【東日本大震災】地震免責は認めない。東京地裁で保険会社に支払い命令。
2011/10/24   訴訟対応, 民事訴訟法, 金融・証券・保険

【東日本大震災】地震免責は認めない。東京地裁で保険会社に支払い命令。

3・11大地震を原因とする上階から水漏れのためリフォームを余儀なくされた都内男性が上階に住む住民の保険会社である東京海上日動火災保険を相手どり計141万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地方裁判所は20日、東京海上日動火災保険に計約117万円の支払いを命じる判決を下した。

 

訴訟までの流れ

1 原告の主張
平成23年3月11日に発生した震度5強の大地震により、原告男性が居住する杉並区のマンションの上階に設置された電気温水器の配水管に亀裂が発生。これにより、水漏れが起き、部屋が水浸しになり、原告男性はリフォームせざるを得ない状況に置かれた。
原告男性は、当該リフォーム代及び慰謝料として、計約141万円の賠償を求めた。

2 東京海上日動火災保険の主張
東京海上日動火災保険は、上記損害の賠償を求める原告男性に対し、地震によって生じた損害には保険金を支払わないとする「地震免責条項」を理由に支払いを拒否した。

 

裁判所の判断

1 上階住人の過失認定
裁判所は、経年劣化した配水管につき、通常あるべき十分な耐震性が確保されていなかったとして、上階の住人の過失を認定した。
2 免責条項の適用を否定
その上で、(ア)今回水漏れが起きた物件の位置する杉並区内の最大震度が5強程度だったこと、(イ)建築時期等を考えるとこのマンションの耐震性が比較的高かったこと等を挙げて、
「本件免責条項でいう“地震”とは、大規模な損害が一度に生じる巨大地震をいい、震度5強程度の揺れはこれにはあたらない」とし、東京海上日動火災保険の支払い拒否を不当とみなした。

 

雑感

東京海上日動火災保険の地震免責条項は、「地震・噴火又はこれらによる津波を原因とする損壊・埋没・流失によって生じた損害については保険金をお支払い出来ません」との文言で定められている。

従来からその適用をめぐって問題の多かった保険会社の免責条項だが、保険会社がこのような条項を付けるおおもとの理由は、保険料の額が跳ね上がるのを防止するためである。
「保険」は、様々な状況を想定し、それが生じる確率を綿密に計算した上で、保険料をいくらにしたら利益が生じるかを分析して商品開発されるものだからだ。免責される場面が少なくなればなるほど、保険会社の負うリスクは大きくなるのだから、当然、保険料は高く設定せざるを得なくなる。

今回の判決で、「ある程度の耐震強度を備える物件については、震度5強程度の揺れには耐えられるものと通常想定されており、これを前提に被保険者と保険会社は保険契約を締結している」という判断が下されたわけだが、
保険会社としては、自身が想定していたものより、免責の場面が大きく縮小されたことを意味する。

首都圏直下の大地震のおそれが叫ばれ、東海地方での大地震のおそれも危惧されている中、今後は築年数が比較的浅い物件については、保険料を引き上げることが考えられる。
判決自体は妥当な解釈に基づくものであったと考えるが、これから保険に入る被保険者にとっては喜ばしくない結果となったようだ。

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