メタプラネットが臨時株主総会で変更、発行可能株式総数について
2025/09/05 商事法務, 総会対応, 会社法, 金融・証券・保険

はじめに
ビットコイントレジャリーなどを手掛ける「メタプラネット」が1日、臨時株主総会で定款変更をしていたことがわかりました。発行可能株式総数や種類株式についての変更とのことです。
今回は会社法が規制する発行可能株式総数について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、メタプラネットは1日、臨時株主総会を招集し、機動的な資金調達の検討を可能にするため発行可能株式総数の変更と優先株の発行規定を新設する定款変更の承認決議が賛成多数で可決していたとされます。
同社の発行可能株式総数は16億1千万株から27億2千300万株に増加することとなります。ちなみに、同社の発行済株式総数は約6億8千万株とのことです。また、同社はA種類株式とB種類株式の規定も新設しており、A種類株式は社債型の非転換型株式、B種類株式は転換可能な株式とのことです。
これにより同社は最大で5550億円の資金調達が可能になるとされています。
発行可能株式総数とは
発行可能株式総数とは、会社が発行することができる株式の上限を言います。定款の絶対的記載事項となっており、登記事項でもあります。
そのため、この発行可能株式総数を変更するには定款変更が必要となり、原則として株主総会の特別決議が必要となってきます(会社法466条、309条2項11号)。特別決議とは、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(定款で3分の1まで減少可)が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成による決議を言います。
このように、株主の承認を得た上で定められた数を上限として、公開会社では取締役会が募集株式を発行し、新たに資金調達をすることができるようになっています。このような仕組みを授権資本制度とも言います。
発行可能株式総数と4倍ルール
会社法113条3項によりますと、公開会社が定款を変更して発行可能株式総数を増加する場合、または公開会社でない株式会社が定款を変更して公開会社となる場合に、変更後の発行可能株式総数は発行済株式総数の4倍を超えることができないとされています。
上記のように、会社法では発行可能株式総数を増加させ、その範囲内で取締役会に新たに株式を発行して資金調達する権限を付与していますが、公開会社についてはこれに一定の制限を設けています。これは既存の株主の持株比率の希釈を最大で4分の1までと限界を定めて保護するものです。
この4倍ルールは定款変更決議時ではなく、変更の効力発生時が基準となります。なお、これら以外にも会社の設立段階や新設型組織再編(814条1項、37条3項)、株式併合の際にも適用を受けます(180条の3)。しかし、株式消却に関しては現時点では適用されていません。
発行可能株式総数を超える株式の発行
それでは、定款で定められた発行可能株式総数を超えて株式を発行した場合はどうなるのでしょうか。
発行可能株式総数を超える発行を一般に枠外発行と言われますが、このような場合は枠を超えた部分だけではなく、当該発行全体が無効となると言われています(東京地裁昭和31年6月13日)。
無効とは言っても、実際に発行されてしまった株式が当然に効力を失うわけではなく、新株発行無効の訴えで無効判決が確定するまでは有効な株式として存在します(828条1項2号)。募集株式発行の効力を争うには新株発行無効の訴えによらなければならないということです。
なお、このような枠外発行については会社法で罰則が定められており、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金となっています(966条)。
コメント
本件でメタプラネットは16億1千万株であった発行可能株式総数を27億2千300万株に増加させる定款変更決議を行いました。同社は公開会社であることから会社法の4倍ルールが適用されることとなりますが、発行済株式総数の4倍ぎりぎりのラインまで拡大したこととなります。
また、転換型・非転換型の種類株式の定款規定も置かれ、大幅な資金調達枠が授権されたと言えます。
以上のように、株式会社は定款変更によって発行株式数の枠を拡大したり縮小することが可能ですが、一定の制約も存在します。また、この枠を超えた発行には厳格な規制も置かれています。
公開・非公開会社それぞれの手続を把握しつつ、自社に合った枠を模索していくことが重要と言えるでしょう。
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