欠陥住宅の設計・施工主の責任はどのようなときに問えるか?-最高裁平成23年7月21日判決-
2011/08/03   不動産法務, 訴訟対応, 民法・商法, 民事訴訟法, 住宅・不動産

事案概要

設計・施工に欠陥がある建物についての問題は一時期世間を賑わせていたが、それが訴訟上問題となった事案において重要な判示が最高裁で出されている。事案は建築主から上記建物を購入した原告が、建物に欠陥があるとしてその設計・施行業者に不法行為に基づく損害賠償を請求したというものである。そして、最高裁は原告の請求を否定した原審判決を破棄して差戻している。

原審までの流れ

本事例では一度最高裁で破棄され、高裁に差戻されているので本判決は第2次上告審ということになり、第1次上告審では、
①建物の建築に携わる設計・施工者等は、建物の建築に当たり、契約関係にない居住者等に対する関係でも、当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負う。
②設計・施工者等がこの義務を怠ったために建築された建物に上記安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者等の生命、身体又は財産が侵害された場合には、設計・施工者等は、不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り、これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負う。
③このことは居住者等が当該建物の建築主からその譲渡を受けた者であっても異なるところはない。
と判断していた。

そして、第2次控訴審では上記判断の中の②の部分が争われ、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは、建物の瑕疵の中でも、居住者等の生命、身体又は財産に対する現実的な危険性を生じさせる瑕疵をいうものと解され、不法行為責任が発生するためには、本件建物が売却された日までに上記瑕疵が存在していたことを必要で、結論としてはその日までに危険が発生していないので瑕疵は存在していないとして請求を否定した。

判決要旨

このような流れの中で第2次上告審では、
①「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは、居住者等の生命、身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい、建物の瑕疵が、居住者等の生命、身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らない。
当該瑕疵の性質に鑑み、これを放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には、当該瑕疵は、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当すると解するのが相当である。
③建物を第三者に売却するなどして、その所有権を失った場合であっても、その際、修補費用相当額の補填を受けたなど特段の事情がない限り、一旦取得した損害賠償請求権を当然に失うものではない。
と判断している。①については第2次控訴審と同様と言えるが、②の部分を含んでおり、範囲を拡大している。
具体的にどのような瑕疵・欠陥がこれに該当するのかについては次のとおりである。
当該瑕疵を放置した場合に、建物の全部又は一部の倒壊等に至る建物の構造耐力に関わる瑕疵はもとより、建物の構造耐力に関わらない瑕疵であっても、これを放置した場合に、例えば、外壁が剥落して通行人の上に落下したり、開口部、ベランダ、階段等の瑕疵により建物の利用者が転落したりするなどして人身被害につながる危険があるときや、漏水、有害物質の発生等により建物の利用者の健康や財産が損なわれる危険があるときには、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当する。しかし、建物の美観や居住者の居住環境の快適さを損なうにとどまる瑕疵は、これに該当しない。

雑感

原審は、瑕疵を厳しく判断しており、現実的危険性が建物売買時に存在していることを要するとしていた。しかし、新築等の場合売買時に危険性が顕在化することはそれほどあるとは思えず、購入者の保護につながらない一方でその損害は甚大である。設計・施工者は専門家であって重い責任を負うべきであろうと考えられるので、このような判決も妥当であると考えられる。
ただ、二度目の差戻しとなりこの事件の当事者の苦労が何より気がかりである。

【関連リンク】
最高裁判所平成19年7月6日判決 -第1次上告審-
最高裁判所平成23年7月21日判決 -第2次上告審-

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