買収防衛策?フジ・メディアHDが基準日を1月18日に設定
2025/12/24   商事法務, 総会対応, 戦略法務, 会社法

はじめに


フジ・メディア・ホールディングスは22日、臨時株主総会の招集に向けた基準日を2026年1月18日に設定したと発表しました。買収防衛策発動の可能性があるとのことです。

今回は会社法の基準日制度について見直していきます。

 

事案の概要


報道などによりますと、フジ・メディアHDは15日、投資会社レノ(渋谷区)らによる株式の買い増しに関する説明書を受け取ったと発表しました。

同社が導入している買収防衛策では、説明書を受領した日から60営業日以内に取締役会で買付の是非を検討し、対抗措置を発動すべきと判断した場合には同期間内で株主の意思を確認する株主総会を開催し、議決権の過半数の賛成をもって対抗措置を発動するとされます。

同社では買収防衛策の発動が必要と判断した場合に備えて、臨時株主総会の基準日を2026年1月18日に設定したと発表しました。

なお、今年7月27日に設定されていた基準日については、その3ヶ月以内に臨時株主総会が開催されなかったことから失効しているとのことです。

 

基準日制度とは


基準日制度とは、会社が定めた一定の日において株主名簿に記載・記録されている株主に株主としての権利の行使を認める制度です。

会社法124条1項によりますと、「株式会社は、一定の日(以下この章において『基準日』という。)を定めて、基準日において株主名簿に記載され、又は記録されている株主(以下この条において『基準日株主』という。)をその権利を行使することができる者と定めることができる」とされています。

公開会社、特に上場会社は頻繁に株主が入れ替わります。そのため、会社が知らない間に株主が変わっていることも多く、誰を株主として扱えば良いかわからなくなることも有りえます。

そこで、「会社が定めた基準日に株主名簿に記載されている者を株主として権利行使を認めて良い」とする会社の便宜を図る制度とされています。

 

基準日の導入


会社法124条1項に「定めることができる」と規定しているように、会社が基準日を導入するかは会社の自由です。それでは、実際に基準日を導入するにはどのような手続きが必要なのでしょうか。

基準日の設定は、取締役会設置会社では取締役会で決定します(362条4項)。取締役会非設置会社の場合は、取締役が決定することとなります。基準日をいつにするか、基準日株主がどのような権利を行使できるかを決定します。

また、定款で基準日および行使できる権利を定めておくこともできます。この場合は定款変更を伴うことから、株主総会の特別決議が必要となります。

基準日株主が行使できる権利は、基準日から3ヶ月以内に行使できるものに限られます(124条2項カッコ書き)。たとえば株主総会での議決権である場合は、その株主総会が基準日から3ヶ月以内に開催される必要があるということです。

そして、会社が基準日を定めた場合は、当該基準日の2週間前までに基準日と行使できる権利を公告しなければなりません(同3項)。ただし、基準日を定款に定めている場合は公告は不要です。

行使できる権利が株主総会での議決権である場合、会社はあえて基準日後に株主になった者に議決権を行使させることも可能です(同4項)。ただし、この場合でも基準日株主の権利を害することはできないとされています(同ただし書き)。

 

振替株式の場合


上場会社など株式が振替株式である場合、会社が基準日を定めると振替機関である証券保管振替機構から会社に対し総株主通知がなされることとなります。

これは基準日時点での株主の情報を会社に通知する制度で、株主の住所、氏名、所有株式数が含まれます。会社の株主名簿はこれによって名義書換がなされることとなります。総株主通知は、基準日の翌営業日から起算して3営業日目に通知されることとなっています。

総株主通知は、会社が基準日を定めたとき以外にも、株式併合や振替株式の記録抹消、事業年度を1年とする会社で事業年度開始から6ヶ月が経過したとき、振替機関が指定を解消され振替制度を利用できなくなったとき、振替株式が取り扱われなくなったとき、会社が正当な理由があり振替機関に請求したときも通知されるとされています。

 

コメント


本件でフジ・メディアHDは、投資会社レノによる株式買い増しについてその是非を検討し、対抗措置が必要と判断したときは株主総会の承認を得る予定としています。基準日は2026年1月18日とされ、同社は上場会社であることから振替機関から通知がなされるものと考えられます。

以上のように、会社法では臨時株主総会などに先立ち基準日を定めることを認めています。これにより、その時点での株主を権利行使者として扱えば足りることとなります。

また、会社が任意で基準日後の株主に議決権を付与することも認められています。ただし、この場合、基準日株主の権利を害することはできず、基準日株主の承諾が必要とされています。

これらを踏まえ、基準日制度を活用する際には手続きを正確に把握して準備しておくことが重要です。

 

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