米国が不公正貿易の監視機関を設置
2012/02/29 海外法務, 外国法, その他
概要
オバマ米大統領は28日、貿易相手国の不正行為の摘発を強化する新機関「省庁間通商執行センター(ITEC)」を立ち上げる大統領令に署名した。新機関は米通商代表部(USTR)内に設置され、国務省や司法省、商務省など他省庁と連携して情報収集を行い、米国の製造業や農業、産業等に不利な競争を強いている違反行為を摘発する体制をとる。大統領は同日演説し「連邦政府の人材を十分に集め、世界の不公正な貿易慣行に対抗する」と強調した。
また、オバマ大統領は全米自動車労組(UAW)向けの講演で「米国の労働者は地球上で最も優秀な労働者だ。条件が公平ならば、米国は常に勝利する」とした。そして新機関は「連邦政府のあらゆるリソースを活用し、中国など世界各国の不公平な貿易慣行を調査しそれに対抗する」と述べた。
2011年、米国の対中貿易赤字は過去最大規模の2955億ドルに急増しており、今回の新機関も中国を念頭に設置されたものとみられる。
コメント
従来は、不公正貿易について米通商代表部(USTR)が中心となって、世界貿易機関(WTO)へ提訴するなどの措置をとってきた。しかし、米国内の製造業の雇用が、不当に割安な人民元による輸出によって中国に奪われているとの認識があり、米政府の対応は不十分であるとの指摘もあった。そのような状況の中、、オバマ大統領は1月の一般教書で、米国の製造業と雇用を保護する方針を明確に打ち出し、新たな組織の新設を提唱していたのである。
また、14日、オバマ大統領は中国の習近平国家副主席との会談で、貿易不均衡の是正等を強く求める姿勢を示した。対中政策は、11月の大統領選の外交主要争点の一つとなっており、強い姿勢で臨む政治的な必要があったといえる。
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