便利なサインレス決済の盲点が明るみに
2011/10/12 法務相談一般, 民法・商法, その他
概要
クレジットカードでの買い物時に、署名なしで決済できる「サインレス」の仕組みを悪用し、偽造カードで商品を購入、換金したとして、警視庁組織犯罪対策特別捜査隊などは、埼玉県戸田市、自称不動産業、上野靖夫容疑者(59)と東京都江東区、ディスカウント店店長、日高直哉容疑者(53)ら計5人の男を不正作出支払い用カード電磁的記録供用などの容疑で逮捕した。サインレスを悪用した偽造カード事件の摘発は全国初となる。同隊によると、上野容疑者らは昨年6月以降、偽造カードを使って江東区や千葉市のスーパーなどで計約3千万円分のビールやたばこなどを購入。購入価格の5~7割の価格で日高容疑者の店に売却していた。
上野容疑者らは1回の購入額を1万円以下に抑え、署名や指紋認証が不要な「サインレス」でのクレジット決済を100回以上繰り返したといい、同隊は同容疑者らが意図的に偽造の発覚を免れようとしたとみている。
サインレスシステムとは
クレジットカードの処理時間を短縮・効率化する上で、売上伝票(ジャーナル)への署名(サイン)を省略した制度をいう。
通常は、クレジットカードの利用において、カードの利用者が本人であることを確認するために、加盟店では売上伝票に利用者のサインを求め、カード裏面に記入されている本人の自筆によるサインとの照合を行う。これに対して、サイレスシステムでは、売上伝票へのサインを省略し、処理時間の短縮を図っている。
サインレスシステムは、現在、百貨店やスーパーなどの食品売り場やコンビニエンスストア、高速道路料金所など、代金決済のスピード(早さ)が要求され、かつ換金制の低い商品・サービスなどを扱う一部の場所に限定して実施されている。
雑感
このようなサインレスシステムの採用により、買い物などの精算時の時間が短縮されるので、利用者にとって利便性は高い。また、スーパーのレジで時間をかけてサインをすると後ろの人に迷惑がかかるためにカードを使いづらいという 日本人の心理にもかなっている。しかし、このシステムの問題点として、本人以外の第三者がカードを使った場合でも決済ができてしまうことがあり、カードを紛失したり、盗難に遭ったり際には悪用される恐れがある。
かかる問題点を克服するためにサインの代わりに暗証番号を入力するシステムもあるが、クレジットカードに暗証番号を書き込んでしまったり、暗証番号を生年月日にしてしまったり、電話番号にしてしまったりといった人が依然としているようだ。 今後も啓発活動を通じて日本人の金融犯罪に対する意識を高めていくことが重要である。
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