第三者委員会、兵庫県の公益通報者保護法違反と知事のパワハラを認定
2025/03/25 コンプライアンス, 危機管理, 行政対応, 公益通報者保護法

はじめに
兵庫県の斎藤元彦知事らに対する内部告発文書について調査を実施した第三者委員会は、3月19日、「県の対応が公益通報者保護法に違反している」との報告書をまとめました。報告書では他にも、知事の言動をパワハラと認めている箇所もあります。
公益通報として扱わなかった件の対応「違法」
兵庫県は2024年9月12日、元裁判官3人を含む計6人の弁護士を構成メンバーとする第三者委員会を立ち上げました。発足後、第三者委員会は告発文書の取り扱いの違法性などについて、職員への聞き取りなどの方法で調査を進めていました。
今回問題となった告発文書は元県西播磨県民局長の男性職員が2024年3月中旬、一部の報道機関などに対し送ったものです。文書には齋藤知事に関する7つの疑惑が記載され、匿名で送られました。さらに元局長は翌4月、告発文書と同内容の通報を県の公益通報制度を利用して行っています。
しかし、県はこの告発文書を「公益通報」として扱いませんでした。
知事が告発文書を把握した直後、当時の副知事らに調査を指示し告発者の特定を開始しました。
調査の過程で、男性職員の公用パソコンから告発文と一致する文書データが発見されたため、前副知事は元局長の聴取を実施。文書作成の有無などを確認したということです。
この聴取後、県は男性職員を県民局長から解任しています。さらに、5月には県は「(文書は)核心的な部分が事実ではない」として、元局長を停職3か月の懲戒処分にしました。なお、元局長はこの懲戒処分を受けた後、同年7月に死亡。報道などによると、自ら命を絶ったとみられています。
この告発文書への対応を巡り、県議会は百条委員会を設置。専門家はこの委員会の場で、「県が男性職員を公益通報の対象にしなかったことは法律違反にあたる」と指摘しました。
知事はこの指摘に対して「対応は問題なかった」と反論。文書は誹謗中傷性が高い文書だと判断されたため、作成者を特定し、聴取したことに問題はなかったと主張しました。
兵庫県知事のパワハラ告発問題、公益通報者への対応について(企業法務ナビ)
第三者委員会の報告書について
第三者委員会は3月19日、報告書を兵庫県側へ提出し、内容を公表しました。
まず、内部告発の文書は内部告発としての公益性があると指摘。今回の告発が公益通報保護法上の定める“外部公益通報”にあたるとしました。そのうえで、県が告発文書をめぐって通報者探しを行ったこと、文書を作成した元局長の公用パソコンを回収したことは極めて不当な行為で公益通報者保護法に違反すると認定しました。
さらに、告発文書には真実相当性が認められるとし、告発者に対して行われた処分は、懲戒権者に与えられた裁量権の範囲を逸脱・濫用した明確に違法なもので、懲戒処分は効力を有しないとしました。
加えて、齋藤知事のパワハラに関しては、調査対象となった16項目中10項目が「パワハラに当たる」と結論づけました。
以下が、第三者委員会がパワハラに該当すると判断した項目の一例です。
・出張先の施設のエントランスが自動車侵入禁止とされていたため、20m程手前で公用車を降りた際、出迎えた職員を厳しく叱責した
・机を叩いて職員を叱責した
・長期間にわたって継続的に繰り返されてきた夜間、休日のチャットによる叱責や業務指示
齋藤知事は、第三者委員会の報告書を受け、「業務上の範囲で必要な指導をしたという認識。ただ、指摘されたことは受け止めないといけない」と報道陣にコメントしました。
コメント
今回のケースでは、告発文書を公益通報として扱わなかった県の対応が公益通報者保護法違反として認定されました。
企業でも同様に、社員や外部からの通報に対して正当な対応を取らなければ、法的リスクを負うことになります。企業内での通報制度や通報者保護の体制を再確認することが重要です。
【参考】兵庫県第三者委員会の報告書
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