特許戦争にまた一つの決着!マイクロソフトとカシオ計算機がクロスライセンス契約締結へ
2011/09/22 契約法務, 知財・ライセンス, 特許法
概要
米国時間20日,マイクロソフトはカシオ計算機と,複数年にわたる広範なクロスライセンス契約を締結したことを発表した。マイクロソフトからカシオ計算機にライセンスされるのは,Linux関連の特許技術等である。これに対し,カシオ計算機はライセンス料の支払及び自社の技術情報の開示を求められるものと考えられる。
Linux関連技術をめぐる問題
Linuxは,本来自由に使用ができるといわれるフリーソフトウェアである。これに対し,マイクロソフトは自社の特許技術が使用されていることを主張してきた。そして,これまでにLinuxやLinuxをベースとしたOSを利用する企業とライセンス契約を締結してきた。カシオ計算機もLinux関連の技術を利用しており,同社とのクロスライセンス契約締結もこうした動きの一環であると考えられる。
クロスライセンス契約とは
自社の有している知的財産権(特許権等)の利用を相手方企業に認める代わりに,相手方企業の有する知的財産権を自社が利用することを相手方企業に認めさせる契約のことを指す。契約当事者は複数に及ぶこともある。通常のライセンス契約と比べると,ライセンス料がかからない又は低額に抑えられるというメリットがあるが,自社独占の技術を利用されるというデメリットもある。
Linuxとは
厳密な定義等は専門書に譲るが,Linuxは,1991年にヘルシンキ大学(フィンランド)の大学院生だった,リーナス・トーバルズ氏によって開発されたUNIX(ユニックス)互換のOS(オペレーティングシステム)である。開発後,Linuxはフリーソフトウェアとして公開され,ボランティアらによって改良されてきた。現在では,理工系の大学で利用されたり,一部携帯電話端末等の組み込みOSとして利用されている。
所感
今回,カシオ計算機はマイクロソフトとクロスライセンス契約を締結している。自社が相手方企業から特許権侵害の主張を受けた場合,訴訟で争うことも一つの手であるが,敗訴した場合,高額の賠償や今後該当技術を使用できなくなるという高いリスクを負うことになる。これに対し,クロスライセンス契約では,自社が相手方技術を利用する道を確保しつつ,ライセンス料を低額に抑えられる。この点で,今回クロスライセンス契約が締結されたことは,妥当であったといえる。
しかしながら,自社独占技術を相手方企業に利用されるのは大きなデメリットである。クロスライセンス契約を締結するに当たっては,どの技術の利用を相手方企業に許すかなど,担当者には慎重な対応が求められるだろう。
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