「7日でシミ完全消滅」をうたったBIZMに一部業務の停止命令 ー消費者庁
2025/11/12 コンプライアンス, 広告法務, 特定商取引法, 小売

はじめに
消費者庁は6日、美容クリームなどの通信販売を手掛ける「BIZM」(品川区)に対し、通信販売に関する業務の一部を6ヶ月間停止することなどを命じていたことがわかりました。誇大広告に該当するとのことです。今回は特定商取引法の通信販売規制について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、BIZMは「スキンヴィーナスプレミアムリペアクリーム」と称する美容クリームを販売するに際して、WEBサイト上で「誰でも確実に7日でシミが完全消滅」「シミに塗るだけでシミが完全消滅」などと表示していたとされます。
また、「1回限り、解約不要 本日限定80%OFFでプレゼント」「たった1980円で2万円以上の高級シミケアを使えるなんて…」などという表示も行っていましたが、実際には、指定の期限までに所定の方法で連絡しなければ解除できない定期購入契約であった上に解除には差額分と称し税込み1万1055円の支払を求めていたといいます。
消費者庁は効果について表示の裏付けとなる資料を要求しましたが、提供された資料からは合理的な根拠は認められなかったとされています。
なお、消費者庁によせられた相談件数は4536件に上るとのことです。
特定商取引法の通信販売規制
特定商取引法2条によりますと、「通信販売」とは販売業者または役務提供事業者が「郵便等」によって売買契約または役務提供の申し込みを受けて行う商品、権利の販売または役務の提供を言うとされています。
例えばテレビやインターネット、新聞や雑誌、チラシやダイレクトメールを見た消費者が郵便や電話、インターネットなどで購入申し込みを行う取引方法ということです。なお、ここで「電話勧誘販売」は別途規制が置かれていることから除外されています。
この通信販売に該当する取引に対しては、広告表示規制や誇大広告の禁止、未承諾者に対する電子メール広告提供の禁止などの規定が特定商取引法に置かれています。以下具体的に見ていきます。
広告表示規制
特定商取引法では通信販売に関してまず広告の表示規制を置いています(11条)。これは広告の記載が不十分であったり不明確であった場合に後日トラブルが生じることから、それを防止するため一定の表示事項を定めています。
具体的には、(1)販売価格、(2)代金の支払時期と方法、(3)商品の引渡時期、(4)申し込み期間に関する定めがある場合はその旨と内容、(5)契約の申し込みの撤回または解除に関する事項、(6)事業者の氏名・名称と住所および電話番号、(7)販売価格や送料以外に購入者が負担すべき金銭がある場合はその内容と額、(8)契約を2回以上継続して締結する必要がある場合はその旨と条件などとなっています。
これらは必ずしも全てを表示しなくてはならないわけではなく、消費者からの請求によってこれらの事項を記載した書面または電子メールを遅滞なく提供することを広告し、実際にそのように提供できる措置を講じている場合は一部省略して表示することが可能とされます(同条ただし書き)。
誇大広告の禁止等
特定商取引法では通信販売の広告を出すに際して「著しく事実に相違する表示」や「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁止しています(12条)。いわゆる優良誤認表示、有利誤認表示と呼ばれるものです。これは景表法5条1号、2号のものと同様といえます。
これら以外にも消費者のあらかじめの承諾のないファクシミリによる広告の禁止(12条の5)、代金前払い方式の場合の申し込みの諾否等に関する書面交付義務(13条)、契約の申し込みの撤回や解除を妨げるための不実告知の禁止(13条の2)、売買契約の撤回等によって当事者双方に原状回復義務が課された場合の代金返還債務の履行拒否や遅延の禁止(14条)が規定されています。
これらの規定に違反した場合、消費者庁によって業務改善の指示(14条1項)、業務停止命令(15条1項前段)、役員等の業務禁止命令(15条の2第1項)といった行政処分が出される場合があり、また一部罰則も規定されています。
コメント
本件でBIZMは「誰でも確実に7日でシミが完全消滅」「濃くて根深いシミも…3日で完全消滅!」などと表示していたにもかかわらず、その裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を提出できなかったとされます。
また、あたかも1980円のみを支払うことによって本件商品1本だけを購入することができるかのように表示していたにもかかわらず、実際には定期購入契約であったとのことです。消費者庁はこれらが優良誤認表示・有利誤認表示に該当するとして業務の一部停止命令を出しました。
以上のように特定商取引法では通信販売について上記の表示規制や誇大広告の禁止などが規定されています。通信販売に該当しない場合でもこのような誇大表示は別途景表法の不当表示に該当する可能性があるといえます。なお、通信販売にはクーリングオフ規定は置かれていません。
これらを踏まえて、どのような場合に各種規制法に抵触するかを社内で周知し予防していくことが重要といえるでしょう。
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