「指名委員会等設置会社」のメリット・デメリット

はじめに

 日経新聞電子版は13日、日産自動車が指名委員会等設置会社への移行に向けて調整に入った旨報じました。報酬や人事の透明性を高めることが目的とされます。今回は徐々に増えつつある指名委員会等設置会社のメリット・デメリットについて見ていきます。

指名委員会等設置会社とは

 指名委員会設置会社とは通常の監査役の代わりに監査委員会、指名委員会、報酬委員会を置く会社設計を採っている会社を言います。平成17年の商法から会社法への移行時に設けられ、平成26年改正で委員会設置会社から名称が変更されました。もともとは米国等が採用していた企業形態で、業務執行と監督を分離し業務執行者に対する監査と監督機能を強化したものと言えます。グローバル化が求められる中、日本も国際競争力強化を目指して法制化されました。

指名委員会等設置会社の概要

 指名委員会等設置会社に必要な機関としては、取締役会、指名委員会、報酬委員会、監査委員会、執行役、会計監査人が挙げられます。会計参与の設置は任意です。各委員会は3人以上で構成され、取締役の中から取締役会の決議によって選定されます(会社法400条1項、2項)。各委員会の委員のうち過半数は社外取締役でなくてはなりません(同3項)。そして取締役会はさらに執行役を選任します(402条1項、2項)。複数選任する場合は代表執行役も取締役会で選定します(420条)。業務執行と監督を分離する趣旨から、業務執行や執行役が行い、取締役会は執行は行わず執行方針の決定と監督に専念します。取締役の任期は1年となります(402条7項)。定款でさらに短縮することもできますが伸長はできません。

監査等委員会設置会社

 類似の機関設計として監査等委員会設置会社というものがあります。これは会社法の平成26年改正で新たに導入されたものです。ここでも簡単に触れておきます。監査等委員会設置会社に必要な機関は取締役会、監査等委員会、会計監査人です。こちらも会計参与は任意です。監査等委員は取締役の中から選定するのではなく、はじめから監査等委員になる取締役として株主総会で選定されます(329条2項)。監査等委員は最低3名必要で過半数が社外取締役である必要があります(331条6項)。取締役の任期は通常の取締役が1年で監査等委員である取締役は2年となります。監査等委員である取締役の任期は短縮も伸長もできません(332条2項、4項)。

必要な役員数

 指名委員会等設置会社では各委員に最低3人の取締役が必要となりますが、各委員は兼任することができます。2人の社外取締役と1人に取締役が各委員を兼任すれば取締役の数は最低3人でいいことになります。執行役は取締役と兼任することもできますが監査委員とは兼任できないことから別途1人必要です。会計監査人1人と合わせて最低5人で成立することになります。監査等委員会設置会社も、監査等委員である取締役3人、業務執行を担当する取締役1人、会計監査人1人で最低5人ということになります。現実には3委員を兼任するのは難しいので実際はもう少し多くなると考えられます。

メリット・デメリット

 指名委員会等設置会社を採用する最大のメリットは欧米を始めとした海外の投資家の信頼を得やすいという点です。日本では従来、取締役会、監査役会といった機関設計に馴染みがありますが、欧米ではむしろ委員会設置会社に馴染みがあり、投資家から見ても経営の透明性を感じられやすいということです。一方で3つの委員会の設置や社外取締役の確保が必要であったりと負担も小さくないと言えます。そしてもう一つの監査等委員会設置会社は指名委員会、報酬委員会の設置は不要となり指名委員会等設置会社よりも負担は小さく導入しやすいと言えます。しかし海外の投資家からは指名委員会等設置会社に比べ透明性とガバナンス強化という点では今ひとつ信頼されておりません。

コメント

 前会長のカルロス・ゴーン氏の金商法違反での逮捕によって日産自動車では報酬や人事、業務執行への監査等、ガバナンスの強化が求められており、来年6月の定時株主総会までに指名委員会等設置会社への移行を決める方針とされます。同社ではすでに3人の社外取締役の増員に向けて動いているとのことです。指名委員会等設置会社は制度導入から10年以上が経過しますが採用している企業は上場会社でも68社ほどと言われており、導入は進んでおりません。一方監査等委員会設置会社はすでに400社以上が導入しており順調に増加しております。しかし上記のとおり海外の投資家や金融機関等から見れば、やはり指名委員会等設置会社のほうが信頼性は高く、運営の透明性をアピールできると言えます。それぞれのメリット・デメリットを慎重に考慮して自社にふさわしいガバナンス強化を目指すことが重要と言えるでしょう。

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講師一覧
■淵邊 善彦(ベンチャーラボ法律事務所 代表弁護士)

1987年東京大学法学部卒業。
89年弁護士登録。
95年ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業。
00年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画。
08年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)。
16年より18年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授。
19年ベンチャーラボ法律事務所開設。
主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『AI・IoT時代の企業法務 』(共著)、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。


■柴野 相雄(TMI総合法律事務所 パートナー弁護士)

02年弁護士登録。
10年ワシントン大学ロースクール(知的財産法コース)卒業(LL.M.)、同年サンフランシスコのモルガン・ルイス&バッキアス法律事務所勤務。
16年慶應義塾大学法科大学院非常勤教員就任(知的財産法務WP)、19年ISO/PC 317(Consumer protection: privacy by design for consumer goods and services)国内審議委員就任。
主にIT、インターネット、広告、メディア、エンタテインメントビジネスに関する法分野の裁判、仲裁および法律相談を多く扱う。

『IoT・AIビジネスに関するデータ保護と独禁法上の留意点』(Business Law Journal、18年4~6月号)、『[座談会]AIの活用と今後の労務管理上の課題』(労務事情、18年1月合併号)など著書多数。


■白石 和泰(TMI総合法律事務所 パートナー弁護士)

98年司法書士試験合格。
03年弁護士登録。
13年ワシントン大学ロースクール卒業(LL.M.)。
13~14年Dorsey & Whitney LLPおよびBracewell LLPで研修。
14~15年外務省経済局政策課専門員。
第二東京弁護士会情報公開・個人情報保護委員会委員、情報ネットワーク法学会会員。全銀協オープンAPI推進研究会元メンバー。無人航空従事者試験(ドローン検定)1級。

『AI・ロボットの法律実務Q&A』(勁草書房、19年2月)、『個人情報管理ハンドブック〔第4版〕』(商事法務、18年3月)、「Japan chapter of Getting The Deal Through」(Cybersecurity)(18年1月号)など編著書多数。


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96年弁理士登録。
国内及び海外における特許出願、ライセンスや特許売買等のトランザクションや侵害訴訟、包括的な知財戦略支援等に従事。電気情報や機械制御等の技術を主に扱う。
97年より創英国際特許法律事務所勤務、04年ワシントンDC地区のオリフ法律事務所に駐在。
翌年、創英の米国オフィスをシリコンバレーに開設。07年米マイクロソフト本社知的財産部に入社。
11年アジア地区特許ディレクター兼日本マイクロソフトの知的財産部長に就任。14年TMI総合法律事務所入所。出版、講演多数。

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2005年東京大学法学部第一類卒業
2006年弁護士登録(第一東京弁護士会)
2015年バージニア大学ロースクール卒業(LL.M.)
2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにある
ミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)、同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
2017年米国ニューヨーク州弁護士登録

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吉川 達夫
ニューヨーク州弁護士/外資系企業 VP, General Counsel

外資系法務本部長、駒澤大学法科大学院、国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師
元Apple Japan法務本部長、元伊藤忠商事法務部、元Temple Law School日本校客員教授。上智大学法学部、Georgetown Univ. Law Center卒

編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年)、『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年)、『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など、著作・論文多数

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畑中鐵丸
弁護士(東京弁護士会所属)
ニューヨーク州弁護士
税理士、弁理士

1991年 東京大学法学部在学中、国家公務員試験I種・司法試験に各合格
1992年 東京大学法学部卒業後、新日本製鐵株式会社入社
1996年 弁護士登録
1996年~1998年 国内中堅法律事務所において、企業法務・商事紛争のほか、一般民事・家事・刑事事件、特殊事件(企業再建・著作権・芸能エンターテインメント関連事案・労働事件・民事介入暴力事件等)等の国内法務案件を幅広く取り扱う
1998年 渡米し、ペンシルヴァニア大学ロースクール(米国フィラデルフィア市)にて、企業法、投資規制法、企業コンプライアンスプログラム、財務会計論等を学ぶ
1999年 同大学法学修士課程(LL.M.)卒業 同年米国ニューヨーク州司法試験 合格
1999年~2000年 Kirkland & Ellis 法律事務所(米国シカゴ市)に勤務し、企業法務、M&A、国際合弁、ライセンス契約、コンプライアンス法務等を担当
2001年 中島・宮本・畑中法律事務所(現名称:中島・宮本・溝口法律事務所)にパートナー弁護士(共同経営者)として参画
2006年 弁護士法人畑中鐵丸法律事務所を設立

「こんな法務じゃ会社がつぶれる」(第一法規、2010)、「こんな法務じゃ会社があぶない」(第一法規、2016)「企業法務バイブル[第2版]」(弘文堂、2013)等著書多数
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東京大学法学部卒業後、NTTコミュニケーションズ入社。
同社在職中に、法科大学院の夜間コースに通学、2007年に弁護士登録。
2010~2012年の2年間、任期付公務員として総務省総合通信基盤局にて勤務。
電波法に基づく新制度について、法改正の他、税務面の調査等も担当し、国税庁との協議等に携わる。
任期満了後、光和総合法律事務所にパートナーとして復職、ビジネス・行政の視点も踏まえた幅広いリーガル・サポートを提供している。

近著に『ベーシック企業法務事典』(編著)、『税務コンプライアンスのための企業法務戦略』(共著)、『データ戦力と法律』(編著)他多数。

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