三菱電機が裁量労働制を廃止、社名公表制度について

はじめに

 三菱電機が今年3月、社員約1万人に適用されていた裁量労働制を全廃していたことがわかりました。報道では厚労省による企業名公表を回避するためとされております。今回は厚労省が行っている企業名公表制度について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、三菱電気は昨年9月にエアコンなどの家電品を製造している静岡製作所で従業員10人以上に月80時間を超える違法残業を行わせていたとして静岡労基署により是正勧告を受けていました。また2016年2月には裁量労働制の適用を受けていた男性男性社員が自殺し、昨年6月に尼崎労基署により過労自殺と認定していたとされます。厚労省は昨年12月、これら違反事件を受けて東京本社立ち入り調査を行っていたとのことです。同社は今年3月に裁量労働制を全廃しました。

社名公表制度とは

 従来、厚労省は労働法違反事例の中で送検された企業名だけを公表してきました。しかし昨今の大手企業などで相次ぐ過労死を踏まえ、厚労省は平成29年5月から一定の要件を満たす違反企業については送検されなくても一括して公表する制度を導入しました。違法状態を是正し、「ブラック企業」をより強く牽制して就活生等に警鐘を鳴らすことを目的としています。

社名公表制度の要件

 厚労省が公表している基準によりますと、対象となるのは「複数の事業場を有する社会的に影響の大きい企業」であって次のいずれかに該当する場合となります。
(ア) 1つの事業場で10人以上または4分の1の労働者が①1ヶ月あたり80時間を超える時間外・休日労働が認められ、②かつ労基法の労働時間、休日労働、割増賃金(32条、35条、37条、40条)の規定に違反しているとして是正勧告を受けたこと。または過労死等による労災認定事案で当該労働者について①②による是正勧告または指導を受けたこと。

(イ) おおむね1年の間に2箇所以上の事業場で①1ヶ月あたり100時間を超える時間外・休日労働が認められ、②かつ労働時間についての規定違反で是正勧告を受けたこと。または過労死等による労災認定事案で当該労働者について①②による是正勧告を受けたこと。

指導と公表

 上記要件を満たす場合には、当該企業の本社を管轄する労働局局長が代表取締役等の企業の代表者を労働局に呼び出した上で是正に向けた全社的取組の実施を求める指導書を交付します。そして企業名、長時間労働を伴う違反の実態、局長から指導書を交付したこと、当該企業の是正に向けた取組方針が公表されることになっております。

コメント

 本件で三菱電機は静岡製作所で10人以上の従業員に月80時間を超える残業を行わせていたとして是正勧告を受けました。また尼崎のコミュニケーション・ネットワーク製作所の従業員が過労自殺をしたと労基署により認定されております。これにより厚労省の社名公表基準が満たされたと考えられます。その後昨年12月に厚労省による立入検査が入っていることから、指導・公表までは秒読み段階であった可能性があります。近年裁量労働制はその法的要件を満たしていない場合や、残業代を支払わず違法な時間外労働を行わせる温床として摘発事例が増加しております。厚労省や労基署も裁量労働制を採用している場合は違法労働の疑いを持って調査している可能性があります。公表された場合は就活生の採用や企業イメージにも影響が出ることになります。以上を踏まえて今一度労務管理を見直すことが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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東北大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了

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