株主総会書面決議9割賛成で可決へ、会社法改正の動き
2026/01/19 商事法務, 総会対応, 会社法, ベンチャー全般

はじめに
株主総会における「みなし決議」の要件を、全会一致から議決権の90%賛成へと緩和する方向で、会社法改正の議論が進められています。これは、非上場企業における意思決定の迅速化を図ることを目的としたものです。
今回は、みなし決議制度の現行ルールと、見直しの背景・影響について解説します。
会社法改正の動きと背景
報道によれば、法務省の法制審議会において、株主総会の書面決議(いわゆる「みなし決議」)に関する要件緩和が検討されています。これまで全株主の同意が必要とされていたものを、議決権ベースで90%以上の賛成があれば可決できるよう見直す案が議論されています。
この改正が実現すれば、スタートアップ企業などが増資や役員変更といった重要事項をスピーディーに決定できるようになると期待されています。一方で、実際に株主総会を開催することで反対意見に触れ、株主の意思が変わるケースもあることから、慎重な検討が必要との声もあります。
なお、株主の権利保護の観点から、提案通知後1週間以内に反対意見を表明した株主がいる場合には、書面決議は認めないとする案も併せて検討されています。
株主総会の議決権行使
株主総会では議題ごとに必要な決議の要件が異なっており、たとえば剰余金の配当や役員報酬の決定、自己株式取得、準備金の減少といった議案では普通決議が必要となります。
普通決議は行使可能議決権の過半数が出席し、出席株主の議決権の過半数の賛成で可決となります(会社法309条1項)。
議題が定款変更や株式併合、非公開会社での募集株式発行、組織再編などの場合は特別決議が必要となります。
特別決議は行使可能議決権の過半数が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成で可決となります(同条2項)。
このように株主総会ではそれぞれの議題に即して株主が議決権を行使することになります。
議決権の行使方法としては株主総会に出席して直接行使する他、書面または電磁的方法による方法も用意されています(311条、312条)。なお、議決権を有する株主が1000人以上の会社では書面による議決権行使を定める必要があるとされています(298条2項)。
みなし決議
上記のように株主総会は実際に開催され、株主によって議決権が行使されることが原則となりますが、一定の要件のもとこれらを省略することが認められています。それが「みなし決議」制度です。
具体的には(1)取締役または株主による株主総会の目的である事項についての提案があり、(2)当該提案について議決権を行使することができる株主全員の書面または電磁的記録による同意があることが要件となっています(319条1項)。
これにより実際には株主総会を開催せずに書面やオンラインで迅速に意思決定を行えるということです。なお、この際に送付された書面や電磁的記録は決議があったものとみなされた日から10年間は本店に備え置く必要があります(同条2項)。また、みなし決議があり株主総会が開催されなかった場合でも株主総会議事録の作成は省略できません。
取締役会決議の場合
株主総会のみなし決議のような制度は取締役会決議にも存在します。株主総会同様に取締役会でも迅速な意思決定が必要な場合があり、それに対応すべく実際に会を開かずに書面や電磁的記録だけで決議があったとみなすことができるということです(370条)。
ただし、株主総会の場合より要件は厳格化されており、
(1)みなし決議ができる旨の定款の定めがあること
(2)取締役全員の書面または電磁的記録による同意があること
(3)監査役設置会社である場合は監査役が異議を述べていないこと
となっています。
あらかじめ定款で定めておくことと、監査役設置会社では監査役の異議がないことの要件が追加されています。そのため、監査役設置会社では監査役への事前通知も必要となってきます。
おわりに
現行の会社法では、株主総会の書面決議(みなし決議)は、全株主の同意がなければ成立しません。そのため、少数株主の反対によって意思決定が停滞することもあります。
今回の法改正では、議決権ベースで90%の賛成があればみなし決議を認める方向が検討されています。これにより、特に非上場企業やスタートアップにおいて、迅速な資金調達や人事変更が可能になると見込まれています。
一方で、招集手続きの不備があると株主総会決議取消訴訟の対象となるなど、会社法上の手続きには慎重な対応が求められます。
今後の法改正の動向を注視しつつ、企業実務への影響を見極めていくことが重要です。
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