「中国版新幹線」の登場で、試される日本の知財戦略
2011/07/01 知財・ライセンス, 特許法, メーカー
問題の所在
北京と上海を結ぶ高速鉄道(1318キロ)が30日、開業し、最新列車「CRH380」が最高時速約310キロで運行を始めた。「CRH380」は、川崎重工業をはじめとする日本勢や、シーメンスを中心とするドイツ勢の技術を基に開発された。しかし、中国側は、独自に開発した自国のものとして、中国企業が日米欧、ロシア、ブラジルの5カ国・地域で特許取得の手続きに入った。審査は各国でそれぞれ進められ、日欧などと類似の技術であれば進歩性がないとして却下される。一方、少しの手直しでも大きな効果を生む技術であれば認められる。このため、1~2年後に各国で明らかになる結果しだいでは紛争につながる可能性がある。
日本の反応
川崎重工業は米国などで新幹線の製造技術に関わる特許は出願していない。中国に特許を握られると、価格競争で太刀打ちできず、市場参入で不利になりかねない。日本企業連合は、米カリフォルニア州での高速鉄道計画に入札する方針だが、中国側の特許取得の動きが影響を与える可能性は高い。東海の山田佳臣社長は29日の記者会見で、「中国は自分の技術だと言うが、我々は国内メーカーと旧国鉄技術陣の汗と涙の結晶だと思っている」と主張し、出願は不当だと批判した。その上で、技術を供与した川崎重工業に対し「技術立国日本を代表する企業の名に恥じない対応を取ってほしい」と述べ、特許侵害には厳正に対応するよう求めた。
採るべき対応策
まず対抗手段として取り得る策は、各国の特許庁への働きかけだ。出願された技術について「自社の技術と同じ」と情報提供することで、特許取得を阻止できる。仮にどこかの国で特許が登録された場合、再び特許登録の無効を求めた審判を申し立てたり、各国の裁判所に特許の登録取り消しを求め提訴することも可能だ。「日本の技術の汗と涙の結晶」をいかに守るのか。日本の知的財産を守る国家戦略が試されている。
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