「文化シヤッター」が新株予約権を無償割当、買収防衛策について
2025/09/11   商事法務, 総会対応, 会社法, メーカー

はじめに


「文化シヤッター」は3日、米投資ファンドのダルトン・インベストメンツなどを念頭に置いた買収防衛策を導入する旨発表しました。既存の株主に新株予約権を無償で割り当てるとのことです。

今回は各種買収防衛策について見直していきます。

 

事案の概要


住宅用シャッターの製造・販売などを手掛ける「文化シヤッター(文京区)」。同社の発表によると、ダルトン・インベストメンツは今年6月10日の時点で同社の株式(議決権ベース)を19.93%保有していたとされます。

ダルトンは最初に大量保有報告書が出された2023年10月以降、継続的に同社の株式を買い集めており、同社はこれに対応するためダルトン以外の既存の株主に新株予約権を無償で割り当てることを決定しました。

今回の防衛策では、ダルトンなどが株式を21%以上の買付に動く場合、事前に大規模買付行為等趣旨説明書の提出や他の株主への情報提供を求めるとのことです。また、対抗措置が必要な場合は臨時株主総会を開催し、社外取締役で構成される独立委員会の意見を踏まえて対策を講じるとされます。

 

敵対的買収とは


敵対的買収とは、対象となっている会社の経営陣の合意を得ずに進める株式取得を言います。

一般に議決権の過半数の取得を目指し、それにより経営権を掌握することが主な目的です。議決権の過半数を確保することができれば自己の都合の良い役員を選任するなどして対象会社を有利な立場で利用することも可能です。

敵対的買収は「敵対的」と言ってもM&Aの一種と言えます。株式取得の方法としては普通に市場から買い集めるという場合もありますが、最終的には株式公開買付によることが多いと考えられます。株式公開買付はTOBとも呼ばれ、買収会社が対象会社の株式につき、買付期間、株式数、価格を公開し、市場外取引で不特定多数の株主から買い集めるというものです。

以下、被買収会社側が採ることができる対抗手段について見ていきます。

 

敵対的買収防衛策


(1)ポイズンピル

敵対的買収防衛策の代表的なものとしては、まず、ポイズンピルが挙げられます。ポイズンピルは買収を仕掛けている会社の持ち株数が一定水準を超えた場合に、他の既存株主に対して新株予約権を発行して買収企業の持株比率を低下させるというものです。

毒薬条項とも呼ばれます。この場合の新株予約権は無償や割安で割り当てられ、買収企業には新株予約権の代わりに金銭が交付されます。

(2)ホワイトナイト

ホワイトナイトとは、被買収会社と友好的な第三者に買収または合併してもらうという手法です。敵対的買収を行う会社に対抗して、あるいはそれよりも先に自社の株式を買い集めてもらうことで敵対的買収を阻止しようというものです。

(3)ゴールデン・パラシュート

役員の退職金を高額に引き上げておき、買収者の買収意欲を阻害しようとする方法があります。ゴールデン・パラシュートと呼ばれる手法です。

一般に敵対的買収が成功し議決権の過半数を確保できた場合、買収者は現役員を解任し都合の良い者を役員に選任しようとします。しかし、このようにあらかじめ退職金を高額にしておけば解任に際して多くのコストを要するということです。

(4)焦土作戦

上のゴールデン・パラシュートと同様に、買収者の意欲を阻害する手法として焦土作戦があります。これは買収者が目的としている事業や経営資源をあらかじめ会社から切り離してしまい、買収の意味を無くしてしまうというものです。

クラウンジュエルとも呼ばれます。その後、また切り離していた資源を利用できるように友好的な企業に移してしまうのが得策と言えます。

(5)黄金株

一定の事項について株主総会での決議で拒否権を有する種類株式があります。主に取締役の選任や解任について拒否権が付与されることが多く、それだけで決議を覆す強力な権利があることから黄金株とも呼ばれます。これを発行しておけば買収者が議決権の過半数を確保しても経営権の掌握は困難となります。

しかし、一方で黄金株は株主平等原則の観点からも問題視されており、現在ほとんど利用されておらず、上場会社で発行しているのは1社のみと言われています。

 

コメント


本件で文化シヤッターが米投資ファンドの買収に対して導入を決定した防衛策が、「他の既存の株主に無償で新株予約権を割り当てる」というものです。これは一般にポイズンピルと呼ばれるもので、敵対的買収の際に買収者の持株比率を希釈して買収コストを大きく増加させる手法です。
同社では21%以上の保有で防衛策が動くとされます。

以上のように、近年物言う株主(アクティビスト)の活動も活発化しており、このような買収も増加していくことが予想されます。

一口に買収と言っても敵対的なものから、会社の経営改善を企図したものなど様々です。会社の状況や買収者の意図などを慎重に見極め、様々な選択肢を踏まえて対応を検討していくことが重要と言えるでしょう。

 

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