太平洋工業でTOBが成立、MBOのスキームについて
2026/01/29 商事法務, 戦略法務, ファイナンス, 会社法, 自動車

はじめに
自動車部品メーカーの太平洋工業(大垣市)は27日、経営陣によるMBOに向けて進めていた株式公開買付(TOB)が成立したと発表しました。
東証および名証で上場廃止となる見通しとのことです。今回はMBOのスキームについて見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、太平洋工業は非公開化を目的とするMBOの一環として昨年7月にTOBを発表していたとされます。
当初の買付価格は2050円であったが10月に2919円に引き上げ、最終的に3036円となっていました。
今回のTOB成立によって、同社社長が株式を100%保有する「CORE」の議決権比率が55.26%となったとのことです。
これまで同社の筆頭株主であったアクティビストの「エフィシモ・キャピタル・マネージメント」は今回のTOBに応募しなかったものの、TOBが成立した場合にはその後の株式併合に関連する議案には賛成する意向を示していたとされます。
同社は今後臨時株主総会を招集し、株式併合後に上場廃止となる見通しです。
MBOとは
MBOとは「Management Buyout」の略で、企業の経営陣が自社株を買取り、経営権を取得する手法を言います。
その目的は経営体制の見直しや事業承継、上場廃止、敵対的買収の回避など様々で、迅速で安定した経営が実現できるとされています。
MBOのメリットとしては、既存株主やアクティビストの意向に左右されず自由度の高い経営が可能になることや、迅速な意思決定と後継者への事業承継の手段として利用できることなどが挙げられます。
一方で、株式が非公開となることによる経営監督機能の低下や資金調達が困難になることといったデメリットも指摘されています。
また、MBOに際して株式を買い取るための多額の資金が必要となるなど一定のリスクも存在しています。
MBOの流れ
MBOを実施する際の流れとしては、まず、自社の資産価値を算定し、自社株の受け皿となるSPC(特別目的会社)を設立することとなります。
SPCは通常、MBOの対象となる会社の経営陣が全株式を保有します。
次に、金融機関などから株式取得の資金を調達します。
これも通常はSPCが金融機関などから借り入れることとなります。
そして、既存の株主から株式の買取を実施することとなります。
上場会社の場合は、ここでTOBが利用されることが多いといえます。
ここでTOB(株式公開買付)とは、不特定多数の株主に対し買付価格や期間などを公告し、その保有する株式を売ってくれるよう勧誘し取引所外で株式を買い取る行為を言います。
TOBはあらかじめ定めた金額で買い付けることができ、市場の株価変動リスクを回避できることや、短期間で大量の株式を集められること、予定取得数に満たない場合は不成立として中途半端な株式を保有するリスクを回避できることなどのメリットがあるといわれています。
TOB後の手続き
MBOを目的とするTOBが成立した後は、スクイーズアウトをすることによって残りの少数株主が保有する株式を取得し、既存株式の100%を確保することとなります。
スクイーズアウトの手法としては、一般的に(1)特別支配株主による株式売渡請求、(2)株式併合、(3)全部取得条項付種類株式の取得などが挙げられます。
まず、総株主の議決権の90%以上を取得することができた場合は特別支配株主として既存株主に売渡請求をすることができます(会社法179条1項)。
特別支配株主は会社の承認を得て、取得日の20日前までに既存株主に通知をし、取得日が到来すると取得が完了します(179条の9)。
次に、株式併合とは数個の株式を1つの株式に併合し、発行済株式数を減少させる手続きです。
スクイーズアウトで用いられる場合は、既存株主の株式がいずれも1株未満となる割合で併合することとなります。
ちなみに、株式併合を行うには株主総会の特別決議による承認が必要となります(309条2項)。
そして最後に、株主総会の特別決議によって定款変更を行い、発行済の全ての株式を全部取得条項付種類株式に変更した上で、同時に同株式を取得するといった手法も存在します。
こちらの場合も、やはり株主総会の特別決議を要するという点で株式併合と同様です。
コメント
本件でTOBの成立により、太平洋工業の社長が出資するSPCが約55%の株式の取得に成功したことになります。
買付総額は約1700億円に上るとされています。今後は臨時株主総会の承認を得て、株式併合により残存株式をスクイーズアウトする見通しとなっています。
以上のように、経営体制の変更や敵対的買収の回避、事業承継などを目的にMBOを利用することができます。
これにより長中期的な経営や迅速な意思決定が可能となり、経営の自由度が増すこととなります。
しかし、財務状況の悪化や外的な監視体制の欠如といったリスクも存在しています。
これらを踏まえて、自社やステークホルダーの現況や今後の経営戦略上最も適切な事業再編スキームを選択し、実施していくことが重要といえるでしょう。
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