スズキ、VWと提携解消
2011/09/14   契約法務, 商事法務, 民法・商法, メーカー

概要

 スズキは9月12日に開いた取締役会で、独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)との資本・業務提携を解消することを決めた、と発表した。VWはスズキ株約19.9%を持ち、スズキもVW株約1.5%を持つが、スズキは自社株を自己資金で買い取り、VW株も同社の意向に沿って売却する方針。ただし、VW側は提携解消に慎重な姿勢をみせている。
 スズキは、14日にはインドでの新工場建設地の最終調整に入り、海外生産強化で独自路線を鮮明にしている。

提携の経緯

 スズキは、1981年に米ゼネラル・モーターズ(GM)と提携したが、GMの経営悪化で2008年に解消した。その後、2009年末に、スズキはVWと資本提携し、その際には、「スズキの『安く車を造る技法』にVWが期待」「スズキにとって『環境対応技術の開発』にVWを頼ることができる」のがそれぞれのメリットと言われていた。

提携解消の理由

 しかし、世界販売3位のVWは、スズキをグループ企業の一つとしてVWの世界戦略に組み込もうとする意向が強く、「スズキの経営哲学は、対等な立場による自主独立の経営」というスズキとの関係は急速に冷え込んだ。
 また、スズキが望んでいた環境車の技術開発などでも、提携当初の目標の達成は困難で、かえって経営の足かせになるとの認識が生じていた。
 さらに、スズキが伊フィアットからディーゼルエンジンを購入したことを理由に11日にVWから提携合意違反を主張されたことも、スズキの反感をかったものと思われる。
 このため、提携から1年半という、ごく短期間での提携解消となってしまった。

今回の提携解消にみる教訓

 まず、資本提携の際の互いの関係認識がずれていたことが、今回の提携解消からうかがえる。お互いに相手方の技術面での強みにメリットを見出して提携したのはよいけれど、結局は相手方との関係認識のズレで、それすらうまくいかなかったようだ。
 このことから、企業が提携する際にはお互いの経営理念や戦略を調べたうえで、本当に一緒にやっていけるのかどうかを判断しなければならない、という教訓が導かれる。

 さらに法務に関連して、提携合意の際に「相手方の合意なしに他社と提携してはならない」旨の条項を入れることが考えられるが、その範囲に気を付けるべきとの教訓が得られる。
 今回スズキがVWに主張されている提携合意違反とは、スズキがフィアットからエンジンの供給を受けるとの契約を締結したことが「他社との提携」にあたるとするものではないかと推測される。このような部品の供給につき包括的に他社との契約を禁止することは、メーカーの経営を完全に拘束することになり、あまりに不合理である。このため条項の解釈としては、他社との資本提携は禁止されるが、他社からの部品供給は禁止されないとするのが両当事者の意図に合致しているはずである。
 しかし、今回VWから提携合意違反を主張されていることについては、このような幅のある解釈を提携契約提携時に残してしまったスズキの法務にも責任がある。とくに、提携がうまくいかなくなった際に、相手方から自社の契約違反を主張され、自社に帰責事由があるとして不利な条件で提携解消させられるようなことがないよう、法務としては細心の注意を払う必要がある。

参考資料

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