日本経営史研究所で行われたバーチャルオンリー解任決議は違法 ー東京地裁
2026/04/13 商事法務, 総会対応, コンプライアンス, 会社法

はじめに
一般財団法人「日本経営史研究所」の理事だった2人が、オンライン会議システムによる評議員会で可決された解任決議の取消しを求めていた訴訟で東京地裁が7日、決議を取り消していたことがわかりました。オンラインのみの決議は違法とのことです。
事案の概要
報道によりますと、一般財団法人「日本経営史研究所」は2025年10月6日午後8時、オンライン会議システムによって評議員会を開催したとされます。評議員会では6人の評議員が出席し、それにより原告である理事2人の解任決議が可決され解任されたとのことです。
解任された理事2人は「オンライン会議システムによる評議員会決議は違法である」として解任決議の取消しを求め東京地裁に提訴していました。
東京地裁は、現行会社法が開催場所を定めないバーチャルオンリー株主総会を原則として認めていないとしたうえで、一般財団法人でも同様に決議に法令違反があるとして取消しを認めました。
株主総会決議取消訴訟とは
会社法831条1項では、
(1)株主総会等の招集の手続きまたは決議の方法が法令・定款に違反しまたは著しく不公正なとき
(2)株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき
(3)特別利害関係人が議決権を行使したことによって著しく不当な決議がされたとき
には、株主等は決議の日から3か月以内に株主総会決議取消の訴えを提起することができると規定しています。
例えば招集通知の記載不備や解任議案で当該役員が決議に加わっている場合などが典型例と言えます。
ちなみに、決議内容が法令に違反している場合は決議取消の訴えではなく、決議無効確認の訴えの対象となります(830条)。
この取消訴訟で請求が認容された場合、決議は遡及的に無効となり、また訴訟当事者以外の第三者にも効力が及ぶとされています(838条)。
なお、違反事実が認められる場合でも、それが重大ではなく決議に影響を及ぼさないと認められるときは裁判所は請求を棄却することが可能です(831条2項 裁量棄却)。
取消原因
上でも触れたように、株主総会決議の取消原因としては招集手続きや決議方法について法令・定款違反や著しく不公正である場合、決議内容の法令違反などがあります。
まず、招集手続きの法令違反としては、取締役会決議を経ていない代表取締役による招集、招集通知期間不足、一部の株主への招集通知漏れ、招集通知の記載不備、参考書類や議決権行使書面の不備などが挙げられます。株主総会での決議方法の法令違反としては、説明義務違反、議決権行使妨害、議決における定足数不足などが挙げられます。
次に、定款違反については、定款に規定する招集手続き違反、定款に規定する決議方法違反、そして定款所定の員数を超える役員等の選任などが典型例です。
そして、著しく不公正な場合としては、出席困難な日時や場所での開催、開会時刻の遅延、株主からの質問に対し虚偽の回答をした場合などが考えられます。
一般社団・財団法人の場合
上記の決議取消の訴えは一般社団・財団法人にもあり、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」266条1項では、
(1)社員総会等の招集の手続きまたは決議の方法が法令・定款に違反しまたは著しく不公正なとき
(2)社員総会等の決議の内容が定款に違反するとき
(3)特別利害関係人が議決権を行使したことによって著しく不当な決議がされたとき
には、社員等は決議の日から3か月以内に決議取消の訴えを提起できる旨規定されています。
ここで「社員総会等」とは一般社団法人における社員総会や一般財団法人における評議員会を言います。
このように会社法の規定とほぼ同様の規定が一般社団法人法にも置かれており、株主総会決議と同じように招集や決議に法令・定款違反などがある場合には社員等が取消を求め提訴できます。
コメント
本件で東京地裁は会社法が開催場所を定めないバーチャルオンリー株主総会を原則として認めていないとし、一般社団法人法でも同様にバーチャルオンリーの評議員会は法令違反であるとして決議取消を認めました。開催や決議方法に法令違反が認めらたということです。
以上のように、会社法では株主総会の招集や決議方法などに法令・定款違反があった場合、また著しく不公正であった場合には決議取消の訴えが用意されています。
原告となるのは株主や取締役、監査役、清算人、執行役などが含まれています。これには期間制限があり決議の日から3か月となっています。
なお、決議内容に法令違反がある場合は別途決議無効確認の訴えが用意されています。
まもなく定時株主総会の季節がやってまいります。招集手続きや期間、開催地や決議方法などに不備は無いかを確認し、慎重に進めていくことが重要と言えるでしょう。
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