6ヶ月間連続勤務でうつ病発症のセブン-イレブン店長の自殺が労災認定
2025/04/10 契約法務, 労務法務, フランチャイズ, 労働法全般, 小売

はじめに
コンビニ最大手の「セブン-イレブン」とフランチャイズ契約を結ぶ店舗で店長を務めていた男性(当時38歳)が2022年に自殺しました。
4月7日の報道で、この男性の自殺について、「半年間で1日も休日がない連続勤務を原因とした労働災害」と認定されていたことが分かりました。認定日は2024年11月6日付とのことです。
店舗運営の円滑化のため半年間無給に
男性が勤務していた店舗はセブン-イレブン本部とフランチャイズ契約を結ぶ大分県内の加盟店です。男性は2019年から、事業主である店舗オーナーに正社員として雇用され、いわゆる「雇われ店長」として、同店で働いていたといいます。
男性が担っていた業務は商品発注、品出し作業、レジ、清掃のほか、勤務シフトの作成などにも及んでいました。また、男性は、24時間営業の店舗運営を円滑に行うため、突発的な欠勤の穴埋めを自ら行っていたとされています。
その結果、2022年7月に自殺する前日までの6カ月間、連続勤務だったといいます。
また、男性の妻によると、少なくとも、結婚した2021年3月以降の約1年4カ月間はほぼ休みがない状態だったということです。
男性は自殺の前日ごろに重度のうつ病を発症しており、遺族側は「過労により精神障害を発病した」と訴え、労災を申請しました。
労働基準監督署は、「男性が連続勤務を行い、深夜勤務を含め人員確保に当たったことは心理的負荷が相当強かった」と判断し、男性の自殺を労働災害として認定しています。
精神障害の労災認定基準について
痛ましい結果を引き起こした、過度な連続勤務によるうつ病の発症。
厚生労働省は、精神障害による労災を認定する際の基準に関し、「心理的負荷による精神障害の認定基準」を定めています。これは、2011年に策定されたもので、その後、社会情勢の変化や労災請求件数の増加などを踏まえ、2023年に改正されています。
具体的な要件として、「精神障害を発症するまでの6カ月間に、業務の中で強い心理ストレスがあったこと」が含まれており、その心理的負荷の評価においては、(1)当該6カ月間で病気の発症に関与したと考えられる出来事、(2)その後の状況 を具体的に把握したうえで、その心理的負荷の強度を判断するとされています。
ちなみに、心理的負荷の総合評価を「強」とするものの例としては、次のようなものが挙げられます。
・生死にかかわる、極度の苦痛を伴う、又は永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをした
(業務上の傷病による療養中に症状が急変し極度の苦痛を伴った場合を含む)
・業務に関連し、他人を死亡させ、又は生死にかかわる重大なケガを負わせた(故意によるものを除く)
・強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアルハラスメントを受けた
・発病直前の1カ月間におおむね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度の(例えば3週間におおむね120時間以上の)時間外労働を行った
コンビニの厳しい就業実態
長年、問題視されているコンビニ・フランチャイズ店舗での加重労働。
過去には、ファミリーマートの加盟店で働いていた男性が、一日15時間労働、8カ月間でわずか4日間の休み(過労による入院日含む)という激務を強いられ自殺した事案もあります。
この事案では、男性の長男も、父親の業務負担を減らすため、男性が兼務していた別店舗の店長としてオーナーに雇われたうえ、親子2人への給与の支給はなし。本部から月々送金されてくる店の人件費からアルバイトに支払った金額を差し引いた残額である25万円を親子で折半していたと報じられています。
男性は、厳しい状況を本部から派遣されるスーパーバイザーに訴えたものの、特に改善策は講じられなかったといいます。
遺族は、自殺は加重労働が原因だったとして、オーナーとフランチャイザーであるファミリーマートに対し、損害賠償を求めて提訴しましたが、2016年に和解が成立しています。
コメント
今回の労災認定を受け、フランチャイザーである株式会社セブン―イレブン・ジャパンは、「フランチャイズ契約上、従業員の労務管理は加盟店の役割ではある」という認識を示した一方で、「フランチャイズ本部として、改めて加盟店の労務管理のサポートを強化し、再発防止に向けた対応に尽力する」とコメントしています。
たしかに、加盟店に雇われた労働者とフランチャイザーとの間に契約関係はないため、一次的な労務管理の責任は負わないものの、問題発生時に、フランチャイザーとしての信用やブランド価値、ひいては法的責任につながる可能性は否定できません。
フランチャイザーとしても、加盟店で適切な労務環境が維持されるよう対策を施す必要があります。
労働時間や健康状態の可視化を含め、フランチャイザーが適切に支援し、体制を整えることが重要になります。
関連コンテンツ
新着情報
- 弁護士
- 片山 優弁護士
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階

- ニュース
- ジェットスターCAの勤務中、休憩時間確保されず 会社に賠償命令2025.4.25
- NEW
- 格安航空会社、ジェットスター・ジャパン株式会社の客室乗務員ら35人が、労働基準法に定められた休...

- 解説動画
江嵜 宗利弁護士
- 【無料】新たなステージに入ったNFTビジネス ~Web3.0の最新動向と法的論点の解説~
- 終了
- 視聴時間1時間15分

- 業務効率化
- Mercator® by Citco公式資料ダウンロード
- 弁護士
- 髙瀬 政徳弁護士
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階

- まとめ
- 株主提案の手続きと対応 まとめ2024.4.10
- 今年もまもなく定時株主総会の季節がやってきます。多くの企業にとってこの定時株主総会を問題無く無...

- セミナー
藤原 鋭 氏(西日本旅客鉄道株式会社 法務部 担当部長)
西﨑 慶 氏(西日本旅客鉄道株式会社 法務部)
藤原 総一郎 氏(長島・大野・常松法律事務所 マネージング・パートナー)
板谷 隆平(MNTSQ株式会社 代表取締役/ 長島・大野・常松法律事務所 弁護士)
- 【2/19まで配信中】CORE 8による法務部門の革新:JR西日本に学ぶ「西日本No.1法務」へのビジョン策定とは
- 終了
- 2025/02/19
- 23:59~23:59

- 業務効率化
- 鈴与の契約書管理 公式資料ダウンロード

- 解説動画
浅田 一樹弁護士
- 【無料】国際契約における準拠法と紛争解決条項
- 終了
- 視聴時間1時間