公取委が音楽教室「シアー」に勧告、フリーランス法の規制について
2026/05/29   契約法務, コンプライアンス, フリーランス法, サービス

はじめに

19日、フリーランスの講師に無償で体験レッスンを行わせていたとして音楽教室「シアー」(新宿区)に対し、公正取引委員会が再発防止を求める勧告をしていたことがわかりました。無償のレッスンは計5万回以上とのことです。今回はフリーランス法の規制を見直していきます。

 

事案の概要

報道などによりますと、シアーは2024年11月~26年2月、音楽教室の運営を委託するフリーランスの講師1674人に音楽教室への入会を検討する利用者を対象とした無料体験レッスンを無償で計5万3036回(計3398万円分)行わせていたとされます。

同社は中小企業庁などの調べで「入会営業という業務があり、体験者が入会してくれれば講師にインセンティブがあるため、フリーランス法違反にはならないと思っていた」回答していたとのことです。

公正取引委員会は中小企業庁からの措置請求を受けてフリーランス取引適正化法違反で再発防止を求める勧告を出しました。中小企業庁がフリーランス法関連で請求することは初とされます。

 

フリーランス法による規制

近年、働き方の多様化が進みフリーランスという働き方が普及してきた一方、報酬の不払いやハラスメントなど様々な問題やトラブルの発生が指摘されるようになりました。

個人であるフリーランスと組織である発注事業者の間における交渉力の格差やそれに伴うフリーランスの取引上の弱い立場に着目し、フリーランスが安心して働ける環境を整備することを目的とし「フリーランス・事業者間取引適正化等法」が制定されました。

本法では取引条件の明示義務や報酬支払義務、発注事業者の禁止行為や就業環境の整備等に関する規定が置かれています。以下具体的に見ていきます。

 

フリーランス法の適用対象

フリーランス法ではまず対象となるフリーランスを「特定受託事業者」とし、(1)個人であって従業員をしようしないもの、または(2)法人であって1人の代表者以外に他の役員がなく、かつ従業員を使用しないものとしています。

次に、発注側の事業者を「特定業務委託事業者」とし、(1)個人であって従業員を使用するもの、または(2)法人であって2人以上の役員がいる、または従業員を使用するものと定義しています。

次に、対象となる取引は業務委託事業者からフリーランスへの委託、つまり「B to B」が対象となります。フリーランスからフリーランスへの業務委託も対象となりますが、消費者との取引は対象外です。また、取引の相手方が事業者であっても業務委託ではなく単なる商品の販売行為も対象外となります。

 

義務や禁止行為等

事業者がフリーランスに業務委託をする際には直ちに取引条件を書面または電磁的方法により明示することが義務付けられています(3条)。明示事項は(1)発注事業者とフリーランスの名称、(2)業務委託日、(3)委託する業務の内容、(4)納品日、(5)納品先、(6)納品の内容を検査する場合はその完了期日、(7)報酬と支払期日、(8)金銭以外の場合は支払方法となっています。

次に、発注事業者は納品を受けた日から起算して60日以内のできるかぎり短い期間内で支払期日を定め、その日までに報酬を支払うことが義務付けられます(4条)。この支払期日は「○月○日支払」「毎月○日締め切り、翌月○日支払」といったように具体的に定める必要があります。

そして、発注事業者には7つの禁止行為が定められています(5条)。具体的には(1)受領拒否、(2)報酬の減額、(3)返品、(4)買いたたき、(5)購入・利用強制、(6)不当な経済上の利益提供要請、(7)不当な給付内容の変更・やり直しとなります。

フリーランス側に責任がないのに委託物や情報成果物の受け取りをいらなくなったからなどと拒否したり、業績悪化や原材料高騰などを理由に委託時に定めた報酬を一方的に減額する行為、通常支払われる対価と比べて著しく低い報酬を不当に定めたり、正当な理由なく発注事業者が物や役務の購入を強制する行為、また、金銭や役務などを不当に提供させるといった行為が禁止されています。

 

コメント

本件でシアーはフリーランスの講師に無料体験レッスンを無償で行わせていたとされています。同社は入会営業という業務があり、体験者が入会すれば講師にインセンティブがあるとしていますが、公取委は体験者全員が入会するわけではなく、無償で体験レッスンの業務を行わせるのはフリーランス法違反となるとし勧告を出しました。

以上のようにフリーランス法では発注の際の明示義務の他、受領拒否や買いたたき、返品は報酬の減額など7つの禁止行為が定められています。規制内容は取適法(旧下請法)とほぼ同様と言えます。違反した場合には行政機関からの指導や助言、勧告、従わない場合には命令や公表が出され、それに従わない場合には罰則として50万円以下の罰金が規定されています。

フリーランスに外注する際にはこれらの規制を念頭に書面または電磁的記録で取引内容を明示しているか、受領拒否などを行っていないかを今一度見直して社内で周知しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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