あおぞら銀行、内部通報した行員の長期隔離配置は違法 ー東京高裁
2026/01/26 労務法務, コンプライアンス, ハラスメント対応法務, 労働法全般, 公益通報者保護法, 金融・証券・保険

はじめに
「あおぞら銀行」の行員が内部通報後に受けた懲戒処分を巡り損害賠償などを求めた訴訟で22日、東京高裁が銀行側に約840万円の支払を命じていたことがわかりました。
長期間にわたる隔離配置はパワハラに当たるとのことです。
事案の概要
報道によると、あおぞら銀行の行員の男性は、顧客の相続に関連する業務で同僚が不適切な処理を行っているとして上司に対応を求めたものの、改善の動きがなかったため内部通報窓口に通報したとされます。
しかし、内部通報後、銀行側は男性行員に対し10項目の問題行為を指摘して懲戒処分を実施。男性行員は、従来の業務フロアから応接室に転属されたとのことです。
配置された部屋は広さ8畳程度でパソコンのモニター・キーボード・マウスのみが置かれており、同部屋での隔離勤務は、2021年から2024年7月まで約3年3ヶ月間継続していたとされます。
男性は「精神的苦痛を受けた」などとして、あおぞら銀行に対し損害賠償などを求める訴えを東京地裁に提起していました。
公益通報者保護制度とは
今回の問題の発端となった公益通報者保護制度。この制度は、国民生活の安心や安全を脅かすことになる事業者の法令違反の発生と被害の防止を図る観点から、公益のために事業者の法令違反行為を通報した内部の労働者に対する解雇等の不利益な取り扱いを禁止するというものです。
勤務先の会社の不正行為などを発見し、会社の通報窓口に通報したことを理由として解雇や降格、減給などから通報者を守る趣旨があります。
ここでいう、「公益通報」とは、(1)労働者等が、(2)役務提供先の不正行為を、(3)不正の目的でなく、(4)一定の通報先に通報することと定義されています。
労働者等には正社員、派遣労働者、アルバイト、パート、役員、公務員なども含まれ、退職から1年以内の退職者も該当します。
通報の内容は一定の法令に違反する犯罪行為、過料対象行為または最終的に刑罰もしくは過料につながる行為を言うとされています。
そして、対象となる法令としては刑法や食品衛生法などの個人の生命・身体を保護する法律、金商法や特商法、景表法など消費者の利益を保護する法律、大気汚染防止法や土壌汚染対策法など環境保全を目的とする法律、独禁法や下請法など公正競争を確保する法律、その他となっています。
また、通報の目的が不正の利益を得たり、他人に損害を加えるなど不正の目的がないことも必要とされています。
通報先について
公益通報者保護制度における通報先は1.事業者内部、2.権限を有する行政機関、3.その他となっています。
事業者内部への通報を行おうとする場合の保護要件は、通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしていると思料することとされています。
そして、権限を有する行政機関への通報の場合は通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしていると信じるに足りる相当の理由があること、または通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしていると思料し、かつ通報者の氏名または名称、住所や居所、通報対象事実の内容、理由、法令に基づく措置その他適当な措置が取られるべきと思料する理由を記載した書面を提出することとなっています。
その他の事業者外部への通報を行う場合は、
(1)事業者内部または行政機関に公益通報すれば解雇その他の不利益取り扱いを受けると信ずるに足りる相当な理由があること
(2)事業者内部に通報すれば証拠隠滅等の行為がなされると信ずるに足りる相当の理由があること
(3)事業者内部に通報すれば通報者に関する情報が漏らされると信ずるに足りる相当な理由があること
(4)会社から通報しないよう正当な理由なく要求されていること
(5)書面により事業者内部に通報した日から20日を経過しても調査が行われないこと
(6)個人の生命・身体に対する危害や財産に対する損害が発生する急迫の危険があると信ずるに足りる相当な理由があること
のいずれかに該当する必要があるとされています。
令和7年改正について
近年の事業者の公益通報への対応状況などを鑑み、公益通報者保護法の改正案が2025年6月4日に参議院で可決・成立しました。
改正法は2026年12月1日から施行となります。改正内容は、
(1)事業者への公益通報に対する体制整備の徹底
(2)公益通報者の範囲拡大
(3)公益通報を阻害する要因への対処
(4)公益通報を理由とする不利益取り扱いの抑止と救済の強化
となっています。
常時使用する従業員数が300人を超える会社に対し、公益通報体制の従事者指定義務に従わない場合、指導や助言に勧告に加え、命令違反に罰則が追加されます。
立入検査権限や公益通報対応体制の周知義務の明示も盛り込まれます。
公益通報者にフリーランスも追加され、正当な理由なく公益通報を妨げる行為を禁止し、これに違反した合意などが無効となります。
また、通報後1年以内の解雇や懲戒処分等は公益通報を理由として行われたものと推定され、立証責任が転換されます。
さらに、公益通報を理由とする解雇や懲戒をした者に6月以下の拘禁刑、30万円以下の罰金または併科とする直罰規定が新設されることとなります。
コメント
本件では、内部通報が行われた直後に10項目の問題行為を指摘され懲戒処分がなされたとされています。一審の東京地裁は銀行側の主張を認め、原告男性側の敗訴とする判決を出していました。
しかし二審となった東京高裁は、「長期間にわたる隔離配置は業務上の合理的理由が認められず精神的苦痛を与えるとしパワハラに該当する」と判断しました。
また、懲戒処分の理由となった10項目でも一部が根拠不十分とし、降格処分が人事権の濫用に当たると認めたとされます。
本件では公益通報の要件が満たされていたかなどについての詳細は不明ですが、裁判所は人事権の濫用に当たるとして賠償を命じています。
以上のように、近年内部通報などを行った者に対する対応などについて問題視され、昨年の法改正に至っています。
内部通報の要件を満たしていなくても、不利益な扱いをした場合は人事権の濫用や別途労働契約法などの法令違反となる場合があるといえます。
どのような場合に保護される公益通報となるかなどを社内で周知し、適切な対応を確保していくことが重要といえるでしょう。
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