大阪大の非常勤講師雇い止めは無効、無期転換ルールと雇い止めについて
2026/05/18 契約法務, 労務法務, 労働法全般

はじめに
大阪大学の非常勤講師だった4人が5年を超えて働いたのに無期雇用されず雇い止めされたのは不当だとして地位確認などを求めていた訴訟の控訴審で15日、大阪高裁が雇い止めを無効との判決を出していたことがわかりました。大学の指揮監督下にあったとのことです。今回は無期転換ルールと雇い止めについて見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、原告の4人は大阪大学で英語や日本語教育などの授業を担当し、半年~1年の委嘱契約で更新を続けていたとされます。その後2021~22年に委嘱契約が通算5年を超えたとして大学側に無期雇用への転換を申し出たものの認められず、23年3月に雇い止めとなったとのことです。
4人は無期雇用への転換が認められず雇い止めされたのは不当だとして大学側に対し地位確認などを求め大阪地裁に提訴していました。一審大阪地裁は大学から具体的な指揮監督を受けることは想定されていないとして4人を「労働者」とは認めず請求を退けていたとされています。
無期転換ルールとは
無期転換ルールとは、パートやアルバイト、契約社員などの有期契約労働者が同じ会社で通算5年を超えて働いた場合に、本人が会社に申し込むことで期間の定めのない無期雇用に切り替えられるという制度を言います(労働契約法18条)。これは雇い止めの不安をなくし、安心して働き続けられるようにすることが目的とされます。
具体的な無期転換の条件としては、(1)同一の使用者(会社)との契約であること、(2)有期労働契約が5年を超えて更新されていること、(3)契約の更新回数が1回以上であることとなっています。
途中で社内の部署が変わっても会社が同じであれば同一の使用者となります。そして、契約が更新されて通算して5年目に入った瞬間に無期転換の申し込み権が発生します。なお、契約と契約の間に6か月以上の空白期間があるとそれ以前の期間はリセットされてしまいます。無期転換権が労働者から使用された場合、会社側はこれを拒否することができず自動的に無期雇用契約に移行する点に注意が必要です。
有期雇用契約の雇い止め
期間の定めのある有期雇用契約で契約期間が満了した際に会社側が契約を更新せずに終了させることを雇い止めと言います。この雇い止め自体は原則として認められますが、労働者保護の観点から一定の場合には制限されます。これが一般に雇い止め法理と呼ばれるものです。雇い止め法理はもともと判例によって認められてきたものですが、現在では労働契約法19条に明文化されています。
まず、この雇い止め法理が適用される場合として、過去に何度も契約が更新され実態として期間の定めのない契約と実質的に異ならない常態になっている場合(19条1号)、または面接時に「長く働いてほしい」と言われていたり、契約更新手続きがルーズだったりと労働者が契約更新されるだろうと期待することに合理的な理由がある場合(同2号)が挙げられます。
このような場合には、会社が雇い止めをする際には「客観的に合理的な理由があること」と「社会通念条相当であること」が求められます。経営悪化により人員削減が必要である場合や労働者の勤務態度が著しく不良である場合、また役員報酬カットや希望退職を募るなどの努力を尽くした場合や、労働者に改善の機会を与えたにもかかわらず改善しなかった場合など該当します。
労働契約法の「労働者」性
雇い止めや無期転換などが問題となった際に、しばしばその前提として争点となるのが「労働者」該当性です。そもそも「労働者」に該当しなければ労働関係法令が適用されないということです。それではどのような場合に労働者と認められるのでしょうか。
労働契約法2条1項によりますと、労働者とは「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう」とされています。そして、2項では、使用者とは「その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう」としています。また、一般的に労働者に該当するかは「使用従属関係」や「報酬の労務対償性」が認められるかが基準となっています。
使用従属関係について最も重要な要素としては指揮監督下の労働と言えるかが挙げられます。会社からの依頼や指示への拒否の自由の有無、業務内容や遂行方法に対する指揮命令の有無、時間的場所的拘束性の有無、第三者に代わりに仕事をさせることの可否などが判断要素となります。また、報酬が成果物ではなく働いた時間や労務の提供に対して支払われている場合は労働者性が高いと言えます。
コメント
本件で一審大阪地裁は大学からの具体的な指揮監督を受けることは想定されていないとし4人を「労働者」とは認めませんでした。これに対し、二審大阪高裁は授業内容や成績評価について大学側が4人に指示していたことを重視し、大学の強い指揮監督があったとして労働者に該当すると認め、雇い止めも権利の濫用として無効と判断しました。
以上のように、有期雇用契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者には無期転換の申し出をする権利が付与されます。この場合、会社側は拒否することができません。また、これを回避するために雇い止めをした場合でも、一定の場合には権利濫用として無効と判断される場合があります。
これらも踏まえて有期雇用労働者を使用する際には将来無期転換をするのか、またどの程度の期間使用するのかを慎重に検討した上で、十分に労働者にも説明をし、理解を求めていくことが重要と言えるでしょう。
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