経産省元審議官にインサイダー疑惑~東京地検が立件可否を判断~
2011/11/04   金融法務, 金融商品取引法, 金融・証券・保険

概要

 経済産業省の元審議官(官房付)による半導体大手「エルピーダメモリ」(東証1部上場)株のインサイダー取引疑惑で、東京地検特捜部は月内にも立件の可否を判断する方針を固めた。

 捜査の焦点となっているのは、2009年2月11日に台湾当局首脳と同社幹部の間で開かれたある会談。会談の内容は具体的に公表されていないが、証券取引等監視委員会は、関係者の事情聴取などから、技術や資本面での協力が合意され、また、この時の合意内容が同省に報告されていることから、元審議官がその内容を知った上で株を購入したとみている。

 この会談後の同年4月1日、同社は台湾当局が設立する新会社と技術協力する旨を発表。翌日、同社の株価は100円上昇し、元審議官は同社株の売買で多額の利益を得たとされる。監視委は、1日以前の売買がインサイダー取引に該当するとみて、調査を進めている。

インサイダー取引

 金融商品取引法は、企業への法的権限を持つ公務員が、職務を通じて増資や提携など、その会社の株価に重要な影響を与える重要事実を知りながら、その公表前に株取引を行うことを禁止している。今回の捜査では、上記4月1日の発表が「公表」に当たるかが問題になっていると思われる。

 インサイダー取引は、金融商品市場の信頼を損なう代表的な不公正取引である。主に「投資者保護」、「金融商品市場への信頼確保」が禁止の理由とされている。

金融商品取引法166条1項
(会社関係者の禁止行為)
次の各号に掲げる者…中略…であつて、上場会社等に係る業務等に関する重要事実…中略…を…中略…知つたものは、当該業務等に関する重要事実の公表がされた後でなければ、当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買その他の有償の譲渡若しくは譲受け又はデリバティブ取引…中略…をしてはならない。…以下略…
三  当該上場会社等に対する法令に基づく権限を有する者 当該権限の行使に関し知つたとき。

雑感

 上場会社の役職員や大株主をはじめとする会社関係者が株価に関する重要事実に触れ、かつ、それを知ることはごく当然に起こり得ることである。しかし、それをいいことに、自己に有利な形で取引を進めることは、一種の権限乱用として許されるべきではない。一般投資者が不利な立場に置かれることのないよう、各企業はインサイダー取引の未然防止を徹底するとともに、会社関係者も何が「重要事実」であるのかを常に認識しておかなければならない。

 今回の捜査では、元審議官が得た利益は約30万円と少額であった。しかし、省庁の幹部が株取引で利益を得るという行為自体が相当に悪質であり、利益の多寡は立件するか否かの一基準にすぎない。金融商品市場の健全性を保つためにも、今後のインサイダー取引に関しては厳しく刑事責任を追及していくべきだと考える。

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