文教堂が開始申請、事業再生ADRについて

はじめに

 大手書店チェーン文教堂は先月28日に私的整理の一種である事業再生ADRの利用申請をしていたことがわかりました。対象となる金融機関は8行とのことです。今回は事業再生ADRについて見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、文教堂は出版不況の影響を受け書籍や雑誌の販売が低迷し、昨年8月には約2億3000万円の債務超過いに陥いり、不採算店舗の閉鎖などを進めてきましたが収益の回復にはつながらず今回のADR開始の申請に至ったとされます。同社は8月末までに債務超過が解消されなければ上場廃止になる見通しです。経営再建のために川崎市にある事務所などが売却され、それにより約7億2500万円の売却益を計上する予定とのことです。

法的整理と私的整理

 企業の経営継続が困難となった時に行われる処理手続きは法的整理と私的整理に分かれます。法的整理は破産、民事再生、会社更生、会社法の特別清算といった手続です。基本的に裁判所が介入して進められていきます。これら法的整理でも破産や特別精算といった終局的なものから、民事再生や会社更生といった事業の再生・債権を目指したものにも分けることができます。私的整理とはこれらの手続によらず、債権者と債務者が自主的に話し合い倒産処理を行っていくものです。

私的整理と法的整理のメリット・デメリット

 法的整理は上記のように基本的に裁判所が介入し、裁判所の監督のもとで手続が進行していきます。そのため手続は公正で債権者間の公平も十分期待できると言えます。反面手続が硬直化し期間も長く、また破産や倒産したと一般に知られることとなり、取引先との取引の継続も困難となります。一方の私的整理は債権者と債務者での自発的な協議によることから手続が迅速で柔軟なものとなります。破産や倒産と違い企業イメージにマイナス影響を与えるおそれも低いといえます。反面債権者間の公平や手続の公正が担保しにくく、協力的でない債権者が存在する場合には円滑に進まなくなるといったデメリットがあります。

事業再生ADRとは

 ADR(Alternative Dispute Resolution)とは裁判外紛争解決手続のことで訴訟手続によらずに公正中立な第三者が関与して解決を図る手続です。そして事業再生ADRは産業活力再生特別措置法と産業競争力強化法に基づく制度で、法務大臣の認証を受けた事業者が間に入ることとなります。私的整理の柔軟・迅速性、非公表性を維持しつつ法的整理の公正・公平性を取り入れたものと言えます。手続の流れは、①まず認証紛争解決事業者にADRの利用申請を行い、②債権者に債権回収等の一時停止の通知がなされ、③事業再生計画案の説明・協議・決議の債権者会議が開催されます。④債権者全員の同意をもって私的整理が成立となります。
なお全員の同意が最終的に得られなかった場合には法的整理に以降することとなります。

コメント

 文教堂は7月12日に最初の債権者集会を開催し、債権回収などの一時停止を求める予定です。来年の8月末までに債務超過を解消できる再生計画案が成立した場合には上場廃止が1年間猶予される見通しとなるとのことです。このように事業再生ADRでは取引きを継続しつつ再生計画を立てることができます。また法務大臣認証の専門家が介入することから手続の公平性も期待でき、従来の私的整理では認められなかった債権放棄した場合の損失の無税償却も認められ、債権者にとっても合意しやすくなっております。以上のように経営再建の手続は硬いもの、柔軟なものや公表性が高いものから秘匿性が高いものまで様々です。経営再建が必要な場合には自社に最も適した手続を選択していくことが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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■野村 亮輔
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東京大学法学部卒
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著書に「景品表示法の理論と実務」(中央経済社)、執筆記事に「基本用語と講習例でわかる!LGBT基礎知識」(月刊ビジネス法務・2017年3月号)等がある。
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■登島 和弘
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中央大学法学部法律学科卒
立命館大学法務研究科修了
スタンレー電気㈱総務部庶務課法務担当を皮切りに、日本AT&T㈱(米系)契約課長、松下冷機株式会社法務室主事、
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ニューヨーク州弁護士/外資系企業 VP, General Counsel

外資系法務本部長、駒澤大学法科大学院、国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師
元Apple Japan法務本部長、元伊藤忠商事法務部、元Temple Law School日本校客員教授。上智大学法学部、Georgetown Univ. Law Center卒

編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年)、『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年)、『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など、著作・論文多数

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