中居氏問題でフジテレビ株主が親会社の新旧経営陣に約233億円求め提訴
2025/04/03 労務法務, コンプライアンス, 訴訟対応, ハラスメント対応法務, 労働法全般, エンターテイメント

はじめに
元タレントの中居正広氏が起こした女性とのトラブルで、「株式会社フジテレビジョンが適切な対応を取らなかったことで損害が生じた」として、株主1名が、親会社である株式会社フジ・メディア・ホールディングスの現旧経営陣15人を相手取り、約233億円の賠償を求める株主代表訴訟を起こしていたことが分かりました。
一方で、フジ・メディア・ホールディングスが設置した第三者委員会は3月31日に調査報告書を会社側に提出。「業務の延長線上における性暴力」と中居氏の行為を非難した他、会社全体でハラスメントがはびこっていた実態を指摘する内容となっていました。
株主代表訴訟で233億損害賠償請求
株主から訴訟提起されたのは、フジテレビの現社長、前社長、専務、退任する取締役相談役らフジ・メディア・ホールディングスの現旧経営陣15人です。
原告となった株主の男性は、「前社長は遅くとも2023年8月までに元タレントの中居正広氏と女性社員の間でトラブルが発生していたことを認識していたにも関わらず、中居氏が司会を務めるレギュラー番組を継続させた」と指摘。
この際、他の取締役や専門家らに相談もしなかったと主張しています。この一連の問題で広告収入などが大幅に減り、会社に損害を与えたと訴えています。
加えて、内部統制システムが正常に機能していなかったことから、トラブルの存在を知らない取締役が多数いたと非難。取締役の任務怠慢があるとして、親会社のフジ・メディア・ホールディングスの現旧経営陣15人に対して、合わせて約233億円の賠償を求めています。提訴は3月24日付です。
株主の男性は、今年1月にフジ・メディア・ホールディングスの監査役に経営陣の責任を追及する訴えを60日以内に起こすよう要求していました。しかし、会社側は、「必要な要件を満たしてないため、提訴要件は成立しない」との見方を示し、「損害賠償請求はしない」との通知を行ったといいます。
株主の男性は、第三者委員会の調査報告書が出た後に請求額が増える可能性も示唆していました。
第三者委員会が調査報告書を公表
株主の男性が言及した第三者委員会の調査報告書は、訴訟提起の1週間後の3月31日に公表されています。
報告書は約400ページに及びました。この報告書では性暴力トラブルのあった日、中居氏は当初、女性社員に対して“複数人で飲食店にて食事をする”趣旨の連絡をしていました。
しかし、実際には他の参加者を募らなかったうえ、飲食店を探しておらず、結果的に中居氏の自宅マンションに誘ったということです。
第三者委員会は、二人の間に仕事上の力関係の格差があり女性が断れない状況だったこと、フジテレビでの業務実態などから、本件を「業務の延長線上における性暴力だった」と判断しました。そのうえで、取締役会メンバーの経営責任は重いと結論づけています。
さらに報告書では、今回の件以外のトラブルにも言及しています。
類似した重要な事案が2件あったとしたほか、BSフジの報道番組のキャスターで、フジテレビの取締役男性らがセクハラやパワハラなどを行ったと認定。「全社的にハラスメント被害が蔓延していた」と批判しました。
コメント
中居氏の問題におけるフジテレビ側の対応については、労働契約法が定める安全配慮義務違反に当たるとする指摘もあります。
労働契約法上、会社は、会社のために働く社員らの安全や健康に気を配り、心と身体を健やかに保てるように配慮する義務があります。フジテレビ側が安全配慮義務に違反したと認められた場合、被害女性に対し損害賠償責任などを負うことになります。
今回の問題を契機に、内部統制システムの不備、ガバナンスの欠如が指定されたフジテレビ。今後、内部通報制度の強化や取締役会のチェック機能の強化を行い、再発防止に努める必要があります。
株主代表訴訟の動向と合わせて、フジテレビ側の今後の再発防止に向けた動きも注目されます。
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