ニデックが東証から指定、特別注意銘柄とは
2025/10/29   コンプライアンス, ファイナンス, 会社法, メーカー

はじめに

東京証券取引所が不適切会計で揺れる「ニデック」株を特別注意銘柄に指定していたことがわかりました。内部管理体制等について改善の必要性が高いとのことです。今回は特別注意銘柄とその後の手続きについて見ていきます。

 

事案の概要

精密小型モーター大手「ニデック(京都市)」の子会社、ニデックテクノモータ。
報道などによりますと、ニデックテクノモータは、2025年7月、ニデックの監査等委員会に対し、「2024年9月下旬に、自社の中国法人でサプライヤーからの値引きに相当する“購買一時金”約2億円に関して不適切会計処理が行われた疑いがある」旨の報告を行ったとされています。

その後の社内調査でも不適切会計を疑わせる資料が複数発見され、ニデックは2025年9月3日、第三者委員会を設置しています。

ニデックでは、他にも会計処理をめぐる問題が発生しており、さかのぼって6月には、「ニデックのイタリア子会社で原産国申告に誤りがあり関税の未払いが発生した」として有価証券報告書の提出期限を9月26日に延長しています。
9月26日に有価証券報告書は提出されましたが、監査法人は、「十分かつ適切な監査証拠を入手できなかった」として有価証券報告書の適正性について「意見不表明」としています。

これを受け、東証は内部管理体制などの改善が必要として『特別注意銘柄』に指定しました。

 

特別注意銘柄とは

東京証券取引所は一定の事由に該当し、かつ内部管理体制等について改善の必要性が高いと認めるときは、当該上場会社が発行する株式を指定することができるとしています。これが特別注意銘柄です。

具体的には、
(1)一定の上場廃止基準に該当するおそれが認めれつつも該当しないとされた場合
(2)虚偽記載等があった場合
(3)適時開示に係る規定に違反したと認めた場合
(4)企業行動規範の遵守すべき事項に違反したと認めた場合
(5)適時開示・企業行動規範に係る改善報告書を提出したにもかかわらず改善が認められない場合

となっています。

一定の上場廃止基準とは、支配株主との取引の健全性の既存(有価証券上場規定601条1項6号)、上場契約違反等(同10号a)、反社会的勢力の関与(同19号)、公益または投資者保護(同20号)となっています。

虚偽記載等については、上場会社が有価証券報告書等に虚偽記載を行った場合(上場規程2条30号)と、上場会社の財務諸表等に添付される監査報告書等において、公認会計士等が「不適正意見」または「意見の表明をしない」旨を記載した場合とされています。なお意見不表明でもそれが天災等の会社に責任がない場合は該当しません。

 

指定後の流れ

特別注意銘柄に指定された上場会社は原則として1年経過後の審査までに内部管理体制等を整備し運用することが求められるとされています。指定された上場会社は指定から1年経過後速やかに「内部管理体制確認書」の提出が義務付けられています。

東京証券取引所は提出された内部管理体制確認書に基づいて審査を行い、内部管理体制等が適切に整備され運用されていると認めた場合には指定を解除することになります。整備はされているものの、適切に運用されているとは認められない場合は指定継続です。

適切に整備されていない、または適切に運用される見込みがない場合は上場廃止となります。

適切に整備され運用されている場合でも、事業の継続性・収益性が確保されていない場合や上場維持基準に適合していない場合であって改善期間内の場合は最長で3年間の経過観察が行われます。

 

その他の銘柄

上で触れた特別注意銘柄の他に管理銘柄や整理銘柄というものも存在します。監理銘柄とは、上場銘柄が上場廃止基準に該当する可能勢がある場合に指定される銘柄で、一定期間指定した常態で売買を行わせるというものです。

上場廃止となると証券取引所で売買が行われなくなることから、そのリスクを投資家に周知させることが主な目的とされていま す。上場廃止基準に該当しなくなれば再び通常銘柄に戻ります。

整理銘柄とは上場廃止基準に該当し、上場廃止が決定した銘柄を言います。上場廃止が決定すると原則として1ヶ月間整理銘柄に指定され、その後に上場廃止となります。やはりこちらも投資家に周知することが主な目的と言えます。

 

コメント

本件で東証はニデックについて、「過年度決算訂正のおそれも含めて適正な決算内容を開示できていない状態が継続している」とし、また問題発覚以降も第三者委員会の調査の終了時期が不明で、正常な状態に回復する見通しも投資家に示せていない点を問題視したとされています。

今後1年間の間に内部管理体制を整え、東証の審査を受ける見通しです。そこで適切な運用が認められなければ指定継続と確認書の再提出といった事態も有り得ると言えます。

以上のように上場会社には高い内部管理体制の整備と投資家への適切な開示が義務付けられます。過去にも京王ズホールディングスが特別注意銘柄指定から上場廃止となっています。

今一度、内部管理体制が機能しているかなど見直しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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