるとしました。朝日新聞社では既に加入組合員の多い朝日新聞労組が存在することから、新たにできた労組には対応できないとして拒否したものと思われますが、このような場合で対応義務があると認められたものと言えます。以上のように労働者側の労働基本権はかなり手厚く保護されており対応拒否だけでなく、誠実ではない対応も不当労働行為となるとされております。しかし正当な理由がある場合には拒否することも認められます。労働者側から団体交渉などの対応が求められた場合には正当理由があるかどうかを慎重に検討し、対応していくことが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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