イオンがサンデーを完全子会社化、株式等売渡請求について
2026/03/16 商事法務, 総会対応, 会社法, 小売

はじめに
イオンが子会社であるホームセンター「サンデー」(青森県八戸市)に対して行っていたTOBで96%以上の株式を取得していたことがわかりました。今後完全子会社となる予定とのことです。今回は会社法の株式等売渡請求について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、イオンの子会社でありホームセンターを展開するサンデーは今年1月、イオンからの完全子会社化の提案に賛同することを明らかにしたとされます。同日時点でイオンはサンデーの株式を76.7%保有しており同月9日~3月4日に1株1280円で株式公開買付(TOB)実施していたとのことです。
これによりイオンはサンデー株の96.13%を取得し、今後株式併合ではなく株式等売渡請求によって完全子会社化するとされています。
サンデーはイオンとより一体となって事業を展開することでプライベートブランドをはじめとした商品や出店の拡大、食品事業の強化を図る方針とのことです。
株式等売渡請求とは
株式等売渡請求とは、株式会社の総株主の議決権の90%以上を保有する株主(特別支配株主)が当該会社の承認を得て他の少数株主が有する株式等の全部を強制的に取得する制度を言います(会社法179条)。完全子会社化する際のスクイーズ・アウトに利用するための制度と言えます。
従来完全子会社化やMBOなどで対象会社の少数株主をスクイーズ・アウトするには株式併合や株式交換、全部取得条項付種類株式などが利用されてきました。これらによってスクイーズ・アウトを行うには株主総会の特別決議による承認が必要です。また、全部取得条項付種類株式や株式併合の場合は端数処理に裁判所の手続きを要するなど手続きが煩雑な面もありました。
しかし、平成26年の会社法改正で導入された株式等売渡請求ではこれらの手続きが不要で、より簡易・迅速な組織再編を行うことが可能となりました。
また、株式等売渡請求では株式の他に新株予約権も取得することができます。以下具体的に手続きの流れを見ていきます。
株式等売渡請求の手続き
TOBなどによって対象会社の株式の90%以上を取得できた特別支配株主は株式等売渡請求をすることができます。手続きとしてはまず、特別支配株主から対象会社への通知が行われます(179条の3第1項)。それに対し対象会社が承認すると対象会社から特別支配株主に通知がなされます。
そして、対象会社から取得日の20日前までに残存株主等に通知・公告がなされます(179条の4第1項、2項)。この通知・公告によって特別支配株主から残存株主に売渡請求がなされたものとみなされます(同3項)。売渡請求に関する事項と会社が承認した旨を記載した書面が会社の本店に備え置かれます(179条の5)。
特別支配株主は取得日に残存株主の株式を取得し、対価が支払われることとなります。
株式等売渡請求への対抗手段
特別支配株主による株式等売渡請求に対してはいくつかの対抗手段が用意されています。まず、(1)売渡請求が法令に違反する場合、(2)売渡請求の手続き違反がある場合、(3)対価が不当である場合に、残存株主が不利益を受ける可能性があるときは売渡請求の差止を請求することができます(179条の7)。
次に残存株主は、特別支配株主が決定した対価に不服がある場合は、裁判所に価格決定の申立てをすることができます(179条の8第1項)。なお、この場合、特別支配株主は価格決定があるまでは自らが公正な価格と認める額を支払うことができます(同3項)。
そして売渡請求を受けた残存株主は、特別支配株主が株式を取得した日から1年以内(公開会社の場合は6か月以内)であれば、売渡請求無効の訴えを提起することも可能となっています(846条の2)。
コメント
本件でイオンは今月4日まで行っていたTOBによってサンデー株の96%以上を取得したとされています。これによりイオンはサンデーの特別支配株主となったことから株式等売渡請求によってスクイーズアウトが可能となります。4月頃には完全子会社化が完了する見込みとのことです。
以上のように会社法では対象株式会社の株式を90%以上取得した場合、簡易・迅速な株式等売渡請求によることが可能となっています。TOB等で90%以上の取得ができなかった場合はこれまでと同様に株式併合等によることとなります。なお、一般的に株式併合等による場合は4~5か月程度の期間を要するとされますが、株式等売渡請求の場合は3か月程度に短縮できると言われています。
M&AやMBOを検討している場合は、保有株式の割合によってどのような手続きが用意されているかを把握し、慎重に手続きを進めていくことが重要と言えるでしょう。
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