大分の海運会社社員のパワハラ自殺訴訟、会社側に賠償命令
2025/03/27 労務法務, コンプライアンス, 労働法全般

はじめに
大分県の海運会社に勤務していた当時30歳だった男性が2019年に自殺しました。亡くなった男性の両親は、自殺の原因が上司のパワハラだったとして、会社などに対して損害賠償を求める裁判を起こしていました。
3月19日、裁判所は会社と上司に賠償金の支払いを命じる判決を言い渡しました。
裁判所 パワハラ、時間外労働と自殺の因果関係認める
2019年に大分県の海運会社で働いていた当時30歳の男性社員が自殺しました。この自殺に対しては、2021年、佐伯労働基準監督署が労災認定しています。
遺族である両親は、男性が自殺したのは長時間の時間外労働による過労と、上司から受けていたパワハラによるものだとして、会社および上司に対し約6,800万円の損害賠償を求め、福岡地方裁判所に提訴しました。
時間外労働については、亡くなる前の1ヶ月間で少なくとも43時間に上っていました。また、退社後や休日にも会社から電話などがあり、対応しなければならなかったということです。
さらに、上司は男性に対して、「ナマケモノの態度を改めなければあなたを必要とする理由が見当たりません。猛省してください」「手抜きにも程があります」「貴方にも後輩が出来ました。追い越されない様によ~く考えて下さい」などのメールを7通送っていたということです。
福岡地方裁判所は判決の中で、上司が男性へ「ナマケモノ」などとするメールを送ったことについて、「メールは人格をおとしめる内容」と非難しました。
また、時間外労働については、「亡くなる前の業務内容は相当な心理的負担を生じさせるものだった」とし、自殺との因果関係を認めました。
その上で、心身の健康を損なわないよう注意する義務を尽くさなかったとして、会社側の過失も認め、会社と上司に連帯して計約6,600万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。
パワハラ防止法
2020年6月1日に、改正 労働施策総合推進法、通称「パワハラ防止法」が施行されました。中小企業でも2022年4月1日から、さまざまな措置が義務化されています。
パワハラ防止法では「職場におけるパワーハラスメントを防止するために講ずべき措置」が10個定められています。
(1)職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
(2)行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
(3)相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
(4)相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
(5)事実関係を迅速かつ正確に確認すること
(6)速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
(7)事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
(8)再発防止に向けた措置を講ずること
(事実確認ができなかった場合も含む)
(9)相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
(10)相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
コメント
パワハラ対策が法律で企業に義務づけられた現在。一方で、相談窓口を設置するなどの形式を整えれば法的に問題にならないとして、実際には十分な対応をせずに済ませてしまうケースも増えているといいます。
しかし、パワハラの被害者が深刻な状況に陥り、最悪の場合、自殺してしまった際には、会社も大きな責任を負うことになります。
先ほどのパワハラ防止の措置10項目が、きちんと実態として機能しているのか、適切に評価することが重要です。
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