ニデックのTOBを巡り三田証券元取締役を逮捕、インサイダー取引について
2026/02/04 商標関連, コンプライアンス, 会社法, メーカー

はじめに
モーター大手「ニデック」(旧日本電産)の株式公開買付をめぐり、インサイダー取引に関わったとして東京地検特捜部が「三田証券」の元取締役ら3人を逮捕していたことがわかりました。
取引に顧客の口座が使用された疑いがあるとのことです。
事案の概要
報道などによりますと、ニデックは2024年8月頃、工作機械メーカー「牧野フライス製作所」に対するTOBをめぐり代理人業務契約の交渉を三田証券と行っていたとされます。
これを知った三田証券の元取締役らは共謀し、TOB公表前に牧野フライス製作所の株式約33万株を計約23億5000万円で買い付けていた疑いがもたれているとのことです。
元取締役らは買付の際に同人らの名義を含め16人分の名義を使用していたとされ、顧客の口座を使っていた疑いがあるとされています。
なお、ニデックは25年4月にTOBを開始したものの、牧野フライス製作所側の対抗策により翌月TOBを撤回しています。
インサイダー取引とは
インサイダー取引とは、会社の未公開情報を知る立場にある者が、情報を利用して株式などの売買をする行為をいいます(金融商品取引法166条、167条等)。
たとえば、上場会社が合併や業績の上方修正、TOBなどを行うといった情報を知った者が公表前に株式を買付、公表後株価が上昇したタイミングで売却すると、他の一般投資家よりも簡単に利益を得ることができます。
このような行為は証券市場の公正性や公平性が損なわれ、市場取引に対する一般投資家の信頼を損なうこととなります。
そこで、昭和63年の証券取引法改正時にインサイダー取引規制が導入されました。
以下、インサイダー取引の要件を具体的に見ていきます。
インサイダー取引の要件
金商法166条では、上場会社の会社関係者が、その職務等に関連して知った未公表の重要事実を利用して、当該会社の株式等の売買等を行うことをインサイダー取引として禁止しています。
ここで対象となる会社関係者とは、上場会社の役員、従業員、当該会社の子会社の役員や従業員、会計監査人、顧問弁護士やコンサルタント等の外部専門家、業務委託先や取引先で内部情報に触れる立場にある者、会社と1年以内に契約関係があった元従業員や元役員など多岐にわたり、業務上の立場から未公表の重要事実を知り得る者とされています。
また、これらの会社関係者ではなくとも、会社関係者から未公表の重要事実を伝達された者も情報受領者としてインサイダー取引の規制の対象となっています。
なお、情報受領者は会社関係者から直接情報を伝達された者に限られ、さらに情報受領者から伝達された者は含まれません。
そして、規制の対象となる重要な事実とは、投資家の投資判断に著しい影響を及ぼす未公表事実を指すとされています。
具体的には合併や増資減資、業務提携などの決定事実、災害による損害や重要な株主の異動などの発生事実、業績関連の決算情報などが該当し、さらにこれら以外でも株価に重要な影響を及ぼす可能性がある事実(バスケット条項)も含まれます。
インサイダー取引に該当する行為とペナルティ
上記の者が未公表の重要事実を知った上で当該会社の株式等を買付けたり売却する行為だけでなく、利益を得させたり損失を回避させる目的で第三者に情報を伝達する行為も規制の対象となっています。
さらに、利益を得させ、また損失を回避させる目的で売買を勧める行為である取引推奨も同様とされています。
インサイダー取引規制に違反した場合は、刑事罰として5年以下の拘禁刑、500万円以下の罰金またはそれらの併科が規定されています(197条の2第13号~15号)。
また、法人に対しても両罰規定として5億円以下の罰金が課されます(207条1項2号)。
これらに加えて、インサイダー取引で得た利益も没収や追徴となっています(198条の2第1項、2項)。
これらの罰則の他に、インサイダー取引には課徴金も規定されており、重要事実公表後2週間の最高値から買付価格を控除し、買付数を乗じた額、つまり利益相当額の納付が命じられます(175条1項2号)。
なお、課徴金には5年の除斥期間が設けられています(178条27項~29項)。
コメント
本件で三田証券の元取締役らは、ニデックによる牧野フライス製作所へのTOBの情報を聞きつけ、公表前に共謀して約33万株を買い付けた疑いが持たれています。
TOBに関する情報は重要事実に該当することから、これらが事実であった場合はインサイダー取引に該当する可能性が高いといえます。
ちなみに、現時点で認否は明らかになっていないとのことです。
以上のように、金商法が規制するインサイダー取引はその対象となる人間や対象事実が一般に知られるよりも広範囲となっており、第三者に伝達したり売買を勧める行為も該当します。 また、罰則も非常に重く、課徴金が課されることもあり得ます。
どのような場合に違法となるかなどを社内で周知し、重要事実が発生する際には関係者に注意を促していくことが重要といえるでしょう。
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