格安スマホ「フリーテル」が破たん、民事再生手続について

はじめに

格安スマホ「フリーテル」を運営するプラスワン・マーケティング(港区)が4日、東京地裁に民事再生法適用を申請していたことがわかりました。負債総額は約26億円とのことです。今回は経営債権型の倒産手続である民事再生法の手続に関して見ていきたいと思います。

事案の概要

格安スマホ「フリーテル」の製造・販売を手がけるプラスワン・マーケティングはデルで携帯電話事業を立ち上げた経歴のある増田社長が2012年に設立しました。ヨドバシカメラや官民ファンドから約30億円の出資を集め、月額299円からという格安プランで注目を集めたとのことです。しかし今年4月には「業界最速」とうたった広告が事実と異なるとして消費者庁から景表法違反で措置命令を受けておりました。プラスワンは今年3月期の最終損益は55億で3期連続の赤字となっており、現在通信サービス事業は楽天に引き継がれておりますが、経営再建の目処は立っておらず、民事再生法適用の申請に踏み切った模様です。

民事再生手続とは

民事再生手続は企業または個人が経済的に破綻した場合に利用される倒産手続きの一種です。以前にも取り上げた破産手続と異なり、以後も会社が存続し、経営を継続・再建していくことを前提としています。同様の再建型手続である会社更生手続は株式会社しか利用できず、手続も厳格で経営陣も退任するのに対し、民事再生は個人も利用でき、経営陣もそのまま経営を継続できるという柔軟な手続となっております。また開始要件も破産法よりも緩やかなものであり、裁判所の監督のもと債権者の同意を得て再建計画を進めていくことを目的としています(民事再生法1条)。

民事再生手続の流れ

(1)申立てと開始決定
債務者に「破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき」に債務者は裁判所に対し再生手続開始の申立をすることができます(21条1項)。破産の場合は「支払不能」と「債務超過」に陥った場合に破産手続開始の申立を行うことができますが(破産法15条1項、16条1項)民事再生の場合はそれより早い段階で再建に乗り出せるということです。申立があれば裁判所は要件を調査した上で再生手続開始決定を行ないます(33条1項)。同時に申立または職権により監督委員を選任します(54条1項、2項)。

(2)再生再建の届出
再生手続開始決定の際に裁判所は再生債権届出期間を定めます(34条1項)。再生手続に参加しようとする再生債権者はその期間内に債権の内容や原因を届け出ることになります(94条1項)。再生債権とは再生手続開始前の原因に基づいて生じた債権を言います。これに対して債務者はその届けられた債権を認めるか否かの認否書を提出することになります(101条)。これに対し債権者も異議を提出することができ(102条1項)、裁判所の調査を経て再生債権が確定します(104条1項)。

(3)再生計画
債務者は債権届出期間満了後、裁判所が定める期間内に再生計画案を提出することになります(163条1項)。再生計画案は債権者集会の決議に付する裁判所の決定を受けて(169条1項)、債権者集会での債権者の過半数の同意と議決権の2分の1以上の同意によって可決します(172条の3第1項)。そして可決された再生計画は裁判所が認可決定を行ないます(174条1項)。再生計画が確定した後は債務者は速やかに再生計画を実行していくことになります(186条1項)。再生計画は一般的には債務を何割カットした上で、5年後から10回の年払いにするというように、どのように債務を弁済していくかが定められます。そして再生債権についてはこの再生計画に従わなけれは弁済することができなくなります(85条1項)。

コメント

本件でプラスワンは今後約2週間程度で裁判所による再生手続開始決定を受けることになります。監督委員が選任され、債権届出期間を経て再生計画案を策定していくことになると考えられます。以上のように民事再生手続は破産に至るよりも早い段階で経営の再生に乗り出すことができ、また監督委員の監督の下ではあるものの、現経営陣は退陣することなく事業を継続できます。また申立の際に弁済禁止の保全処分も申立ておけば手形についても不渡りとは扱われなくなることから、銀行取引停止処分も回避できます。また逆に債権者の立場から、再生債権は再建計画に基づかなければ弁済を受けられませんが、債権者が中小企業であり、弁済を受けられなければ事業の継続に著しい支障を来す場合には例外として弁済を受けることもできます(85条2項)。民事再生手続は破産に比べると利用数はかなり少ないと言われておりますが、債務者、債権者の双方からも破産や会社更生にはない利点もあります。債権者、債務者どちらの立場であっても、その特徴や利点を把握して手続を利用していくことが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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